朝日歌壇

朝日歌壇より7月29日 西日本豪雨を詠む

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こんにちは。まる @marutankaです。

朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
朝日歌壇は朝刊日曜日に掲載。当記事は、7月29日の掲載分です。

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朝日歌壇とは

朝日歌壇についての説明です。
「朝日歌壇」とは朝日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「朝日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。投稿方法の詳しいことは別記事
「朝日歌壇」とは何か?朝日歌壇の紹介と他の新聞の短歌投稿方法と応募の宛先住所」
をご覧ください。

永田和宏選

父の日や父ともならず戦死せし叔父の墓碑銘指先に読む(長野県)千葉俊彦

複雑な内容をきちんと詠んでいる。父の日の墓参りに、子どもを持たず亡くなった叔父に手を合わせる。そして、墓石に掘られたその名前を指に触れる。
おそらくは作者も面識のない叔父なのだろうが、「指先に読む」に肉親へのいつくしみの情がこもっている。

馬場あき子選

大雨の被害に対処する娘市役所に詰め一夜帰らず(三原市)岡田独甫

西日本豪雨の歌。災害に会う住民もたいへんだが、自治体の職員も実はたいへんである。表には出ないことだが、たくさん詠んであげてほしい。

いく度もあの世とこの世を往き来して母は夕餉(ゆうげ)を完食したり(埼玉県)島村久夫

高齢ともなると、うつらうつらしながら食事になるのだろう。それを「あの世とこの世」と表す作者。「夕餉」は古い言葉だが、対する「完食」は現代の言葉だ。高齢者の介護はたいへんだが、この「往き来」はどこか軽やかで救われる。

深みどり肩怒(いか)らせてピーマンの守る空白真(まっ)二つに切る(川崎市)八嶋智津子

ピーマンの形状を「肩怒らせて」というのがおもしろい。果物で言う果肉の部分に、代わりに「空白」があることになるのだが、「肩怒らせて」その空間を大きく保つのピーマンが「守る」との擬人化もおもしろい。人間は何でも食べてしまう。その空白までも。

ほんのりとシナモン匂う月の出て君を迎える紅茶の仕度(札幌市)森越裕里

「シナモンが匂う」の形容の感性が素晴らしい。そういえば、月は褐色の粉が合う地味な色合いだ。夕べの紅茶というのもすてきな感じがする。月の出に静かに人を待つ。

われよりも先に新聞読みたがる九十三の母まだまだ惚(ぼ)けず(岩手県)山内義廣

こういう歌は、読むだけでこちらも元気が出そうになる。新聞を取るのを止めてしまう高齢者も多い昨今、ありがたい読者でもあることだろう。

佐々木幸綱選

無残にも一夜に荒れしこの土地に昇りたる日ぞまぶしかりける(東広島市)野田孝夫

状況を思うと言葉もないが、目に入るものから土地と太陽のみを取り上げて単純化している。太陽は変わらないまぶしさを保っている。「ぞ」は強意の助詞。「ける」は連体止め。

小部屋にて夜な夜な擬似餌(ぎじゑ)を作る夫秘密めかしてなにやらをかし(埼玉県)小林淳子

文字通りおもしろい歌。疑似餌でだます対象は魚なのだが、なぜか夫は何かの偽造品をこしらえるかのように小部屋にこもって毎夜作り続けている。そういう作者のとらえ方が面白いのだ。「何やら」は実際の情景に足す作者の創意を表すが、これもぴったりくる副詞。

無愛想な自転車店主が怖いのでパンクの度家族誰もがうめく(鎌倉市)半場保子

こちらも家族を詠っておもしろい歌。家族皆で自転車を愛用しているが、パンクとなると、パンク自体よりも店主のことで気が重くなるという。こんな些末なことが、一つのドラマを見るかのようだ。

高野公彦選

夏の夜眠る幼子涼(りょう)求め布団の海をぐるぐる泳ぐ(ひたちなか市)安孫子郁恵

しばらく寝た部分の布団は暖まって熱くなる。新しい部分に移ろうと、あちこちに寝返りを打つ子どもを、「海」と「泳ぐ」にたとえた。

万物の霊長である人を刺(さ)す孑孑(ぼうふら)あがりの分際なるに(福岡市)永井祝子

万物の霊長は態を変えないが、蚊は前身は「ぼうふら」。孑孑と書くのを初めて知った。「孑孑あがり」というのが可笑しい。人対蚊でも、おこがましいのに、実は蚊よりも小さきものだった。

三条の橋の袂(たもと)の束子(たわし)屋でマドモアゼルが棕櫚(しゅろ)束子買う(明石市)高野有

たわしという古風な道具を買う時の「私」が「マドモアゼル」なのだろう。上の句の「三条の橋の袂の」も江戸時代か明治時代の情景のようだ。それが「マドモアゼル」と対照される。

合唱部にスカウトしたき野球部のテナーの掛け声夏空に飛ぶ(横浜市)森明子

声の良さというのは表すのが難しいものだが、上句の「スカウトしたき」から「野球部」へのつなぎ方と、「テナー」、男性の高い声と野球部との結び付け方がいい。

まとめ

西日本豪雨の被害の歌がいちはやく投稿された。被災地の人を励ます歌を詠みたいものです。

暑い折、台風も重なって大変ですが、どうぞお体を大切に、歌を支えにお励みくださいますよう。

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