朝日歌壇

朝日歌壇から7月1日 人との縁と交流 5歳児虐待死

投稿日:

こんにちは。まる @marutankaです。

朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
朝日歌壇は朝刊日曜日に掲載。当記事は、7月1日の掲載分です。

スポンサーリンク




朝日歌壇とは

朝日歌壇についての説明です。
「朝日歌壇」とは朝日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「朝日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。

投稿方法の詳しいことは別記事
「朝日歌壇」とは何か?朝日歌壇の紹介と他の新聞の短歌投稿方法と応募の宛先住所」
をご覧ください。

永田和宏選

人かげの見えぬしばしをよろこびて棠梨(ずみ)の花ちる木道をゆく   篠原克彦

こういうことは誰にでもあることだが、それを歌にするのはすごい。「棠梨」は梨やリンゴに似た白い清楚な花。木道(もくどう)は板張りの道のことだが、幅が狭くもある。
人のいない道を何となくほっとした気持ちになって、静かに花を愛でながら行く作者なのだろう。

馬場あき子選

父上はお元気ですかと訊(き)かれたと息子の言うを聞けばうれしき  岡田独甫

評に「よくある場面だが、人情の機微に触れて楽しい」。息子が父に伝える。そして父が口伝えの気遣いを喜ぶ。出来事はありふれてはいても、三者それぞれの心を歌にするという発想が素晴らしい。「うれしき」のそのままに心が温まる思いがする。
素直に喜べるのも、ご本人が元気だからである。舅を春に亡くした私から見ると、それだけでありがたい。

父の家を他人(ひと)に譲れば御蚕(おかいこ)の部屋も壊されカレー屋になる  松井惠

古い農家には蚕部屋というのがあって、茂吉の「死にたまふ母」にも出てくる。養蚕は大事な仕事で、蚕の部屋も大切な場所だったようだ。
この歌では、ただ事実だけを詠んでいるが、家を人に譲るというだけでも悲しいのに、それが変わったのを見るという二つの出来事を重ねている。

深海に沈んだ難破船のごとく居て嫗(おうな)ら今日もパチンコを打つ  山内義廣

上句の比喩が良い。場所はというとパチンコ店。入ったことがないのでよくわからないが、最近のパチンコは画面を見るだけなので、老齢の女性たちは、毎日のように通ってきては、おそらくひねもす動かずにじっとしているのだろう。

生まれ来て二度目に会えばはにかみてわれを見つめるアメリカの孫  沼沢修

めったに会えない祖父と孫。孫の方は、おじいさんだよ、と言われても、はにかんだ様子で、それでもおじいさんをじっと見ている。その孫を見つめる祖父の温かいまなざし。何ともほほえましい。

亀のゑさ菜園仲間に知れ渡りときどき届く芋虫青虫  大野宥之介

短歌には「省略」という技法のようなものがあって、単文に全部は盛り込めないので、あるだけの言葉で意味を伝えようとするのだが、この歌もそう。普通菜園では、虫は殺してしまうわけだが、殺さずにつかまえて届けてくれるというのだろう。
結句の「芋虫青虫」が愉快。こういう仲間がつくづくうらやましい。

カッコーの声より早く畑に出て千個のりんごに袋を着せむ  岩舘順

カッコーというのは、朝まだきに鳴くものなのか。世話をする林檎の実は膨大で早起きしないと間に合わない。カッコーよりもの比較は、ただ朝早く起きて、と述べるよりもずっと良くはないか。

佐佐木幸綱選

海抜二千の入笠山山頂の泥岩に揚羽蝶(あげはちょう)きて人を怖れず  小林勝幸

人里も見えないようなところ、野原ではなく岩に、人を見たことのない蝶が飛ぶ。これだけでも、不思議な思いがするのだが、もっと不思議なのは、そこに作者である人が立っているということ。

名付けたる人のこころはしらねどもかわいかったか「スベスベマンジュウガニ」  松本知子

おもしろいネーミングの歌は度々見かけるが、この歌はよい。「可愛らしい」とも少し違う、やや方言めく「かわいかった」の口語交じりの4句が良いのだ。方言でなくては表せないようなニュアンスがある。そして「スベスベマンジュウ」を「かわいかった」と取る作者の的確な感性に恐れ入る。おもしろい歌、愉快な歌というもの簡単なようで、なかなか意図して出せるものではない。

ゆっくりと琉金の尾のたれる午後妻の着る服まだ決まらない  加藤宙

今号でいちばん好きな歌。上句の形容が素晴らしい。初夏のめに涼しい水槽が見えるようだ。金魚の生態についてはよく知らないが、琉金の薄くも長い尾が「たれる」というときは、激しく泳いでいない動きの止った時なのだろうか。「たれる」も「決まらない」も口語。ポイントは水槽が手前にあり、やや遠くに服を選んでいる妻の姿か。カメラワークまでが見えるような歌だ。

高野公彦選

奥羽線と鉄路シェアする新幹線「つばさ」過ぎればまた雉子(きじ)が鳴く  青木崇郎

「鉄路シェア」というのに興味を惹かれる。作者の描写だろうか。そして、そのカタカナのあとに雉子が登場する。新幹線の名の「つばさ」も雉子を暗示させる。好きな歌。

清々(せいせい)して俳句はいいねと母が言ひさうだねと言ひ二人歌詠む  檜山佳与子

歌を詠む人には俳句と取り違えられた経験は誰もが一度はありそうだ。あえて正さないで「さうだね」という作者のやさしさ。「二人」というのは姉妹だろうか。母上ももちろん褒めておられるのだ。

米国の報道記者がポツリ言う「カジノが来ると街荒れますよ」  小林幸子

アメリカには、ラスベガスという砂漠の中にカジノのある大きな町がある。日本の会社経営者がそこで大金を使ったのち、罪に問われたことも記憶に新しい。街も荒れるということは、人も荒れるということだ。

虐待死した船戸結愛ちゃんを詠う

「助けて」の言葉を知らぬ子はひとり「ゆるして」だけを抱いて眠れる  芝敏子
叱られて叱られてなお親が好きゆるしてくださいひらがなの文字  岡元稔元
五才児が覚えた文字で父母に乞う「ゆるしてくださいおねがいします」  矢田紀子
五才児の使う言葉じゃないんだよ心ふるえる〈ゆるしてください〉  せきあい子
かるがもの親子の移動に警察が出動する国結愛(ゆあ)ちゃんの国  西村愛美
君は何も悪いことなどしてないとか細き体抱きしめたきに  安達三津子(以上永田和宏選)
明けぬ夜を小さな小さな女の子ただ一人いて天に召されし  原公子(佐々木幸綱選)

「中で思い切って抽象化したこの作が心に沁みた。」(佐々木)

 







-朝日歌壇

Copyright© 短歌のこと , 2018 All Rights Reserved Powered by STINGER.