朝日歌壇

朝日歌壇より10月7日号 安室奈美恵さん引退と樹木希林追悼歌

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こんにちは。まる @marutankaです。
朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
朝日歌壇は朝刊日曜日に掲載。当記事は、10月7日の掲載分です。

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朝日歌壇とは

朝日歌壇についての説明です。
「朝日歌壇」とは朝日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「朝日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。投稿方法の詳しいことは別記事
「朝日歌壇」とは何か?朝日歌壇の紹介と他の新聞の短歌投稿方法と応募の宛先住所」
をご覧ください。

<佐佐木幸綱選>

人群れて煙(けむ)さもけぶし河原での芋煮会とふ山形の秋(山形市)熊谷瑶子

「けぶし」は「煙し」だが、煮炊きの様に芋煮会の山形ならではの景色が伝わる。共選。

三輪山に頭を向けて浮かんでるくじらみたいな雲四つ五つ(名古屋市)磯前睦子

童話のような情景なのだが、初句が地名で重厚な感じを与えていて現実味がある。地名の効用を改めて考えさせられる。

<高野公彦選>

結腸癌(がん)前立腺癌皮膚癌の八十三歳みかん摘果す(愛媛県)阿部善信

選者評は、「みかんの産地で労働力不足。その結果、闘病中の高齢者が働く哀しい現実を詠む」というものだったが、最近女優の樹木希林さんが亡くなって、さらに有名クリニックの院長の高須先生が、「全身がん」と自身の病状を悲壮感なく伝えている。
この歌もそれと同じように、あるいは、現在のご自身の状態を過不足なく伝えるものとして読んでみたい。

阿(おもね)りて日々を送れる我の背を十四の私がじっと見つめる(下妻市)宗像四郎

人におもねることなど思ってもみなかった14歳の「私」は非難するでなく、今の作者を「見つめる」だけ。
「どう思うらむ」ではなく、ドッペルゲンガーの幻視のような読み方に、作者の心境を推し量りたい。

敬老の日の朝庫裡(くり)に来てみれば子がわが席に銘酒を置けり(三原市)岡田独甫

住職をされている常連の方の作品なのだが、毎回ご子息との関りに胸打たれる。長生きしてこういう歌を詠まれるというのは素晴らしい。
そもそも、老いの歌、介護する方の介護の歌というのは、見慣れたものになっているが、被介護者が親のサポートをする側の子どもを詠むというのはめずらしく、それだけに息子さんへの感謝の念が深いのだろう。もし自分がその立場になったときはこのように見習いたい。

「世田谷は今雷雨だね」ペルーの子のメール電波の道に壁なし(東京都)狩集祥子

南米は、日本からいうと距離的には最も遠いエリアになるのだろう。ネットや携帯が世界のいずこの地とも距離を縮めることになったが、この歌においては逆にメールが、その距離を思い出させてもいる。

<永田和宏選>

首の骨わたしと同じ七つとうキリンの首のはるけき自由(新潟市)折笠瑞枝

骨の数が同数というのは以前にも聞いたことがあるのだが、それを「はるけき自由」ととらえるところに、作者の主観がある。

母さんをするの初めてなのだから間違いもするあなただけじゃない(枚方市)東大路エリカ

いわゆる育児ストレスに陥りやすい若い母親に呼び掛けるという視点で詠まれた。口語であるのもやさしい印象だ。

疎遠でもたしかにあった友情を犠牲になにを手にした人か(堺市)一條智美

内容よりも構成が興味深い歌。一句目の「疎遠」を打ち消す二句目。それらを形容詞句として、強められた形の「友情」は4句目でまた打ち消される。結句の疑問が詠嘆に満ちている。

<馬場あき子選>

唐突に「玉葱(たまねぎ)蒔(ま)きたい」妻の声小粒肥料を鋤(す)きこみ種蒔く(安中市)入沢正夫

何となく面白い歌。唐突であっても答えてしまう旦那さんがすごい。豊かな大地のような夫であろう。

髪の毛を切られる人も切る人もおばあさんとふビューティーサロン(仙台市)小室寿子

高齢化社会の断片。これからはどこへ行ってもこのような光景が広がるだろう。

虫籠無い昭和の我らは左手の指いっぱいにトンボを挟み(交野市)遠藤昭

「鳴く手握りもちてその頭をりをり見つつ童走せ来る 窪田空穂」を思い出す。
今は竹籠以上に、プラスチックの籠が安く手に入るのだろう。「指いっぱいに」が、蜻蛉の羽根を傷つけまいと大切に持ち帰る子どもの気持ちを伝えている。

まとめ

夜にさらっと書こうと思ったら、やはりどのうたも素晴らしくて、遅くまでかかってしまいました。

他に、引退する安室奈美恵さんを詠んだ歌。

平成をカカカカカカッとピンヒール駆け抜けていった安室奈美恵(高岡市)池田典恵
ビル覆ふ巨大アムロの半眼に内地の人もちむどんどんする(横浜市)山崎垂
アムラーと安室が跳ねて涙する最後のライブはふるさと沖縄(安中市)鬼形輝雄

樹木希林追悼歌も

それなりの人生それもいいものよジュリィーと一声悠木千帆逝く(薩摩川内市)川野雄一
愚かしくふと恐ろしく確かなる女(ひと)を観にけり樹木希林逝く(東京都)荒井整

このような過ぎ行きにも時代の変化を感じますね。

 

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