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けだものは食もの恋ひて啼き居たり何といふやさしさぞこれは 斎藤茂吉「赤光」

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斎藤茂吉「赤光」から主要な代表歌の解説と観賞です。
このページは現代語訳付きの方です。

歌の意味と現代語訳


けだものは食(たべ)もの恋ひて啼き居たり何(なに)といふやさしさぞこれは

現代語訳


けものたちは食べ物を欲しいがために鳴いている。なんというやさしさなのだろう、これは。

出典

「赤光」大正元年 14 冬来

歌の語句

啼き居たり・・・鳴いていた
ぞ・・・強意を表す終助詞 強く指示して断定する働き

表現技法

3句切れ 結句は倒置

解釈と鑑賞

狂人の自殺という悲しみの後にやってきた動物園で、動物の無心な姿に心を慰めようとした。死に立ち会った後に見るけものの生の新鮮さ、動物の偽りのない姿を「やさしさ」と取る。
作者は食物に執心が深かったとも言われるが、他にも歌の中で自身を動物に置き換えたものも多い。

動物園に来ると虎とかライオンとかいう獣類が啼いている。それは「食もの恋ひて」啼いているのだと感じ、空腹になれば本能のままにこのように啼くというのは、何と言う率直な愛らしさであろうというのである。
「やさしさぞこれは」と、主観をそのまま端的に強くいったところに人間的な悲哀も動物に寄せる同情もあるが、そういうものをこめて、さしあたり端的にいったのがこの歌の切実な点である。(「茂吉秀歌」佐藤佐太郎)
ゆふ日とほく金に光れば群童は眼つむりて斜面をころがりにけり 

現代語訳


夕日が遠く金に光ると子供たちは目をつぶって斜面を転がったのだなあ

出典

「赤光」大正2年 8 みなづき嵐

歌の語句

群童 子供の群れの漢語
にけり・・・完了の助動詞「ぬ」+詠嘆の助動詞「けり」

表現技法

初句が字余りなので、助詞を省略して響きが長いのに対して、「眼つむりて斜面を」の9音、「転がりにけり」7音を一気に読み下すリズムが、「転がる」に通じるものがある。

「群童」の漢語が同様的な甘さをかき消している。

「金きん」の鋭利な響きがアクセントとなりその後の「群ぐん」につながるものとなっている。

解釈と鑑賞

金や赤の色調を主として、そこに近代絵画の影響や北原白秋、交流のあった木下杢太郎らの影響が指摘されている。

「金にひかれば」の確定条件句については、「偽二句切れ」(塚本)の通り、「ひかれば」と「ころがる」の間に通常の因果関係はない。

牧歌的な子供の遊びを詠んだものなのだが、緊張度が高くどこか不可思議な感じがある。品田は、確定条件句については、やや皮肉を込めて、「彼らはわざわざ夕刻の到来を待って、一斉にこの行動を開始した」と表た上、「群童の奇怪な儀式」と呼んでもいるが、その原因は「光れば・・・けり」の万葉調と漢語「金」「群童」「斜面」と口語「転がる」の不調和がもたらすと述べている。

なお、「ころがる」の古語は「まろぶ」。

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