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朝日歌壇より2018年4月15日分 改ざん問題の時事詠と若い世代の投稿が目立つ春

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こんにちは。まるです。
今週の朝日歌壇は日曜日に掲載されました。昨日は所用で朝早くに出立。
新聞を読む暇がなく、今朝気がついて読み直ししました。

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今週の朝日歌壇

改ざん問題の時事詠が多いのは予想されることですが、季節のせいなのでしょうか、若い世代の人の短歌らしいみずみずしい歌がたくさん拝見できました。
また卒業や別れ、友人との関係を振り返る歌も、感慨深いものがあります。

改ざん問題の短歌

今回は選者を問わず、改ざん問題の歌を、まとめて先に提示します。

福島の人間(ひと)は真っ正直という信念ゆらぐ証人喚問(下野市)若島安子

福島は私の住んでいるところから比較的近い県なので、やはりその点が話題に出る。出身校も同じ卒業生を思い出すこともできるが、いずれも残念なことだ。

桜咲きふいに雪降りこの国は汚泥に足を突っ込んだまま(坂戸市)山崎波浪

天候の変転と質疑の変転とで、民の心がしずまる暇がない。

改ざんでもめているのを気にしつつ今が高値の大根出荷す(沼津市)岩城英雄

ニュースやラジオを聴きながら作業をされている方かもしれない。思いを巡らしていても、今が高値の春大根。作業を休むわけにもいかないだろう。
それにしても、働く人の心をも憂慮に沈めるとは、何というお上であることか。

総理いかにと答弁迫る議員越しのけぞる議員目薬を注(さ)す(登米市)菅原小夜子

これは野党の議員なのだろう。ここぞと答弁を待つときにこの体たらく。

ちまちまと新聞記事の後追ひをする国会の野党ぞ悲し(高松市)島田章平

議員はその場にいるのであるが、後からの報道を見て、また更にそれぞなぞるとは、それ以上に何とかできぬのか。

改竄を改ざんと書く手緩(ぬる)さよ穴の鼠(ねずみ)はつゆ出でざりき(東京都)高橋道子

穴かんむりにネズミ。「改竄」を初めて知った。

答弁に嘘つく人の言いっぷりこれはいつかの夫に似ている(ひたちなか市)猪狩直子

文句なしに、これがいちばんおもしろい。自分にひきつけて詠っているからだ。他人事ではない。
まさか、議員職の夫君ではないだろうが。奥方は野党より怖い。

馬場あき子選

髪をもう染めまいと決めさわさわと春蒔き花種選ぶは楽し(碧南市)島谷春枝

上句と下句のつながりがおもしろい。ヘアカラーは薬が強かったり、手間がかかることもあるのだろう、年齢が上がると止める人が多い。喪失感を感じず、いつかは老いを受けいれるのも楽になる。
夫の母は今年83歳になって歩行が困難なのに、今でも美容院に行っているが、それもまた良いと思う。それぞれの価値観、それぞれの人生だろう。

今日からは私のものだよ姉(ねえ)ちゃんのおさがりの服にカレーこぼした(東金市)矢口由依

もう自分のものだから気にしなくてもいい。カレーも元気に食べられる。共選。

佐々木幸綱選

通信簿2がつかなくて良かったと褒めくれし母要介護3(宝塚市)萩尾亜矢子

おおらかなお母さんだと読んでいると、介護度の数字が並ぶ。介護度の方はそれによって受けられるサービスが違ってくるので、これは気にしないではいられない。
ちなみに、4または5にならなければ、特養によっては入所は難しい。3は微妙な数字なのだろう。

春光を飛ぶ蝶(ちょう)となり野をゆきぬ楽しき夢の覚めさあ出社(名古屋市)長尾幹也
10代は寝ても寝ても眠くってやりたいことはこんなにあるのに(東京都)佐藤知寧
白い雲空をかきわけ泳いでくはやくしないとおいてかれちゃう(さいたま市)坂井海帆

夢と睡眠の3首。年齢が上がると朝はそれほど眠くなくなってしまう。眠気も若さの特権か。

高野公彦選

もつれ合ひくるくる回る天狗蝶滝は光りてゆつくり落つる(熊谷市)内野修

それぞれ違う動きをする物たち。「二つが合わさると自然界の奥にある神秘性に触れた思いがする」(高野)

聞き上手な彼女に今日も喋(しゃべ)りすぎ負けた気がする午後のファミレス(東京都)伊東澄子

繊細な作者。私にもこういうことはしょっちゅうあったが、話し上手な作者だから、相手が聞き上手になったのだったかもしれない。「午後のファミレス」が良い。良き友人が居てうらやましい。

ふた月ぶり携帯を切りゆっくり寝たきのう父が亡くなったから(東京都)上田結香

「ふた月」「きのう」など意図して平仮名が多く、声がそのまま伝わるような、てらいのない口語体で詠まれる。私は昨日、前月に亡くなった夫の父の法要に行ったばかり。父の場合は危篤になったのは前日だったのだが、看取りの期間が長い場合もあるだろう。ゆっくり休んでほしい。

何気ない会話で笑いじゃれあった離れてわかる友のぬくもり(さいたま市)レィエス マリザ

春は別れの季節でもある。そして、上のような友だちが居る期間というのは、案外限られているものだということも、長じてわかる時が来る。

永田和宏選

渓谷を巻けるユリ道在りし日の森林軌道が跡かとも見ゆ(宝塚市)小竹哲

「ユリ道」というのは、ゆっくりとした傾斜の長い道のことだそうで、森林軌道とは、山の中にある木材を運ぶための鉄道の跡。

定年のわれが泣かれてハグされて「先生細い」と笑われている(佐渡市)藍原秋子

3月で退職される先生。初めて先生をハグした生徒が「先生細い」と言う。もう遠くなってしまった卒業式の感慨がふと思い出される。

手編みだったなあ前を通りてふと想う三月書房の主の帽子(京都府)島多尋子

通りすがりに、書店の主がかぶっている帽子に目がいく。編み物をする人は多く気がつくことで、それだけで何となく親近感が湧く不思議。
「手編みだったなあ」の字余りの初句と初句切れの間がいい。この一語だけでも「歌」になりそうだ。「三月書房」の名も良い。何より全体の淡いが確たる感慨が良い。

戦場に最も多く散つた本ではなからうか『万葉秀歌』(羽咋市)三宅立美

『万葉秀歌』は斎藤茂吉の記した本。当時の状況に合った本として、荷に入れることが許された本だったろう。今現在でも、万葉集の解説書として評価が高いロングセラー本。私が以前、短歌の先輩に、万葉集を読むのに、何かよい手引きはないか問い合わせたときに、この本を勧められ、手ずから送ってくださったことをありがたく思い出す。

曽野綾子の小説には、恋人たちが、電報で万葉集の番号だけを記して送り合うというものがあったのを思い出すので、特に短歌を詠もうという人ではなくても万葉集が読まれた時がそう遠くはなくあったのだろう。


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