朝日歌壇

朝日歌壇より8月19日号 オウム死刑を詠む

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こんにちは。まる @marutankaです。

朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
朝日歌壇は朝刊日曜日に掲載。当記事は、8月19日の掲載分です。

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朝日歌壇とは

朝日歌壇についての説明です。
「朝日歌壇」とは朝日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「朝日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。投稿方法の詳しいことは別記事
「朝日歌壇」とは何か?朝日歌壇の紹介と他の新聞の短歌投稿方法と応募の宛先住所」
をご覧ください。

高野公彦選

スマートフォン持たぬ暮しは文語体旧かなの歌で通すのに似る(新座市)菊地良治

私もパソコンは持っているが、スマホは持っていない。パソコンはいわゆるバーチャルなツール。スマホはどちらかというとリアルなツールだろう。リアルな世界で連絡を取りたい人がたくさんいるのは悪いことではないだろう。
前週の朝日歌壇もそうなのだが、最近ケイタイの歌が多い。この歌は「持たない」歌だが、それも逆に高齢者へも通信機器が浸透したためだと思う。

日本には依存症残しカジノから利益の七割アメリカ等に行く(葛城市)林増穂

そうなのか。初めて知った。私の3番めの父はギャンブル依存症で、不動産以外の財産はすべて失った。今後の動向を見て行きたい。

おうち言葉、学校言葉を使い分け一年生に夏休みが来た(宮崎市)稗田昌範

小学生の言語生活。構造主義寄りの言語学なら、パロールとラングという。明治時代には「言文一致」というのがあった。

暑いから床と畳を拭きました家と足のうらへのプレゼント(彦根市)今村佳子

足の裏だけなのだが、「家」といえなくもないところが面白い。

漓江(りこう)下り船を降りれば物売りと駆け引き楽しむボディーランゲージ(小城市)福地由親

ボディとそれから、表情も。普段でもコミュニケーションツールは言葉だけではないとふと気づく。

永田和宏選

映像も写真も若し元死刑囚十三名かえらぬ時間(高岡市)池田典恵
それぞれの二十年刻む顔となり評者被害者ニュースに出揃う(名古屋市)磯前睦子

オウムのニュースが人気なのは、あるいは時の流れを感じさせるものだったからだろうか。

逝くと言い行くとは言わない世界あり有るか無いかは誰も知らない(高知県)藤田兆大

短歌だと季節にも「逝く」という漢字を使うことがあるようだ。おそらくそれほど区別はないのだろう。

輪をどりの輪が広ごりて夏の宵ベンガラ格子の街はにぎはふ(越前市)内藤丈子

「ベンガラ格子」が異国情緒があって良い。京都にあるベンガラで紅色に塗った千本格子のことで、染料はインド産らしい。

アーレント誰か借りてる仲間いるパラソル回して坂道下る(瀬戸市)中神禎子

ハンナ・アーレントはドイツ出身の哲学者。希少な本を借りる人は「仲間」。哲学書だが、その一致にふと心が浮きたつ故の「パラソル」。

野球見ずゴルフせず下戸 多数派と異なれる苦を引き継がんや子(名古屋市)長尾幹也

おもしろい歌だ。マジョリティーには楽があるのか。群れと一匹狼の対比。

江の島へ続く砂浜鰺(あじ)を干す小屋の日影に昼寝するひと(越谷市)黒田祐花

斎藤茂吉の「こうもり売り」の歌を思い出す。

蒼空を截(き)りつつ白き雲伸びて美しかりき敵機なれども(ひたちなか市)篠原克彦

戦時の回想詠。

走り来て抱きつく君を抱きしめるグラジオラスを抱きしめる如(ごと)(大阪市)澤田桂子

興味深いのは、女性が詠んだ歌だということ。「抱き」のリフレイン。美しい歌だ。

馬場あき子選

練り歩く野生の七面鳥(ワイルド・ターキー)の一群にリンゴ投げやる獄塀越しに(アメリカ)郷隼人

アメリカで服役中の作者。結句に思いがある。

碁敵(ごがたき)と呼ぶには強し菩提寺の跡取り息子夏休みなり(門真市)奥中渓水

上句に関わりの内容がわかって具体的で良い。普段は火花を散らす相手だが、住職の夏休みというのものんびりして愉快。

逢わずにはいられぬままの夏ありて廃駅にまた海鳴りを聞く(垂水市)岩元秀人

「いられぬまま」というのは、結局会えないのだが、その気持ちが亡くならないということなのだろう。単純でない複雑な恋心が表れている。
その行為の下句もいいなあ。

これより以下の歌も、とても好きな歌ばかりだ。長くなるので筆写のみ。

虫めがねひとつで児らは良く遊ぶ小さきものなら何でも覗(のぞ)く(厚木市)北村純一
洗い熊の罠(わな)に掛かりし草亀は桃食みており悠然として(桜井市)樫田佐季子
胎内に語りかけきし母のごと山鳩の鳴く霧深き朝(香取市)川崎寛美
炎天に庭のすみれを食い尽し蝶となりたりツマグロヒョウモン(川越市)吉川清子

佐佐木幸綱選

エアコンのドレーンの下の水滴に涼を求める青蛙あり(高崎市)小島文

人も買えるも暑い夏。

雛(ひな)の数確かめ合って緩やかに人は繋(つな)がるアオバズクの下(行橋市)木村葉子

3句以下が素晴らしい。

夏の夜の職員室の灯り見ゆ定年の我が机もあらん(観音寺市)篠原俊則

職場の明りに在職の時を解雇する。良い歌。

オウムの処刑は、他に

職責と思へばこころ堪へうるか刑に死なせし十三の生(東京都)荒井整
法相には警護が一生つくというオウム処刑の朝のネットに(君津市)畠山邦枝

 

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