現代短歌 短歌

父の短歌 父の日に読みたい現代短歌に見る父へのまなざし

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こんにちは、まるです。
母の日に読みたい短歌に続いて、父の日の歌ということで探しました。が、前から言われていることですが、「母」に比べるととにかく父の歌は少ないですね。万葉集でも「母」と「父母」は多いのですが、「父」単体のものは、わずかしか見られません。

母に比べて、それだけ父の存在は地味だということなのでしょうか。私自身は母よりも父を詠んだものがずっと多いので、少し不思議です。

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現代短歌から「父」の歌

まずは現代短歌から引いてみます。

父よ その胸郭ふかき処にて梁からみ合うくらき家見ゆ  岡井 隆

作者の父は、岡井と同じ医師であり、作者に短歌の手ほどきもした人です。この歌を読むと、父が、「家」というイメージに深く結びついており、作者の個としての自由を妨げるものとなっていることが伝わります

 

父はむかしたれの少年、浴室に伏して海驢(あしか)のごと耳洗ふ  塚本邦雄

父にも少年の日、若かった日があるわけですが、子どもからは、想像もできないようなほど遠いものになっているようです。   

 

虹斬ってみたくはないか老父よ種子蒔きながら一生終るや     伊藤一彦

庭仕事にいそしむ老いた父に歯がゆい息子は上句のように問いかけたい思いを持っている。ある意味息子はいつになっても父に偉大な父のイメージを持っていたのでしょう。高齢化社会でもあり、老いた親とのかかわりもこれまで以上に長い期間となることでしょう。

 

行くのかと言わずにいなくなるのかと家を出る日に父が呟く  俵 万智

子どもの巣立ちの際にふと父が漏らした言葉。その違いに敏感に気がつく作者にも、また同じ思いが兆していたことでしょう。

 

打たれたるわれより深く傷つきて父がどこかに出かけて行きぬ    道浦母都子

学生運動に参加して、ある日留置所に連れられた作者が帰ると、父が怒って娘を殴ります。それでも娘は父が自分以上に「傷ついている」という思いやりをも持つのです。

 

衰へてやさしき父と日に寄りてはにかむごとし共にもだせば 富小路禎子

作者は華族の家柄でしたが、没落して後失意の父を支えて二人だけで暮らす作者。けっして仲良く暮らしたわけではないのでしょうが、この歌からは肉親の情がうかがえます。

 

父病めば人遠きかな夏深く終わるもの一つ一つたしかむ 馬場あき子

作者は母を早く亡くし、肉親は父だけだったようで、この時期の父の歌をたくさん詠まれています。片親との別れはなおつらいものです。

 

足弱の父が一日坐しゐたる椅子夜のかげに重き息吐く  藤井常世

父が眠った後も作者は父の坐っていた椅子に父の影を見ています。「重き息吐く」の主語は椅子ですが、作者の思いでもあるのでしょう。

 

死ぬまへに孔雀を食はむと言ひ出でし大雪の夜の父を怖るる 小池光

不思議な父の言ですが、作者の父は大池唯雄という直木賞作家でしたので、世の常とは違う思いつきも生まれたのだったかもしれません。変わっているゆえに印象的です。

 

万葉集より

父だけの歌は、長歌も多くちょうど良いものが見つけられませんでしたので、代わりに「父母」の山上憶良の有名なものを引いておきます。

 

出(い)でて行きし日を数へつつ今日今日と吾(あ)を待たすらむ父母らはも
一世(ひとよ)にはニ遍(ふたたび)見えぬ父母を置きてや長く吾(あ)が別れなむ  山上憶良

意味: 旅に出てからの日を数えながら、今日は帰るか今日は帰るかと今ごろ私を待っていらっしゃるだろう、父母は。
この世では二度と会うことのできない父母を残し、永遠に私は別れていくのだろう

山上憶良には、子供を詠んだ歌が一番良く知られていますが、この一連では父母の情愛も十分に表されています。

 

まとめ

思うに父の短歌というのは、母への短歌よりも淡々としたものが多いようです。だからと言って父子のつながりが薄いわけではないのですが。
やはり、「産みの母」という言葉があるように、本能的な深いつながりを思い起こさせるものになっています。

そして、男性、つまり息子から見た父の像は、いくらか批判的でもありますが、娘からのものは、もっといたわりに満ちているような気がします。かといって、情が薄いわけではなく、男性同士というのは案外そういうものなのかもしれません。

母と同様、もっと父の短歌も詠んであげたい。皆さまも父の日だけではなく、お父さんを心にかけてあげてください。そして、お父さんの魅力的なところを見つけたら、写真を撮るように、たくさんの歌にとどめてあげてくださいね。

 

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