朝日歌壇 未分類

朝日歌壇より1月22日号

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おばさんは九十四歳義父は今も姉(あんね)と呼びたり優しい声で  小室寿子

90歳を越えた舅とその姉の姉弟。長い長い間の縁がその呼び名のままに保たれている。

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忘れてた受話器の向こうの夫の声こんなに渋いバリトンなのね  富田光子


同じモチーフの歌を詠んだことがあるが、こんな風には詠めなかった。
「バリトン」がいいと思う。

河豚のひれ貼られた戸板がずらりと並び海峡の町真冬に向かう  乗安勉


投稿者は下関市の方。

車駐(と)め髭剃りおればフロントのガラスに冬の朝日差し来る  山本寒吉


なぜかはわからないが、車中で迎える朝に備えて髭を剃るという情景。

---以上馬場あき子選

四匹のレンタル山羊が除草する町を通って図書館に行く こやまはつみ


山羊がのんびり草を食べている脇を通っていくのかな。除草のために山羊をレンタルするというのがおもしろい。
ただ今3匹除草作業中。1匹休憩中、とか。

この歌は2人の選者が重複して選んでいる。しかし4人全部にはならない、というところを少し考えていた。2人の共選はもう一首あった。

マジシャンのいそぎんちゃくのような指揺れながらカードを垂直に切る  九螺さらら


想像するところがおもしろい。その指。
---佐々木幸綱選

沈香を炷(た)きつつひとりゆく年もくる年もまた残り香のなか 岩永知子


煙のように流れて消えてゆく時の流れの中の一つの区切り。

九十二年住みし島から子の町に移りて間なくみまかりしとふ 和田静子


今日のいちばん好きな歌。
作者は沖縄県の方。長いこと住んだ島を老いて移っていった人の消息を人伝えに聞く。
たぶん、作者も高齢で自分の末を重ねているのだろう。

冬の雷去りゆくまでを待ちかねて鰤大根で飲み始めたり 前川久宣


こういう一コマも歌になるのだと思う。「冬の」「鰤大根」の呼応もいい。

道端の無人販売の野菜らが性善説を信じて並ぶ 畠山時子


「信じて並ぶ」は擬人法で、信じて並べているのは生産者。
販売所には誰もいないので、野菜たちが自ら並ぶ。そう考えるとおもしろい。
なぜか今回は高野選に好きなものが多い。
---高野公彦選

「ケアハウス」書いてしまえば寂しくて母への賀状は番地までとす  四方護


「寂しくて」がこの場合まっすぐに響いてくる。老いを看取るのは寂しいものだ。
介護短歌の安森敏雄さんもこの前亡くなった。

雪風巻く景のつづける上越線「開」のボタンを押して降車す  大熊佳世子


「雪風」はたぶん、「ふぶき」と読む。
「景ケイ・・・開ケイ・・・降コウ」とK音を続けるための漢語、間に「上越」のオウも重なる。

こういうのも共選にして欲しかった。

あの午後の「付いてくるか」の一言に付いてこられて早五十年  伊藤邦彦


歌の歌詞のようだが、本当の話。「付いてこられて」がおもしろい。
「あの午後」とは秘密めいていて、作者と「付いてきた人」しか知らないのだ。

さだまさしとさいたま市の区別などどうでもよくて老いてゆくこと 菱沼真紀子


さいたま市に住む作者。ある日ふと、さだまさしと読み違えたか、聞き違えたか。
短歌をたしなむ人らしく、言葉にまつわるふとしたことで自分の老いをかえりみる。
そして、それを投稿しようというのは、意欲的で素晴らしいではないか。
まだまだお励みください。
---永田和宏選

新聞の短歌は、ちょっと自分の見知っている歌とも傾向が違うのだが、3回目にして少し慣れてきた。
今回は前回より写したい歌が多かった。自分も頑張って作りたい。
  ---今年初めての雪の降る日、ストーブの鳴る台所にて。







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