朝日歌壇1月20日号「幾たびも雪の深さを」折口信夫の叫び,許さざるまま  

広告 朝日歌壇

朝日歌壇1月20日号「幾たびも雪の深さを」折口信夫の叫び,許さざるまま

※当サイトは広告を含む場合があります

こんにちは。まる @marutankaです。
朝日新聞の朝日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。朝日歌壇は日曜日朝刊に掲載。
この記事は1月20日の掲載分です。

スポンサーリンク




朝日歌壇とは

朝日歌壇についての説明です。
「朝日歌壇」とは朝日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「朝日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。投稿方法の詳しいことは別記事、
「朝日歌壇」とは何か?朝日歌壇の紹介と他の新聞の短歌投稿方法と応募の宛先住所」
をご覧ください。

永田和宏選

吊るし柿の深き皺まで差してくる冬至の夕日あかあかとして 川野公子

冬の日差しは、他の季節とは角度が違う。冬至の日にはそれがはっきりわかる。
倒置の校正になっているのが現代的だ。

いくたびも雪の深さを聞きし母逝きてしずけしふる里の雪  沼沢修

「いくたびも雪の深さを尋ねけり」は正岡子規の句。子規のように仰臥されていたのだろう。結句が静かだ。

馬場あき子選

潮騒のとどろに気多(けた)に漲(みなぎ)れば折口父子の叫(おら)びとぞ聞く  北野みや子

折口信夫・春洋(はるみ)父子の墓は石川県羽咋市にあり、そこに住む人の歌だそうだ。気多(けた)は地名。
「叫び」とはよく言ったものだと思う。ルサンチマンの多い人だった。

スマホなく施設の母とかわす手紙恋文のようにもどかしくもあり 大島いづみ

今は年賀状ですら、メールで済ます時代なのだが、スマホを持てない母には文字で手紙を交わす。筆記にも郵送にもそれなりの手間がかかるが、それでも母上と言葉を交わしたい作者の思いが「恋人のように」に凝縮されている。

佐佐木幸綱選

切り取れば折り紙になる青空をかばんにしまう旅に行きたい  折田日々希

なぜか最初は4句切れの歌だと思った。「~のような旅」の読み方が作者の意図するところだろう。
ちなみに、4句切れと読むと、シュールな歌になる。上句は比喩。

小さき手の作りしレゴの機関車は青いシーツの海もはしるよ  門田春美

レゴブロックというのは、私が子供の頃からあったので懐かしい気がする。4句の「青いシーツの海」の比喩がすてきだ。

通勤の車の列がこんなにもやさしく流れ行く霧の中  佐藤ゆう子

霧の日の風景はいつもの日とは違う。「幻想的」とは言わずに「やさしく」という言葉のニュアンスがいい。

高野公彦選

ジェット機は五億円てふ八百九の見切り大根百円の夜に  小関由佳

「八百九」は八百屋さんの名前。ドローン投資会社がジェット気を買ったというニュース。「見切り大根」との言葉が面白い。

歳月は恩寵のごとし過ぎゆきて許さざるまま忘れ行くなり  渡部鈴代

4句、時間がいかに過ぎようとも、許せないこともある。そして許せないまま忘れていく。しかし、それを意識して歌にしたということは、それをふと回顧したということなのだろう。気がつけばその痛みも薄れて「恩寵のごとし」という思いになるというところが良い。

関連記事:
NHKBSで放送された、永田和宏氏監修の「平成万葉集」の歌をまとめました。
『平成万葉集』全短歌作品 平成に詠まれた短歌からNHKBS1月2日放送分




-朝日歌壇

error: Content is protected !!