「結社の存在意義」大辻隆弘氏 朝日新聞短歌時評より - 短歌のこと

朝日歌壇

「結社の存在意義」大辻隆弘氏 朝日新聞短歌時評より

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こんにちは。まるです。
日曜日の朝日新聞、朝日歌壇のコラムに、歌人の大辻隆弘さんの「結社の存在意義」という文章があり、興味深く読みました。

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結社とは何?

「結社」というと、皆さん「秘密結社」が連想に上がるらしく、「結社とは何か」とよく聞かれるのですが、要は短歌の同人誌のメンバーの集まる会のことです。
ただ、短歌の場合には、これがなかなか重要な役割を果たしています。
大辻さんのコラムは、その結社の様子を伝えるものでした。(一番下に掲載)

馬場あき子さんの予想

その中で注目すべきは、朝日歌壇の選者でもある「かりん」の馬場あき子さんの言葉です。

「これからは会費で歌が十首なり八首出るという場に過ぎなくなっていくと思う。人間的つながりは薄くなる方向ですよ。(略)今の人たちは歌を残すことを考えていない。平成末の歌壇には残す歌がないことになっちゃう気がしている」

これはやはり由々しき問題であるかもしれません。

斎藤茂吉が結社について書いていたこと

斎藤茂吉は結社について、書いている箇所があります。

人間は孤独ではあり得ず禽獣魚介といえども集団の生を営むものであるから、家人が集団として活動することもまた毫も怪しむに足らないのである。ただ作歌過程は飽くまで『個』の性質のものであるから、この『個』の覚悟を忘却しない限り、一部の論者のごとき、社会化万能説に迷妄せないかぎり、集団としての結社的・流派的活動を認容すべきである。この集団の活動は個々の歌人、個々の歌の算総和挿話であるのみならず、やはり創造的統合の原理によって、新しき集団としての勢いを想像するものである。

さらに、土屋文明の談話

とりわけ、斎藤茂吉なんて言う、日本の歌始まって以来と思われるうまい歌を作るのがいるんだから、自分にだって少しはおもしろい歌もできるんじゃないか、という気もしましたね。だから、「アララギ」のそういう人がいなかったら、歌なんかやめちゃったかしれませんがね

これらを引いて小谷稔先生(新アララギ)は次のように言っておられます。

この茂吉と文明で見るように「結社」というのは想像的活動を軸にして刺激しあい、作歌の持続のための大きな糧になることは間違いない。茂吉と文明のような関係は結社を越えても成立するであろうし、実例もあろう。しかし結社という文学理念を同じくする同行者として集団の中で活動する成果は他結社間との一過性の刺激よりも信頼できる。
私は結社における作歌の非商業主義の無償性と個性の競合とを結社の長所とみるがゆえに、結社が健全に機能するとき、作歌の持続には結社は必要であり有効であると考える。

私が思うこと

上の文章はいずれも短歌が人気のあるジャンルで、会員がたくさんいた時代の結社について語られたものです。
しかし、今は、結社について考えるときは、結社自体の存続が一番の問題点だと思います。

結社の衰退は、特に短歌に人気がなくなったというより、今は人口が減少しているため、多分どの分野も同じです。短歌は高齢者が主体なので、それでもまだいい方かもしれません。

しかし、結社の存続は、これからの短歌の存続にも関わってくるところでもあるでしょう。

大辻隆弘氏のコラム「結社の存在意義」内容

短歌結社の記念誌が続々と発行されている。三月には「コスモス」の創刊六十五周年記念号、五月には「かりん」の四十周年記念特集号が、さらに七月には「心の花」の百二十周年記念号、九月には「未来」の八百号記念号が発行される。どの号にも、その結社にとって重要な歌人を再認識するための企画が組まれている。結社誌の衰退が叫ばれるなかで、これらの結社は、今なお多く会員を擁し新たな才能を発掘し続けている。

「結社」という言葉は、明治時代「アソシエーション」の訳語として作られたものだった。古色蒼然(こしょくそうぜん)としたその「結社」が短歌の世界では、まだ現役バリバリの制度として生き続けている。短歌という詩形には「結社」という共同体を必要とする本質があるに違いない。

「短歌」五月号では「かりん」の主宰馬場あき子が結社の将来について次のような危惧を述べている。「これからは会費で歌が十首なり八首出るという場に過ぎなくなっていくと思う。人間的つながりは薄くなる方向ですよ。(略)今の人たちは歌を残すことを考えていない。平成末の歌壇には残す歌がないことになっちゃう気がしている」

たしかにそうだろう。三十一音という短い詩形から豊饒(ほうじょう)な作品世界を読みとるためには、作品の「読み」を伝承する場が必要である。結社はそれを保証する貴重な場であるだろう。歌の「よさ」を伝え、残すべき歌を厳しい鑑賞眼によってふるいをかけて残してゆく。そういう場として、結社という共同体は、まだまだ必要性を失ってはいない。(歌人)

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