朝日歌壇

朝日歌壇から9月16日号 さくらももこさん逝去と昭和ノスタルジー

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こんにちは。まる @marutankaです。

朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
朝日歌壇は朝刊日曜日に掲載。当記事は、9月16日の掲載分です。

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朝日歌壇とは

朝日歌壇についての説明です。
「朝日歌壇」とは朝日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「朝日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。投稿方法の詳しいことは別記事
「朝日歌壇」とは何か?朝日歌壇の紹介と他の新聞の短歌投稿方法と応募の宛先住所」
をご覧ください。

<高野公彦選>

同病の娘が異国で嘆きをりさくらももこの訃報を知りて(三島市)渕野里子

53歳という若さで亡くなったさくらももこさん。異国でそのニュースを知って衝撃を受けた様子が察せられる。
ただ、乳がんの場合は、治療も進行もタイプに依存するので、けっして悲観されないように。

時事的な話題だが、作者に同病の身内がいることによって、第三者的な歌ではなくなった。時事詠のバイアは、題材と自分にどんな接点があるかを掘り下げる必要がある。

とれそうでとれないラムネのビー玉をつついて子らは夏の真ん中(奈良市)山添聖子

ラムネは夏の風物詩の一つだが、「とれそうでとれない」に注目する子供たちへの焦点の当て方がよい。

隠れん坊してゐた「んぼう」が広辞苑第七版の巻末に載る(ひたちなか市)篠原克彦

言葉の歌は、個人的に好みでないのだが、この歌には興味を引かれた。
「んぼう」は、赤んぼう くいしんぼう さみしんぼうのように用いる接尾語として掲載されているらしい。ご興味の向きはご確認を。

遅れてはすぐに追いつく一羽いて六羽と母鴨(ははがも)川溯(さかのぼ)る(横浜市)桂田わか子

離れそうで離れない小鴨の様子を見た上句の観察が良い。なかなかこういうところを拾うのは難しい。

あおによし奈良判定の理不尽さこの国中に蔓延(まんえん)をする(松阪市)こやまはつみ

内容よりもやはり初句の思いつきが良い。「あをによし」は奈良を導く枕詞。
おもむろに始まって、世相をきっぱり批判する運びも良い。

<永田和宏選>

友だちになった当時の親ほどの年齢となりいまも友だち(堺市)一條智美

単純にうらやましい。長い友人関係の年月を言い表す工夫が光る。

おみなえしの黄にふるるとき黄のこぼれ風はまた知るひとつの別れ(福島市)美原凍子

先日書いた記事に引いた中の「白萩に白萩こぼるるひるつかた遠くまで陽が照り追憶に似る」を思い出す。

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解体の山寺古き経典に混じりて父の似顔絵の出づ(さいたま市)齋藤紀子

父上は僧だったのだろう。解体の時に見つけて感慨が深かろう。

耳の水抜かむとけんけん跳びはねて友と帰りし陽炎(かげろう)の道(可児市)前川泰信

今回好きな歌。昭和の香りが漂う。
これも、穂村弘さんの「灼けているプールサイドにぴゅるるるるあれは目玉をあらう噴水」と新しい歌集「水中翼船炎上中」のコンセプトを思い出す。同じく昭和ノスタルジー。

関連記事:
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<馬場あき子選>

HACHIKOと名付けし仔犬を訓練せし囚徒の瞳は輝いており(アメリカ)郷隼人

作者はアメリカの刑務所で服役中だが、ハチ公のエピソードはアメリカでも有名なのだろうか。
動物と接する時間が、囚人の喜びである日常も伝わる。

蜻蛉が吾の白髪にきて止まる野菜を積んで一輪車押すに(伊那市)小林勝幸

初句はトンボのことだが、「かげろう」または「せいれい」と読むこともできる。
一輪車もどこかノスタルジックだ。好きな歌。

<佐佐木幸綱選>

学生にアレクサンドリア図書館の講義終え時空ぐにゃりと戻る(熊本市)桑原由吏子

ダリの絵画を思わせる「ぐにゃりと」が強い印象を残す。

ギフチョウの捕獲戒む標識が合併の前の町名のこす(静岡市)木村徳幸

こういう気付きがすごいというより、やはり、実感として、古い町名への愛着が強いのだろう。
その町名を知らない人は何も思わないだろう。

注ぐよりぴぴと氷の割れゆけばいよよ冷えゆく芋の焼酎(東金市)山本寒苦

「ぴぴ」の擬音がおもしろい。「注ぐより」は注いでからの意味だろう。
私はお酒は飲めないが、酒の歌は、なんとも自由闊達なものが多い。

八月の濃き藍色の天狗池水面に逆さの槍ケ岳あり(新座市)菊地良治

ああ、これも良いなあと思う。水面を見ていてもなかなか気がつかない。
そういえば逆さ富士という言葉もあった。

 

まとめ

昭和レトロな歌が目立ちました。冒頭にさくらももこさん関連の歌がありましたが、この方の漫画も昭和を感じさせるものでしたね。
秋が近づくと、なんとなく、短歌もノスタルジックな雰囲気を帯びるものかもしれません。この時期も大いに作歌に励みたいものです。

 

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