平成万葉集

『平成万葉集』全短歌作品 平成に詠まれた短歌からNHKBS1月2日放送分

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1月2日NHKBSのテレビ番組「平成万葉集」の中で放送された短歌作品を掲載します。

平成に詠まれた短歌を歌人から一般まで広く取り上げる3本シリーズの1回目です。

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「平成万葉集」短歌全作品

『平成万葉集』は2日にNHKプレミアムで放送されたもので、平成に詠まれた短歌を歌人から一般まで広く取り上げる3本シリーズの1回目です。

放送される短歌は、天皇皇后、人気の歌人から、ホームレスや短歌マニアの小学生まで平成に生まれた歌の中から、選ばれたものです。

『平成万葉集』番組内容紹介

『平成万葉集』プロローグ

プロローグは、番組の最初のナレーションに続いて、それぞれのテーマ「つながる」「恋」「闇」他から、テーマを代表する作品が一首ずつ紹介されました。

短歌人口100万の中からえりすぐった平成、心の歌の数々。天皇皇后から小学生まで詠み人はさまざま。
僕たちは今、これまで誰も覚えがない一つの体験、一つの時代が終わる日をあらかじめ知っているという初めての体験をしている。
その日を前に三十一文字でたどる平成、心の旅路です。(ナレーション)

プロローグ作品

いまどきの助詞のことばに「よ」「わ」「ね」という語尾はないのだ凛といくのだ 東京都 さいとうすみこ

人の数だけ 電話が街を歩いている喜怒哀楽を宙(そら)に飛ばせて 大阪府 宮本秀

ずさんなる仕事叱れば「ですよね」と同意も手抜きこの若き部下 愛知県 長尾幹也

箪笥の下を必死にくぐり老妻は一瞬笑い次に号泣す 兵庫県 長沼満

晩年のひばりが渾身で歌う夜八月はいつまでもいつまでも昭和  神奈川県 神野志季三江

手を当ててきみの鼓動を聴いてから掌だけがずっと湖 京都府 大森静佳

長押しでメール消し去る二秒間揺れる心にけじめをつけて 神奈川県 荒木陽一郎

ぼくも非正規きみも非正規秋が来て牛丼屋にて牛丼食べる 東京都 萩原慎一郎

「つながる つなげる」通信機器

バス停に携帯見る人並びおり首の角度をきれいに揃えて 東京都 宮沢洋子

一億のベッドの中でスマホ光りそれぞれのさびしさ満点の星 沖縄県 中山小雨

空を見て月の形がキレイだとポケベルうって知らせたくなる 千葉県 三橋基世

そんなにも孤独を恐れているのだと携帯電話握り眠る子をみる 愛知県 橋本英幸

ストリートビューで見てみる吾子の棲む学生マンション、窓、ベランダを 福岡県 東深雪

ドットコムドットコムとうあの声か吾を棘棘(いらいら)させているのは 東京都 松井多絵子

送信して着きましたかと電話にて確かめておりメール事始め 福岡県 宮原ますみ

四四十路過ぎし子が嫁さんを欲しと言うパソコンなどで頼むことかよ 福岡県 大庭愛夫

クリックのカチリで消去される我ある日突然何も言へずに 東京都 高山邦男

 

「青春」

やめてくれこちとら花の十七歳父よ裸で前を通る 茨城県 江田容子

オレンジの埃が踊る化学室二人の酸素が亡くなっていく 千葉県 大芝嶺花

おもひきり躰を傾け急カーブ抜ければかすかにオイルが香る 神奈川県 村上和子

公務員になれよと父が言いました夢を見ろよと教わったのに 兵庫県 廣幡真侑

年下も外国人も知らないでこのまま朽ちてゆくのか、からだ 東京都 岡崎裕美子

 

「ふるさと」

わが町の〈青春通り〉に花咲けど若者たちはどこに居るのか 山形県 黒沼智

過疎の町最終バスは終点に止まらず暗き車庫に入りゆく 福島県 澤正宏

田づくりも今宵かぎりと焼く藁の赤き火見つむ妻と並びて 中村雅之 宮中歌会始入選作品

 

天皇皇后両陛下が災害を詠まれた短歌

人々の年月かけて作り来しなりはひの地に灰厚く積む 平成三年天皇 平成2年雲仙岳噴火

この年の春燈かなし被災地に雛なき節句めぐり来りて 平成七年皇后 平成7年阪神淡路大震災

被災地訪問のご様子

皇后の「ファイト」の仕草国民の想いの全てを告げてくれたり 東京都 浅井紘子

 

「働く」

【リストラ】と【リストカット】が仲良しの顔して並ぶ新語の辞書に 神奈川県 中川栄治

鍵持たぬ生活に慣れ年を越すいまさら何を脱ぎ棄てたのか ホームレス 公田耕一

まだ結果出せず野にある自販機で買いたるコーラいまにみていろ 東京都 藤原慎一郎

自転車で営業する夢坂道がなかなか上れず客が重たし 東京都 高山邦男

 

「涙」

誰よりも一緒に生きた妻だから俺がいちばん悲しんでいい 栃木県 鈴木孝男

戦争で死んだ友のため亡く祖父よわれの手首の傷に気づけよ 長野県 緒方悠子

これまでのどんな昇進よりまぶしおちて部長に這い上がりたり 大阪府 長尾幹也

進化せしロボット「アシモ」のけなげさはわけのわからぬ涙を誘う 大阪府 芦田恵美子

イチローの4000安打の記事の上(え)に変な涙が三滴落ちぬ 福岡県 染野太郎

 

「家族の歳月」

壁ドンを何のことかと訊く夫やってみたけど胸キュンとせず 新星和子

百二歳まで頑張ろうねとはげませば期限切るなと百歳の母 神奈川県 長沢セツ子

たった一度のこの世の家族寄りあいて雨の廂に雨を見ており 東京都 永田和宏

夕暮れて幼子抱きとる保育園さあここからは母である 広島県 志喜屋美穂

 

父をうたう母を詠む

パパのいすげつかすいもくきんようびからっぽたいくつどようびはまた 松田わこ 5歳

父母祖母に近づきたくてあいたくて同じ畑で夏の汗かく 滋賀県 今村佳子

オレオレの詐欺の手口を聞き終えてやがて湧き来ぬさびしき怒り アメリカ 吉富憲治

「独断でやったことです。上からの命令などとは滅相もない」山梨県 村田一弘

政治家の嘘言い訳を日ごと聞き心は既に梅雨入りとなる 茨城 鈴木節子

ドライブと母を連れ出し病院へ母さんゴメンこれしかないんだ 長崎県 突飛

訊かれてもいじめじゃないと答えてた祈りと同じような強さで 埼玉県 えんどうけいこ

 

「恋」

文字変換壊れたみたいこの携帯素直じゃないんだ「透き」「隙」「漉き」「鋤」 広島県 畑中真由

この恋の総面積を知りたくて補助線そっと引いてみたりする 山口県 高橋昌子

終バスにふたりは眠る紫の 降りますランプに取り囲まれて 京都府 穂村弘

「待たせたな」もうすぐカッコつけながら来るはずおれのなかの勇気は 大阪府 虫武一俊

生きていくことをあなたに見せるときちょうど花びらでもふればいい 虫武一俊

「孤独」虫武一俊さんの作品

この格差社会の底の草原にわれはこそこそ草を食う鹿 大阪府 虫武一俊
くれないの京阪特急過ぎゆきてなんにもしたいことがないんだ
眼を閉じて屋根の向うの星叩くこの世は永遠の暇潰し
三十歳職歴なしと告げたとき面接官のはるかな吐息
生き方が洟かむように恥ずかしく花の影にも背を向けている

 

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「闇」 震災

死なせてはならぬ友なり繋がらず地虫のように電話は鳴るに 兵庫県 井坂たかし

かなしくも四五日分のひげ伸びて怪我ひとつなき遺体堀り出ず 兵庫県 岩佐栄三

氷点下四度の今朝の火葬終えて骨壺のなく袋に収む 岩手県 佐々木貞雄

いつ摘みし草かと子等に問われたりよもぎだんごを作りて待てば 茨城県 野田珠子
(放射能汚染を案じる子の反応に)

満開の桜並木の映像はわれの故郷逃れて哀し 東京都 半杭蛍子

夢の中なんども津波押し寄せてなんども失くす今はなき家 宮城県 逢坂みずき

 

世相

「怖い事件あったね」「どの」というような恐い世の中になってしまった 東京都 上田結香

何もかも悲しかったと十歳がたった十歳が死を選びたり 静岡県 渕野里子

夢のある文字のひとつも遺せずに許しを乞ふて結愛ちゃん五歳 福島県 渡辺良子

 

「家族の歳月2」介護の歌

私がこんなにやさしくないなんて介護の日々に思い知るなり埼玉県 黒木幸枝

時間をチコに返してやらうといふように父は死にたり時間返りぬ 千葉県 米川千嘉子

介護から逃れて深夜の磯に釣る大魚よ我を海へ引き込め 山口県 田中径

(77歳男性 統合失調症の息子47歳を介護。病院に入れて二週間後に詠まれた)

 

安室奈美恵を詠む

アムラーと安室が跳ねて涙する最後のライブはふるさと沖縄 群馬県 鬼形輝雄

平成をカカカカカカっとピンヒール駆け抜けていった安室奈美恵 富山県 池田典恵

 

「沖縄」

ガイドブックにある沖縄はいつもいつも明るく元気な顔ばかり見す 沖縄県 佐藤モニカ

右腕に沖縄人と掘りてあるジョンと知り合う週末のバー 沖縄県 屋良健一郎

墜落のニュースをききて今日も又狂わんほどに空ばかり見る 沖縄県 玉城寛子

タクシーの運転手が急に嗚咽する沖縄戦を語りいるうち 沖縄県 永吉京子

シュガーローフの丘にはビルが建ち並ぶ傷あとおほふかさぶたのごとく 沖縄県 知花くらら

(※シュガーローフ 爆撃で現れた石灰岩の白い土地のこと。米兵が「シュガーローフ」《砂糖をまぶしたパンの意》と呼んだ)

海の髪の望まぬ勤めをフロートは辺野古の海の泪と浮かぶ 沖縄県 仲本恵子

(※フロート 立ち入り制限区域を示す浮具)

年明けも何かと忙し車の列空にオスプレイ我は甘蔗(きび)刈る 沖縄県 大城永信
我もまた小さな島の曲がり人青白き天の月の影追う

 

大城さん談
「平成は一番良い時代だったんじゃないかね。戦争がないのは平成の世の中だけさね。このままずっと平和が続いたらいいけれども」

 

平成レクイエム」 追悼歌

雨にあぶれ駅に屯し酔う人ら手塚治虫の死をば悲しむ 大阪府 廣橋ノブ

燦燦と昭和に生きしひばり節よわが歴史なり応援歌なり 東京都 板倉俊雄

わたし今生き延びてます「卒業」のテープちぎれて尾崎は絶えた 東京都 長木枝

つらいよと男のように気取ってはみられねど昭和の寅さんが好き 秋田県 佐々木克子

清志郎生きていたらどう叫ぶ原発輸出解釈改憲 青森県 中村範彦

花吹雪舞ふ金毘羅の芝居小屋に勘三郎がゐた遠い春の日  香川県 桑内繭

颯爽と肩で風切り映画館後にしたっけ「健さん」を観て 香川県 藤井哲夫

樹木希林さりげなく言い全うす〈自分を使い果たしてから死ぬ〉と 東京都 山室咲子

 

「新しい旅が始まる」

やがて来る世にもかがやけ九十歳(きゅうじゅう)のわれのたてたる九条の看板 青森県 中村雅之

あたらしい時代の風の匂いとか考えている二十歳の私 富山県 松田梨子

いつの日か私もおばあちゃんになり縁側で話す「平成」のこと富山県 松田わこ

新しい時代の主役でなくってもみんな同じ生きている人 東京都 高山邦男

ぬけられてこれはトンネルだと知ったおれとあなたに流れ降る春 大阪府 虫武一俊

平成の次の時代もその先もここから海が見えますように 宮城県 逢坂みずき
これからも見よう見まねで生きていく礼儀作法とかそれからキスも

愛々(かながな)と甘蔗(きび)を育てて生きたかり戦なき御世の平成終る 沖縄県 大城永信

「まだ」と「もう」点滅している信号に走れ私の中の青春 京都府 松村正直

 

『平成万葉集』で放送された作品は以上です。

 

 





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