朝日歌壇

朝日歌壇より7月22日号 ワールドカツプリュウグウ時事詠 季節にとらわれない題材も

投稿日:

こんにちは。まる @marutankaです。

朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
朝日歌壇は朝刊日曜日に掲載。当記事は、7月22日の掲載分です。

スポンサーリンク

朝日歌壇とは

朝日歌壇についての説明です。
「朝日歌壇」とは朝日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「朝日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。投稿方法の詳しいことは別記事
「朝日歌壇」とは何か?朝日歌壇の紹介と他の新聞の短歌投稿方法と応募の宛先住所」
をご覧ください。

高野公彦選

七夕の短冊にある幼い字となりのおばさんがひっこしますように(東京都)伊東澄子

思わず笑ってしまう。なぜかはわからないが、隣のおばさんが嫌いなのだろう。大人のトラブルという場合は、もっと深刻なものになってしまうが。

 

永田和宏選

競り合ひの画面にぬつと入れ墨の腕が現はるワールドカツプ(西条市)村上敏之

家人に尋ねたら、外国の選手はたいてい入れ墨をしているそうだ。日本での意味と違ってファッションなのだろう。

わからない歌は家人に聞くことにしているのだが、私はスポーツ観戦はオリンピックの時くらいで、普段はテレビもほとんど見ないので、歌壇欄を見て知らないことが多いということに気づかされる。

 

薄型のテレビの前の時代には居場所のあったフランス人形(尼崎市)ひじり純子

薄型のテレビというのは、今の液晶テレビ。そして、液晶テレビになってからは、重さが軽くなったためか大型になってしまった。昔の家にはたいていフランス人形があった。フランス人形ばかりか、他のお土産やこけしなども、実家には今でも飾られている。

 

喧噪の地球を立ちて三十億キロはやぶさ2はリュウグウに着く(三鷹市)坂本永吉

リュウグウとは何かを訊いたら、これも天文学には関心のない家人はわからなかったのだが、「地球近傍小惑星の一つ。JAXAが実施する小惑星探査プロジェクトはやぶさ2の目標天体」。

リュウグウは、公募で決定された名称で、英語でも「Ryugu」らしい。「浦島太郎」の物語で、浦島太郎が玉手箱を持ち帰るということが、「はやぶさ2」が小惑星のサンプルが入ったカプセルを持ち帰ることと重なることや、水を想起させる名称案であることなどから決定されたそうだ。

歌はただその出来事だけを詠んでいるが、リュウグウの名称に負うところが多いだろう。

 

馬場あき子選

中国語操りながら舟を漕ぐ保津川下りの船頭さんら(横浜市)松村千津子

今や地方であっても、海外の人が働いているところに接点を持つことがめずらしくなくなってきた。東京のコンビニの店員さんも皆そうらしい。

 

樹の下でひとり無心で草むしり横にカモシカ共に草喰む(長野県)八幡ゆり子

草むしりをしている隣に、猫や犬ではなくて、野生動物であるカモシカが居る。出くわすこともめずらしいので歌に詠まれたのだろうが、それにしても都会では想像もできない光景だ。

カモシカが隣に来たのは、作者が「無心」に草むしりをしていたからであり、それを見たカモシカは、作者が草を食べていると疑わなかったのだろう。結句の「共に」が、動物と人との隔てのなさを伝えている。

 

思い出す戦友の遺骨を届けたる暗き路地裏よシベリヤ帰り(枚方市)鈴木七郎

記憶を「明るさと暗さで憶えている」と始まった小説が曽野綾子のものにあったが、「暗き」は事実であり、主観でもあるだろう。シベリアから帰って最初に為すべきことが戦友の遺骨を届けることだった。作者はかろうじて生きて帰ったが、戦友はそうではない。生と死、生身の肉体と骨、家族にその明暗を自ら分けたものとしてそこに現れるということの辛さを思う。

 

小雨降る無人の駅の駅名を車掌は出でて山に告げけり(町田市)高梨守道

ローカル線の短い車両編成の列車にはいくらか人が乗っており、車掌は電車を降りて、駅名を告げるのだが、ホームには誰も待っていない。それを結句「山に告げけり」が良い。

闇深み青き蛍は手移しの手籠の中で君を照らせり(姫路市)今後佳子

辺りが明るいところでは蛍は見えない。闇が深いところでのみ見えるあわい光を捕獲して、手から手へ。その蛍が籠をもつ君を照らす。

一首は時間経過を含む多くのことが凝縮されて出来上がっている。

佐々木幸綱選

ひらかなで書かれてやさしキラキラ名一年生の朝顔の鉢(福山市)武暁

ああ、そうか。漢字ならごてごてするキラキラネームも、ひらがにすれば、そうではないのだな。綺羅綺羅も然り。
短歌では敢えて漢字を平仮名で書くということが多い。上に似た効果のある場合もある。

 

伊那谷へ佐渡から朱鷺(とき)が来たという老人クラブは佐渡へ旅する(長野県)毛涯潤

これから佐渡に渡ろうと予定していると、佐渡から鳥の群れが来たという。人と鳥を交換するかのようで面白い。

 

真夜中のドアの向こうで控え目に拍手がおこる日本ゴールか(佐賀県)真子美佐子

ワールドカップの試合は夜中だったので、起きて見ている人が居たのだろう。本当ならもっと喜びを表したいが、「控え目」であるところに作者は気づいており、好感を感じたのだろう。

 

やけに老けて映る鏡がそこにあり顔上げられないキャッシュコーナー(桐生市)久保塚文子

顔を映すためではなくて、鏡の裏にカメラがあってそれを隠すためなので、あまり鏡の質が良くないに違いない。単なる鏡だと思って、髪の毛を直したりすると、後で気が付いて恥ずかしく思うかもしれないので、念のため。

 

あまがへる背中つつけばふりかへりふりかへりつつ田んぼへかへる(延岡市)片伯部りつ子

牧歌的でもあり童話的でもあって、好きな歌。3句以下のリフレインがいい。結句の「かへる」もおもしろい。つついてみる作者の心根も楽しい。

 

「母さんと仲良くしてね」を言い残し高速バスに乗り込む息子(宮崎市)田中浩一

これを読むと子どもが居る、息子が居るというのはいいことだと思う。詠むだけで心があたたまる。やさしい子に育って作者はお幸せだろう。

 

まとめ

今回は季節の反映はあるが、季節を詠むことにとらわわれないで、さまざまに個性的な題材があったように思う。
ワールドカップやリュウグウなど、私のように世の出来事に疎いものには、短歌を通して知ることもたくさんある。

今年は予期せずあまりにも暑い夏となってしまいましたが、皆様お体を休めつつお励みくださいね。

 

前回の朝日歌壇

 

-朝日歌壇

Copyright© 短歌のこと , 2018 All Rights Reserved Powered by STINGER.