朝日歌壇

朝日歌壇より8月12日 酷暑と熱帯夜を詠む

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こんにちは。まる @marutankaです。

朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
朝日歌壇は朝刊日曜日に掲載。当記事は、8月12日の掲載分です。

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朝日歌壇とは

朝日歌壇についての説明です。
「朝日歌壇」とは朝日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「朝日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。投稿方法の詳しいことは別記事
「朝日歌壇」とは何か?朝日歌壇の紹介と他の新聞の短歌投稿方法と応募の宛先住所」
をご覧ください。

佐々木幸綱選

お名前を呼べばはいと返事あり土砂に埋もれた家の中より(呉市)田坂量慈

「上句ののんびりとした表現がかえって晩年の切実さを伝える」との選者評。
家の中に居るのは、「男性何名」ではなく、近所の「xxさんのおじいちゃん」であるのだろう。

漂着の難民ボート人々は仕分けされゆく生果のごとく(ドイツ)ハルツォーク洋子

生果のように分けられ、そして行く先が決められる。
もっとも最近日本に住んでいて、難民指定も受けられない人もいると知った。仕分けされないのももっとたいへんだ。

浴衣着た人は右前左前スニーカー履きロスの盆踊(アメリカ)大竹幾久子

日系人がたまさかに浴衣を着せてもらい、遠い故郷の「夏祭り」といわれるものに出かけていく。浴衣にアイデンティティーが宿る。

職質をされて遅れる人もいて午前三時の早番集合(東京都)上田結香

そういうこともあるのだろうか。職質をする警官の方も早番なのだろう。

携帯を無くしてしまいふと気づく六畳半に一人居ること(小金井市)山凌汰

今は携帯が人と人とをつなぐツールであり、それがないということは完璧に「独り」である気がするのだろうなと思う。

私は携帯を持たないが、パソコンでしか書けないことは、逆に会話では補いがつかないこともある。

高野公彦選

南海の海の底には三十五万の敗戦知らぬ兵士が眠る(三郷市)木村義熙

選者も言う通り、その数35万人ということにまず驚く。「敗戦知らぬ」が眼目だろう。
眠る兵士は静かだが、敗戦を知る人の心はそうではない。
東京、広島長崎含めて、戦死者はどのくらいの数であったろう。勝ったからと言って補いのつくようなことではないが、何のためにとの空しさは変わらない。

センス良いお洒落(しゃれ)な建物だったのに原爆ドームと呼ばれる悲しさ(東京都)清水真里子

どの建物も、どの町も、そもそも原爆とは無縁だったのだ。

理科室のように整ったひとり居の母のリビングに一輪の薔薇(越谷市)黒田祐花

「理科室のように」が悲しい。身内の高齢者は料理もしないため、台所もモデルキッチンのように雑多なものがないと聞く。散らかっているということは生活の証でもあるのだ。

三人の九二歳がひそひそと「あの世は無いよ」と語らう聞こゆ(松本市)馬木和彦

最近身内が亡くなったので、普段は気にせずともやはり「あの世」に関心が向く。それについて確信をもって答えられるのは、僧籍の住職や、お坊さんだけであり、このような職業の人が必要な所以だろう。「死」への疑問もまた煩悩に因するかもしれない。

永田和宏選

「途方にくれる」という表情の撮れるまで被災者の顔這(は)いいるカメラ(水戸市)中原千絵子

「這いいる」の表現がおもしろい。取材を受ける方にとっては迷惑な話だが。貪欲なほどメディアにとっては「良い仕事」なのだろう。

住職をわれに譲りて口出しをせざりし父にも不満ありけむ(三原市)岡田独甫

「『父にも』の『も』はとりもなおさず現在の自分を詠っているのだろう」との選者評。

火葬場の炉の火の中に崩れゆく人間という形あるもの(調布市)豊宣光

「出席」の方に○(まる)するながいながい片思いにピリオド打つために(高岡市)池田典恵

思っていた人の結婚式に招待されてしまった。その方の結婚式が、作者にとっても一つの儀式めく。

熱演のバスガイドさんすみません担任に似て反応薄くて(可児市)前川泰信

生徒が言う言葉がそのまま歌になったもの。「すみません」で、バスガイドさんへの発話であるとわかる。
何となく可笑しいが、先生の分まで謝って、気遣いが細やかだ。

熊谷より戻れば無事を喜ばれ今日四十一・一度と知りぬ(埼玉県)小林淳子

災害のあった海外から帰ってきたのではない、日本国内。日本の一部が熱帯になってしまった昨今。これも温暖化の影響なのだろうか。

馬場あき子選

家呑みし泥を掻(か)き出す手作業の生きてゆかねばならぬその手よ(福島市)美原凍子

手にポイントを集めるという焦点化の手法。住んでいた人も、そしてボランティアも。文字通り「手を借りる」とはこのこと。

灼熱はさめることなし夜の暑さジュラ紀も堪へし羊歯苔(しだこけ)枯るる(新発田市)北條祐史

暑さを表す下句がおもしろい。2句切れ、3句助詞なし。

熱帯夜アンリ・ルソーの森が呼ぶ濃密な闇あの白い月(松阪市)こやまはつみ

熱帯夜が呼ぶ夢想。ルソーの絵に「濃密な闇」というのを初めて思う。
こちらは初句切れ、体言止め。

炎天の高校野球の中継にカメラも葭簀(よしず)を巻かれをりたり(香取市)嶋田武夫

そうだったのか。精密機械にとっても酷暑となるのだろう。そして甲子園は連日のことだ。

クレジットカード並べた時は過ぎ診察券で膨らむ財布(川崎市)小島敦

バブルのときの壮年期と今との比較。財布を膨らますものは、お札ではなく、そして、大切な物もまた、お金でもないのだろう。

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