朝日歌壇より3月26日2018年 金子兜太さん追悼歌続く - 短歌のこと

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朝日歌壇より3月26日2018年 金子兜太さん追悼歌続く

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朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
今週の朝日歌壇は、俳句の金子兜太さん追悼歌がまだ絶えません。
投稿歌にも春が近づいてきましたね。

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今週の朝日歌壇

3月26日分。

佐々木幸綱選

冒頭の歌が金子兜太さん追悼歌の共選。

人間に自然に春の嵐吹き兜太の骨のどつかりとあり 内野修

上句に春という季節を詠み込み、しかも春風ならぬ「春の嵐」。兜太さんの人柄と業績が偲ばれます。さらに下句がすばらしい。追悼歌なのは「骨」でわかります。「どつかりと」が春の嵐以上にインパクトがある。しかも「あり」で止めて、まるで樹木が根を下ろしたかのような一生涯。


先住民の土地を奪ひし末裔が国境に塀を築かんとする 籾山肇

奪った土地を守ろうとする侵入者たち。このような光景は人が絶えるまで繰り返し見られるのか。高野選者との共選。

八階に住み四十余年恋しきは地面土の香草木蟻たち  野崎耕二

人は素朴になものにこそ支えられる。これからは高齢者が駅近マンションへの転居が増えるのでしょう。

高野公彦選


上の共選の「先住民の」が一首目。

脱衣所でパンツ姿で振るフック猫背が似合ふ八十路のボクサー  青木武明

その前に「ボクサー歌人の短歌」を紹介しましたが、こちらは80代のボクサー。ボクシングは上半身裸なので、思わずそういう仕草をしてみたのでしょう。年齢を経て丸まってしまった背中も、ボクサーの脇を占めるガードの姿勢に似ている。思わずリングならぬ脱衣所に声援を送りたい。無条件に楽しい歌。

子を離す力もかくありなむと見つストーン放す勁(つよ)き指先  河野真南

上句は字余りと句またがりか。オリンピックに見るカーリングと子育てをなぞらえた。「放す」は文語だと「放つ」となるか。あるいは「つ」の連続を避けたか。別なチームにママさん選手が居たことからの連想かもしれない。

逢瀬橋、逢隈橋を風と渡り幼きわれに会いに行く春   美原凍子

「風と渡り」が思いつきそうで思いつかないところ。

三島由紀夫に「橋づくし」という短編があったのを思い出した。藤沢周平にも「橋ものがたり」という短編集。そもそも「橋」というアイテムが人に何かを連想させるのだろう。
逢隈橋は福島県阿武隈川に架かる橋。

永田和宏選

下の第一首目から始まる。

享保雛の目のおくふかき光(てり)見つつ雪しずく聞く酒田の町に 沼沢修

酒田市に江戸時代に京より渡ってきた享保雛というのがあるという。それを見て詠んだ歌。「雨だれ」ではなく「雪しずく」。東北では雛祭はまだ雪なのだ。

「いい部屋ね」ついこの間そういって眼を細めてたホスピスの窓 加古裕計

悲しいがきれいな歌。窓の向うには心の慰められる景色が広がっていたのだろう。読む人の視線も作者と同じ、病者のまなざしから窓へと移り、そして窓の向うへと余韻が広がる。

仲たがひしたる姉妹とそれぞれの向きもちて咲く山茶花の花  若林禎子

いちばん好きな歌。深刻な話なのだが、仲たがいの姉妹を山茶花の花にたぐえて匂うように美しい。これはきっと白い山茶花だろうか。私の身内の姉妹は絶縁したが、この姉妹の寄り添って咲く日が来ますように。

馬場あき子選

春は変化の季節。

原爆の写真に見入る異邦人「祖父母はアウシュヴィッツで死にました」 梅原三枝子

同じ戦争禍ということ。どちらも筆舌に尽くしがたい。並置して声を添えることでより重いものとして伝わる。

婚約と住民票と辞令つめカバンが弾んだ初任の家路  澤正宏

高齢者の歌が多いと思って読んでいると、こういう歌もあって思わず楽しくなる。「カバン」に焦点を当てた。

毎朝の革靴ぬぐい土を消す懺悔の念もすぐに忘れる  大谷善邦

外回りの仕事の方なのだろうか。詳しくはわからないが、気持ちがわかればいい。「すぐに忘れる」というのは、もちろん忘れてはいないということなのだが、靴の汚れを拭い去ることで気持ちを取り戻し、また仕事に向かう。
誰にでもそういう小さな儀式があるだろう。たとえば、髪を切ることとか、掃除をすることとか、そうすることによって心のホメオスタシス、恒常性を取り戻す。
歌を詠み、読むこともまた。


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