マンドラゴラに思い出す澁澤龍彦 - 短歌のこと

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マンドラゴラに思い出す澁澤龍彦

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なぜか急にマンドラゴラのことが話題になったらしい。懐かしい名前なので、手持ちの本をあちこちめくってみた。

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言い伝えの多い植物マンドラゴラ

マンドラゴラとは、実在の植物なのだが、そのエピソードの多くは、おそらく想像上のもので、不思議な言い伝えがこれほど多い植物は他にないかもしれない。

薬草としても用いられるが、根っこの部分が人の形をしていると伝えられており、その植物を抜こうとすると、草は人間のような声ですさまじい悲鳴を上げ、それを聞いた人は発狂してしまうことがあるという。

ハリーポッターでマンドラゴラを抜くシーンがあったということなのだが、その時はどういう声だったのだろう。

日本での紹介者澁澤龍彦

おそらく日本での書物での紹介者は澁澤龍彦が筆頭ではないかと思う。
澁澤によると

一般に、この植物の発する声は、じつに不愉快な、鋭い軋るような音で、人間でさえ、うっかりこれを耳にすれば、とても我慢できたものではなく、しばしば発狂してしまう場合があるという。

そのため、マンドラゴラを抜くときには、次のような方法があるという。

長い革紐の一端をマンドラゴラの根もとに結び、他の一端を犬の首輪に結びつける。そうして、犬の名を呼ぶなり、焼き肉で釣るなりして、犬を走らせる。人間の方は、あらかじめ耳に綿で栓をしておくが、犬の方は、たちどころに悶死するという。この植物を抜くためには誰かが死ななければならないのだ。

マンドラゴラは、無実の罪によって処刑された犠牲者の断末魔の射精から生ずると一般に信じられていたので、よく死刑場の絞首台の下などに生えている、と考えられた。死刑場に出入りする死刑執行人や隠坊は、上記のような方法でマンドラゴラを抜きとっては、募大な金額で、ひそかに顧客に売りつけていたという。

澁澤の「エロスの解剖」とその類書には、この植物について、これでもかと書かれているが、澁澤の場合のそれら文献はフランス語の原書であったわけだが、かようにマンドラゴラについての記述が多かったのは一体なぜなのだろう。

ともあれ、不思議な植物だ。

元の記事
「マンドラゴラを抜いた」と証言。叫び声を聞くと死ぬという伝説の真相は?

デルヴォーのピグマリオン

デルヴォーの「ピグマリオン」は、男性の石像を抱く女性を描いたものであるが、元のギリシャ神話では「あまりにも美しい石像の女を作ってしまったがために、その石像に恋してしまった男」の物語である。

デルヴォーはその男女を逆にして描いたとの、精神分析学者、新宮一成氏の指摘を読んだ。

澁澤龍彦「幻想の彼方へ」より

「永遠に目的物に到達しないエロティシズム、挫折する宿命にある恋、――― 私たちがデルヴォーの絵から受け取る印象は、そんな印象ですらあるだろう。」(「幻想の彼方へ」より「ポール・デルヴォー、夢の中の裸体」)

 むしろ澁澤はそれを「デルヴォーの女たち」を主語として述べているが、元のギリシャ神話のテクストに沿うなら、この対象は「デルヴォーにとっての画の中の女性像」と見てもよいかもしれない。

新宮一成「ポール・デルヴォー 夢と欲望の孤独」

 「エロスの中にある至高の倫理がそこにある。それは逸脱と違反を通過してはじめて可能になる倫理である。欲望はこの倫理に導かれて孤独な道を歩む。デルヴォーの絵について述べられた「エロティスムのもっとも耐え難い形式」、あるいは「ある癒されることのないエロティスム」という言葉の内実を、私はこの欲望の孤独な歩みのうちに見出す。デルヴォーは夢見る人の孤独を描いたが、それは人間一般の孤独や男女のコミュニケーションの不可能を語るためではない。彼の画面は、エロスあるいは恋の道を通ってのみ許される、欲望の献身の道筋をさし示している。」(「ポール・デルヴォー 夢と欲望の孤独」--imago「夢」)

 「凍結したエロティシズム」とは澁澤がデルヴォーに当てた言葉だが、神話ではその彫刻の女性像は、ピグマリオンの願いを聞いたアフロディーテによって、血の通った人間になった――という結末が、私自身の好むところではある。


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