朝日歌壇

朝日歌壇11月4日号 柿,栗,無花果,秋の実りの短歌

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こんにちは。まる @marutankaです。
朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。朝日歌壇は朝刊日曜日に掲載。この記事は10月28日の掲載分です。

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朝日歌壇とは

朝日歌壇についての説明です。
「朝日歌壇」とは朝日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「朝日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。投稿方法の詳しいことは別記事
「朝日歌壇」とは何か?朝日歌壇の紹介と他の新聞の短歌投稿方法と応募の宛先住所」
をご覧ください。

<佐佐木幸綱選>

大切にうたえばよかったおやすみの四千回のゆりかごのうた 関美津子

「4千回は約11年」と評にある。子育ての時は振り返って見ると短い。「子ども」という言葉はどこにもないが、「大切」と「四千回」のみが漢字、残りは平仮名で子を暗示させるものとなっている。11年というのは、複数の子どもの数を示唆するものかもしれないが、ゆりかごの歌一点だけではなく、子育てのいろいろな局面を指しているとも言えるだろう。

柿五十軒に吊るせばハロウィンの飾りかと問う隣の白人 大竹幾久子

作者はアメリカ在住の方。そういえば、時期が同じだし、色も共通するものがありそうだ。にしても、柿の色はいかにも秋の色であることにあらためて気づく。

田貫湖に月あかりで映る逆富士水鳥横切りて山頂揺ぐ 青柳正也

「横切りて」は「よぎりて」と読むのだろうか。雄大な富士の山も鳥の影に揺らぐというギャップがおもしろい。

<高野公彦選>

起き抜けのボサボサ頭がとんできて「ママおめでとう」と誕生日祝う 菱沼志穂

「ボサボサ頭」がてらいがなくていい。それにしても、子どもがこう言うということは、家庭で子どもの誕生を祝う習慣があるので、それに子どもが倣っているのだろうなとも思う。大切にし合う家族関係が背後に見える。

カタコトの日本語話す介護士の逞しき腕が母を支える 雨河景子

外国からの働き手はひじょうに多い。特に介護関係は人手が不足しており、やはりこのような状況になるのだろう。「片言」といわずに「カタコト」が言葉のぎごちなさを伝える。

大粒の栗の実2キロ剥きゆけり雨のトレモロ耳打つ夕べ 中村悦子

2キロは大変だが楽しい作業なのだろう。単純作業の際には耳に聞こえてくるものがある。

<永田和宏選>

一月に孤独相置きし英国は秋にまた置く自殺予防相 鈴木一成

かの国ではここまで深刻な問題であるらしい。日本はどうなのだろうか。あるいは、このような問題に関しては鈍感で放置されているだけなのか。

太陽光発電、派遣の労働者?少し余ればすぐに切られる  前田一揆

太陽光発電パネルが空き地を占めるということもこれまではなかったし、非正規雇用が問題化することもなかった。前の記事で非正規雇用を詠まれた藤原慎一郎さんの短歌を取り上げているので詠まれたい。

萩原慎一郎の短歌作品集『滑走路』いじめと非正規雇用を詠む

秋風は身にしみるから窓開けてくれよと粘る三井寺歩行虫 瀧上裕幸

三井寺歩行虫は「みいでらごみむし」という虫の名前。「三井寺」とはハンミョウのことだという。この歌では、ゴミムシがどうしているとは言っていないのだが、しかし窓ガラスにゴミムシが一定時間しがみついているということがわかるようになっている。このような省略のある歌は、表層的でなく奥が深い。共有する背景に通じているものがあって、なんとなく得をしたような感じさえある。31文字であって、内容が31文字以上だからだろう。その31文字をもって相手がどこまで把握するかという察知が必要だ。この手の歌を見ると、私はポーの小説にあったことを思い出す。知的に優れているが、嫌味でなくユーモラスな歌だ。

<馬場あき子選>

秋の日に無花果ゆっくり熟れてゆく鳥には鳥の地図のあるらし  福本都

上下句に直接のつながりはないのだが、下句がいい。

ふくしまの牛には競りのランプ減り牛も牛牽く人も俯く 青木崇郎

牛はともかく、連れている人は金額よりも、大切に育てた牛の評価を下げられるということは、さぞつらいものがあるのだろう。結果は「俯く」だけなのだが、胸が痛む。

蹇(あしなえ)の父に肩貸すきざはしの一段ごとの秋の夕暮れ 木暮陶歌人

4句が良い。「きざはし」は階段のこと。上下句に関連はないようだが、父を支えながら、ゆっくり登っていくと見えるものがある。
「夕暮れ」で終わる歌は「夕暮れ止め」と言われて、新古今集あたりに多く、「見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮」を含む三夕の歌が有名。

まとめ

投稿歌にも秋の気配が濃厚になってきました。11月の晩秋のこの時期は、読書にも風景を詠むにも詩文に適した季節ではないでしょうか。引き続き励みたいものです。ではまた来週。

 

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