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朝日歌壇より4月2日2018年 歌の中にも春

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朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
今日は投稿歌の中にも、春が十分見えています。

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今週の朝日歌壇

4月26日分

高野公彦選

畑消えて発電パネル増えてゆき野菜を売らずに電気売る農 笠井一郎

当地でもおなじみの光景になってしまった。作者は山梨の方。この光景は日本中で見られるのだろう。

腹ぺこはさみしかりけり養殖の海老に皆腸(みなわた)なきことなども  松本知子

海老は調理してはいても気にしていなかった。言われてみると、ああ、あれがそうだったのかという感じ。作者は、海老の腹という微細なことに、海老になり代わって、空腹の「さみしさ」を思い出す。

蔵出しの新絞(にいしぼ)りのごと泡立ちてきらめき奔る鞆(とも)の春潮  武暁

いちばん好きな歌。春の潮を新絞りの豊かさにたとえる。光景が目に浮かぶ。「鞆」は鞆の浦。

素のままのわれで居られるパートナー生きてこの世にいるという幸  沼沢修

この歌そのものが、素のままのさわやかな歌なのだが、この雰囲気、心境がそのままパートナーとの有りようを伝える。

泣きながら別れし友と卒業しその数時間後に予備校で会う  佐藤知寧

涙は卒業の涙ばかりではないのだろう。苦難の一年が待っているのを知りながら卒業を祝い別れを惜しむが、苦節を共にする友とも間なく再会。今は大変だが、これも貴重な時でもあるだろう。ガンバレ。佐々木選者共選。

永田和宏選

和やかに円卓囲む南と北当たり前だが通訳いない  四方護

「当たり前」を断りながらの口語の軽い印象だが、その下に誰もが思いつかないことを取り上げた作者の眼識がすごい。同じ言葉を話す分、通じ合えない断絶の深さに驚く。解決に向かうことを願いたい。

馬場あき子選

残業せし子のかく鼾(いびき)聞きながら早起きのわれは味噌汁すする 岡田独甫

以前から見知っている僧侶の投稿者。このような出来事でも歌になる。「子のかく鼾聞きながら」のコミカルなリアル感が突出している。

下灘という海にいちばん近い駅今日も誰かが海を見に来る 坂崎善門

下の句がいい。他に駅名を詠んだ歌に「長者ヶ浜潮騒はまなす公園前駅は日本一長い名にて無人駅」というのもあった。

佐々木幸綱選

家じゆうにお節介なる声のする家電いずれも女のしやべる  船越一英

あれは「女の声」だったか。とりたてて何とも思わなかったが、これは男性でないと気が付かないところかもしれない。しかもそれを「お節介」と感じる人なればこそ。

野に摘みしさみどり色の蕗の薹(とう)入れて春めくペペロンチーノ 平尾三枝子

蕗の薹を詠み込むのは存外難しいが、こんな歌ならいい。詠む前に実際パスタに入れる。それが歌になる。自分と何の関連も持たないものは、季節だけを意識して歌に入れようとしても映えないものだ。

地下水の豊かに湧きゐるふる里の自販機にあるアルプスの水 中村弘子

ペットボトルで水を売る、お茶を売る、最初は何と不経済な、と思ったが、今では当たり前に口にするようになってしまった。歌は、広い景から、その中に立つ自販機、その中にあるボトルの水、と焦点が集約されていく。あたかも水が流れて行くかのように。最後に残るのは、そうしてズームアップされたボトルに閉じ込められた水のきらめきだ。
「ふる里の自販機」は一つながりだが、読むときは多く「ふる里の」で切るため、そこにイメージが増殖をみるだろう。
紙面中央のコラムには、前登志夫の歌が引かれている。
世の常のくらしのそとに生き継ぎて斧とぐべしやさくら咲く日に 
あしびきの山より出でて棲まはねば樹木の梢(うれ)の思想を欲(ほり)す

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