朝日歌壇

朝日歌壇より7月8日号 肉親の死を詠う

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こんにちは。まる @marutankaです。

朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
朝日歌壇は朝刊日曜日に掲載。当記事は、7月8日の掲載分です。

 

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朝日歌壇とは

朝日歌壇についての説明です。
「朝日歌壇」とは朝日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「朝日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。

投稿方法の詳しいことは別記事
「朝日歌壇」とは何か?朝日歌壇の紹介と他の新聞の短歌投稿方法と応募の宛先住所」
をご覧ください。

馬場あき子選

拾い来て一年を経し草亀の水槽に生むピンクの卵  斎藤哲哉

拾った亀を1年飼っていたら、亀が卵を産んだ。作者はそこに思わぬ命の連鎖を見ているのだろう。

 

かるがもの親子が池を移りたり蓮がもうすぐ花を咲かせる  内山豊子

単にカルガモと蓮がいる池というのではなく、時間的な推移がある。季節の移ろいが歌の主題だ。
次の年も、また次の年も同じことが繰り返される。それを外側になって詠むかに見える人もまた、その景色を構成する一つの要素に過ぎない。

 

佐々木幸綱選

飛べぬまま巣にぶら下がる子燕(つばめ)をホバリングして親燕守る  島田章平

ホバリングとは、その場に羽ばたきながらとどまること。外敵から守るため、翼を広げて、羽を動かす親燕の様子は印象的だったろう。

春浅き島の小さな舟溜まり人の声あり鳥の声あり  原田覚

春になって船のまわりに人だかりができる。なんとはなしに、ほっとするような作品。

 

高野公彦選

卒中の吾をこの世に引き留めてベッドの脇にまどろむ妻よ  伊藤邦彦

病気になってわかる近しいものの大切さ。それはまどろんでいる妻も同じだろう。
「この世に引き留めて」で、病状が重かったことがわかる。歌を詠めるまでに回復して良かった。

 

虐待を受けし児の名に〈愛〉という文字 その愛は虚しく重く(横浜市)毛涯明子

名付けたときは、その通り「愛しい子」だったのだろう。「虐待」の文字がすべてを物語る。ゆえに、下句は要らないかもしれない。

コンビニでおにぎり買うをためらわぬわたくしとなる少し寂しく  杉野順子

一人暮らしの女性か。それとも高齢者だろうか。コンビニのおかずは便利なものだが、男性ならともかく、女性にはこういう心理もあるのだろう。

 

おばさまの言ひし「主人」が憧れで真似てることなど君は知らない  土屋太佳子

「夫は」ではなく「君は」をみると、結婚されたばかりの作者なのだろう。ジェンダーの考えからは「主人」はあまり賛成しないが、結婚当初は言いたくなる気持ちもわかる。
ふざけているように見えるが、相手を大切に思う気持ちがある。それを自然に表す「主人」とその関係に憧れがあるのだろう。

 

永田和宏選

お父さんいったいどこをうろついているのと母泣く初七日過ぎて  戸田陽子

生前は彷徨されることがあったお父さん。「どこへいってしまったのだろう」が口ぐせとなっていた母が、ふとまた同じことを言う。彷徨する父は帰っても、此度の旅路は戻ることがないと母は知っていて、自らの言葉に泣くのだ。

私も先日大切にしていた舅を亡くしたばかりだが、父はここよりももっとずっと良いところに行ったのだと思っている。心配いらない。

母の居た五月がすぎて母の居ない六月始まる今日も快晴  近藤福代

当初は人が死んで何も変わらないことは残酷なことに思える。そして、やがてそれが気が休まることになっていく。

かあちゃん、と独り獄舎でうずくまる母の死を知るこんなところで  吉島覚

肉親の死が二重の意味の悲しみになる。

 

〈トランプに厳しく迫るメルケル〉という表題の絵画のごとし  水野一也

善玉悪玉の対立は見慣れた構図だが、これはアイディアが面白い。実はこれも短歌だからこそできる「絵」なのだが。

 

舌の根も乾かぬ内にロケットマンと狂った老いぼれ握手を交わす  前田一揆

ここまで言い切れれば痛快だ。単なる中傷でないのは、上の句が示すところだろう。

 

まとめ

今号は肉親の死を詠ったものが重なった。別れは避けられないとはいえ、歌を読んでいるだけで胸が迫る。

しかし、悲しみもまた、歌を詠むことで乗り越えられる。そう思って詠み続けよう。

 







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