朝日歌壇

朝日歌壇から9月9日号 2歳児発見の短歌

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こんにちは。まる @marutankaです。

朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
朝日歌壇は朝刊日曜日に掲載。当記事は、9月9日の掲載分です。

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朝日歌壇とは

朝日歌壇についての説明です。
「朝日歌壇」とは朝日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「朝日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。投稿方法の詳しいことは別記事
「朝日歌壇」とは何か?朝日歌壇の紹介と他の新聞の短歌投稿方法と応募の宛先住所」
をご覧ください。

<佐佐木幸綱選>

一糸乱れぬ女踊りの後ろから全部乱れて男踊り来(川越市)渡邉隆

阿波踊りの様子だそう。見たことがないが、男女差に焦点を当てた。

娘の食事何万回目つくりしか我は母の味知らずに老いて(仙台市)高橋のり子

労の大変さかと思うとそうではなく、母の味を知らない子どもであった自分を回顧する。

豪雨より救出された玉のやうな岡山の桃もつて友くる(浜松市)松井惠

よくも無事だったねえ、という感じ。あたかも人のように尊くもうれしい果実。

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赤き椅子二つ並びてわれを待つ草いきれ満つる秘境の駅に(徳島市)上田由美子

3句目の擬人化がよいだろう。誰もいない駅にある椅子は確かに、坐ってくれる人を待っているのだ。
ちなみにこの手の擬人法は、写実の派だと厳密には使えない。共選。

わが家は坂道の途中郵便も友達来るもエンジンに知る(江田島市)和田紀元

私も生家がやはり山の上にあった。老いて坂の上に住むのは大変だろうと思うが、逆に家が坂にあるために健康が保てた、と住人が言ったのを聞いて、深く感心してしまった。
悪条件にも良いところがある。それ以上にそのような考え方こそが、健康を保つ秘訣なのだろう。

<高野公彦選>

母としてまだ必要とされていた頃の旅行のビデオに浸る(福岡市)東深雪

幼い子どもとの光景を見て浸る感慨。子どもがまだ小さくて可愛かったとか、お父さん若いね、というのではなくて、さびしい気持ちになる。
ビデオというのは、写真に比べてもずっと生々しい。その分、寂しさも増す。

いつしらずジェンダー深く刷り込まれ「働き蟻(あり)は雌」にはっとす(東京都)松本知子

「はっとす」は「はっとする」の文語だが、心境がわかる。この歌を読んで同じくはっとしてしまった。
働き蟻は雄だと思っている人が大半だろう。その反対の条件を突き付けて、自らのジェンダーバイアス(偏見)に気づく。気付きを提起する深い歌だ。

看守(ガード)らの訓練射撃の音がするもしもの際に我ら撃つため(アメリカ)郷隼人

アメリカで服役中の作者の歌は、退屈を詠ったものも多いが、やはり刑務所。「もしもの際」は、脱走と、それから暴動だろう。

火の玉よ落つな落つなよ余命なき母の手に散る線香花火(さいたま市)伊達裕子

「余命なき」は「余命少なき」の意味だろう。持つ人が違うと、花火が深刻味を帯びる。

この涼を呼び寄せたのは山鳩か朝のしじまをのどかに鳴けり(岐阜市)鈴木光男

なんとなく好きな歌。いつになく涼しい朝に山鳩が鳴くと、山鳩のおかげとも思う。涼しさになごむ心。とにかく今年の夏は暑かった。

屁理屈を言う患者さんに屁理屈で返したくなり三つ数える(東京都)水谷実穂

医療者の詠み手。こういう時もあるのだろう。もっとどんどん詠んでほしい。

<永田和宏選>

新幹線つばさがクマと衝突の記事あり気になるクマのダメージ(取手市)緑川智

ほんとうに。クマは自ら病院に行くわけにもいかない。

一パック90円の卵手に養鶏業の赤彦想う(名古屋市)福田万里子

セールの日の卵だろう。詠まれているのは二つ。栄養価の高い卵が安いのはうれしいのだが、生産者の採算が危ぶまれる。
アララギの島木赤彦は、短歌に専念しようと、学校を退職して養鶏業を始めたが、半年で失敗したとある。

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<馬場あき子選>

名を呼びて山道のぼる尾畠さん棒もて藪を突く警察(長野市)原田浩生

このニュースはあまり見ていなかったが、見つかった後の会見で、ボランティアの尾畠さんが「名前を読んだ」というのは聞いた。それに幼児が返答をしたのが見つけたきっかけだった。

このあとに、同じ題材の歌を筆写。

緑なす屋上階に涼もとむ 見て見て銀座にもシオカラがいる(滝沢市)菅原宰

シオカラトンボが、屋上の人口の緑に寄ってくる都会。私も大通りで蝉の声がするのに驚いたことがあるが、そういう虫は案外どこにでもいるのだろうか。

2歳児発見の短歌

山口県で行方不明の2歳児をボランティアが発見。
捜索の様子を日本全国の人たちが見守った。

幼子を水辺に見つけしボランティア命を救い得るのは命(観音寺市)篠原俊則」
警察のメンツはさて置き二歳児の命救ひしボランティア天晴れ(長野県)小林正人
不明児を救ひ質問攻めの男(ひと)無骨な腕に蜻蛉(とんぼ)がとまる(青梅市)山田京子

 

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