朝日歌壇

朝日歌壇1月27日号 動物の様子をこまやかに詠う

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こんにちは。まる @marutankaです。
朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。朝日歌壇は日曜日朝刊に掲載。
この記事は1月27日の掲載分です。

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朝日歌壇とは

朝日歌壇についての説明です。
「朝日歌壇」とは朝日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「朝日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。投稿方法の詳しいことは別記事、
「朝日歌壇」とは何か?朝日歌壇の紹介と他の新聞の短歌投稿方法と応募の宛先住所」
をご覧ください。

馬場あき子選

鮒酢(ふなずし)の一の桶過ぎ新年の二の桶囲む晴れの日来る 中山道治

鮒酢を仕込んで、一つは間もなくいただくのだろうか。そしてもう一つは新年のメインに取り置くのだが、それを良く卓食べる日が来た。二重の意味でおめでたい感じがする。共選。

転移せししつこきガンに放射線照射受けをりしつこく生きむと  岡田独甫

「しつこき」の形容詞が、病名と自らにそれぞれ繰り返される。最大の対抗策だが、ぜひガンよりしつこくなっていただきたい。

じっくりと煮込む料理の減りたれば片手鍋ばかり増えしキッチン  松本知子

一読して興味を引かれる。「煮込み料理が減った」では目に見える具体とならない。気が付いた習慣の変化を可視化するように表現をすると、読む人に良く伝わるものとなる。客観的な観察もある。

水平の田畑の冬のかくれゐしひばりの鳴かず飛び立つ真昼  小林勝幸

こちらも観察が優れている。隠れている鳥は鳴いたりしない。ひばりがさえずるのは、空の高くに居る時だけだ。すなわちそれが「揚げ雲雀」。

暖冬に雪なき村の道広し韋駄天のごといたち横切る  小野沢竹次

こちらも好きな歌。いつもとは違う道の様子を広いと感じる。そして、身を隠す雪のない空間をいたちがこれ以上なくすばやく横切るのだ。「韋駄天のごと」が利いている。韋駄天とは、よく走るという俗伝がある仏法の守護神の一つ。そういえば、ドラマのタイトルにもなっている。

枯れ葦の穂もさゆらがぬ奥琵琶湖鴨潜りたる輪のみ光れり  若林禎子

好きな歌が続く。二句の「さゆらがぬ」は「揺らぐ」に「さ」の接頭語がついたもの。奥琵琶湖はひっそりと静まっており、動くのは鴨のみ。しかも、その鴨も詠まれているが底には居ない。水面にその輪だけが残るという内容。「輪のみ」の「のみ」が鴨の動きすらを消し、上句を引き立たせる大事な言葉で、結句の存続の助動詞「光れり」も良い。秀歌として押したい。

佐々木幸綱選

コンビニの駐車場まで運ばれて越後の雪は日光を浴ぶ  中村幸生

雪下ろしで集められた雪が、出入りの客の妨げにならないように、車場に運ばれる。理解はできても、雪国に暮らした人でなければ、この雪の多さはわかるまいと思う。

弟と息子ら男一家にて弟の靴最も小さし  檜山佳与子

弟とは作者の弟で、その息子、作者からは甥たちだが、それと比べると、彼らの父である弟が一番小さい靴を履いている。甥たちの成長と姉弟の時間が感じられる。

高野公彦選

三尺の雪を掻き分け笹の根を探して生きる猪哀れ  涌井武徳

笹の根元に猪が掘った後がある。冬には雪で食べ物がなく、いわゆる竹の子のような部分を食べるのだろう。三尺は約114センチ。作者は新潟の方。

森近き家に住む幸幾たびも広げた紙面を過る鳥影  岡田紀子

個人的に参考にしたい歌。

電線に椋鳥並ぶ椋鳥は隙間隙間の隙間にとまる 阿部芳夫

おもしろい歌。椋鳥が二回出てくるのも、鳥の並ぶさまと関連がある。斎藤茂吉の「松風のおともこそすれ松かぜは遠くかすかになりにけるかも」を思い出す。

永田和宏選

狸かとたづねて妻をおこらせし猫の絵皿にお供えを盛る 末永純三

おもしろい歌だと読み始めたら、しんみりする内容。可笑しみというのは、これも生きているからこそなのかもしれない。

カップ麺のからが積まれたワンルームうちに帰っておいでと言いたい  高寺美穂子

子どもの家を訪ねたら、食事はどうやらカップ麺だとわかり、思わずそう思われたのだろうが、「言いたい」ということは、それを言わずに子どもの自主性に任せたということなのだろう。一読して最初に思うのは、つくづく、親というのはありがたいということだ。

文庫本黙々と読む運転手バス出発の十秒前まで  高寺美穂子

日常の希少な光景をとらえた良い歌。客の方はバスが走るまでは手持無沙汰なのだが、運転手はそうではない。運転手にとっては、走っていない時間は自由時間なのだと気づかされる。

素晴らしい観察

今号も感嘆させられる作品、秀歌がたくさんでした。動物を題材にした歌が多いのは、やはり冬を生きる厳しさへ思いをはせるためでしょうか。

まだまだこれからが2月、寒さに負けずに作歌に励みたいものです。

 

 

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