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朝日歌壇より2018年2月12日

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今回は介護の歌、若い人の結婚、広辞苑編纂の話題など。

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してあげるよりしてもらふ存在に私はうまくなれるだらうか 檜山佳与子

あるいは老人ホームなどで介護を受けようとしている方だろうか。「してもらう存在」という言葉に注目。
人は皆「してあげる」と「してもらう」のギヴアンドテイクで生きている。その相互性には長いスパンのものもあり、乳幼児期と高齢になってからは「してもらう」、その中間は子供と親双方にしてあげる、が自然。
通夜の席義母とならんでお辞儀する娘は他家の嫁でありたり 関綾子
永田選にはもう一つ嫁の歌「赤子抱き訪ね来し嫁はお母さん猫は土足ですよねと聞きぬ 小山房枝」があるが、上は娘の歌。母はよくやっている風の娘をたたえながら、なんとなく寂しい気もするのだろう。
猫の嫁はもう少し複雑そうだ。嫁と姑というと、そういう歌になってしまうのだろう。
「お母さん」という呼びかけが、むしろ怖い。でも、おもしろい。
以上永田選
ひっそりと君を抱けばセーターの編み込みビーズの冷たい拒絶  岡田紀子
おもしろい歌。あるいは鋭利なブローチなども避けた方がよさそうだ。
懸命の妻の介護とリハビリで車椅子捨て杖つき散歩す  藤原守幸
散文的で傷はありそうだが内容が好ましい。眼目は「車椅子捨て」。「捨て」は他動詞なので、そこに妻の尽力に応える作者の意思がある。。
回復を共に喜ぶ。介護にもこういう良いこともある。
「アマリガンバラナイ」というステッカー軽トラに貼り野菜を出荷 表いさお
私は私自身に貼りたい。いや、冗談でなく、部屋の壁に貼っておくのはどうだろう。
馬場あき子選
大雪の体育の時間は雪合戦子らは声上げ雪に飛びこむ  内藤丈子
新潟県。教員の方だろうか。様子が目に浮かぶ。
「声上げ」は省略なしならば「声を上げて」なのであるが、「を」は省いてもいい場合とそうでない場合がある。
一般に「て」は、おそらく省かない方がいいのだと思うが、字数から省いている歌を多く見負けるような気がする。
「て」は意味上のつなぎであると同時に、声調上の切れ目も作る。
「朽人(くちびと)」とふ由来哀しき口太山(くちぶとやま)姥捨て伝説秘めて雪降る  櫻井隆繁
やはり初句の言葉にインパクトがある。「秘めて」も良い。
姥捨ては、一時話題になったが、まあ実際に昔には姥捨てはなかっただろうと言った人がいる。大昔なら介護が必要になったら、間なく亡くなっただろうということだ。世話が行き届いているからこそ長生きする現代だ。だから「姥捨て」が響くのだろう。
新設の「原発」分野震災が無ければ載らぬ原発用語  島田章平
言われてみるとそうだなと思うところも歌にできる。一般人にもベントだの溶融だのと語彙が急に増えたが、事故がなければそもそも要らない知識だった。
「理想ばかり追っていないで目の前の人を愛せ」とおみくじが言う  臼井啓子
結句とその順番が良い。ああ、その通りだなあ、と思うようなことがおみくじに書いてあった。それを「言う」というのが良い。「おみくじが言う」の擬人化が作者の受け入れを表す。
偶発的に短歌の字数に近い文が得られた。おみくじの警句を大事に聞こうとおもったからこそ、そのまま歌ができてしまった。おもしろい。
アルルカン十八番(おはこ)の我が今日は白きドレスで演ず君のヒロイン  丹佳子
結婚式の歌。いつもは道化者だが、今日は違う。お幸せに。
薩摩にも二度目の雪が降るといふ子の棲む信濃はさぞ深からむ  川野雄一
九州に住む女親かと思ったらお父さんの方。当地のニュースに遠く住む子供を思いやる。
九州と信濃は遠い。距離が長い分思いが増す。そこは遠距離恋愛とは違う。
以上佐々木幸綱選
<焼き場に立つ少年>は歯を食いしばる耐えて堪(こら)えて生きるしかなかった  田原モト子
写真、それからテレビの情景などを読むのはよく難しいと言われる。震災の時は、ほとんど禁止令ともいえるものが出た。でも、やはり見過ごせないものもある。
正確には「なかったのだろう」なのだが、作者自身の経験であるかのように、「なかった」で終えている。そしてそれが作者自身の述懐と化す。
荒浜の初日が照らす慰霊碑の津波の高さ示して哀し  木村次郎
津波と同じ高さの慰霊碑が初日を見に行って、朝日と共に目に入る。もっとも厳粛な初日の風景だ。
風呂そうじ昨夜(きぞ)のぬる湯に踝(つぶなぎ)を浸(つ)けて遊べば春の瀬戸内  松本知子
踝は「くるぶし」だけではなく、上の読みもあるらしい。すると「つぶなぎ」「つけて」と「つ」を揃えることができる。
「風呂」と「昨夜」の間にはさまれて、「そうじ」はひらがな。初句切れ。
「遊べば・・・」の確定順接から、結句の体言止めというのが鮮やか。
今号のいちばん好きな歌。
情深き人となりけり若き日に我悩ませし子にてありしが  寺田知子
二句切れ。「我」は目的語なので「を」が省略されている。4、5句は倒置。
「・・・ありしが」という回想の結句はいつか使ってみたい。
海の旅山の旅せしかの酒仙甘納豆も好みしという  加藤正文
この歌については、今日のもう一つの記事に書かせてもらった。
以上高野公彦選。
高齢者ばかりの結社だと結婚式の歌などはまず見かけない。
新聞の短歌は、いろいろな世代の人の歌、それからいろいろな種類の歌があって、おもしろいと思う。







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