朝日歌壇

コロナの短歌5 外出自粛と桜、スカイプで通話

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新型コロナの短歌、短歌を詠まれる方は、どのような内容を歌にしているのでしょうか。

朝日歌壇にはコロナウイルスとその影響下の生活の情景を詠んだ短歌がたくさん投稿されています。

5月3日の朝日新聞の投稿歌より、コロナの短歌をご紹介します。

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コロナ禍を詠む短歌

日本だけでなく人類の危機をもたらす新型コロナ、この危機を短歌で分かち合おうとして、朝日歌壇の投稿にもコロナウイルスとその影響下にある生活の様子を題材にした短歌が投稿されています。

コロナの脅威にもめげず、また、生活の制限される悲しみをも、歌に詠もうとする気概が素晴らしいですね。コロナの短歌をご紹介します。

 

コロナの投稿歌 5月3日の朝日歌壇

5月3日の朝日歌壇の短歌より、コロナが題材の短歌をご紹介します。

今日もすばらしい作品が投稿されています。投稿者の敬称は略させていただきます。

外出自粛で生まれるシーン

外出自粛という事態が続いているため、それぞれの生活に変化が生まれています。

これまで予測もできなかった新しい事態であるため、その中の変化を目ざとくとらえた歌となっています。

外出を自粛せる夜 夫は子を十年ぶりの将棋にさそふ

町田市 村田知子

こちらのお宅では、父子の将棋というふれあいが再度生まれるきっかけとなりました。

何事もポジティブにとらえたいものです。

 

手作りのマスク見せあい週末はドイツの吾子とスカイプかわす

松戸市 原尚子

テレワークが推奨されると共に、テレビ電話のように使えるスカイプが多く使われるようになりました。

「見せあい」というところに、視覚要素が加わったテレビ電話の特徴が出ています。

スカイプの動詞は、スカイプを「交わす」との言葉を当てられています。

 

予定した行事はすべて中止され空欄だけのホワイトボード

川崎市 小島敦

職場での情景でしょうか。いつもはびっしり予定が書きこまれるボードも白さが目立ちます。

経験した人には驚くべきことで、心にも”空欄”が生まれていることでしょう。

 

また一つカレンダーより予定消し家にこもりてボブディラン聴く

栃木県 川崎利夫

こちらは自宅のカレンダー。

このような時に聴くのは、まさしくボブディランかもしれません。

膝を抱えて壁にもたれて聞くような情景が目に浮かびます。「家にこもりて」の時は一人なのです。

 

コロナ下の桜

卒業と入学に伴う桜のシーンも様変わりしました。

記念樹の桜やうやく二、三輪咲いて小一自宅待機す

浜松市 松井恵

今年から小学校に通うはずだったお子さんも自宅待機となっています。

入学を記念して植えた桜、まだ小さい木なのでしょうが、それがわずかに花開いたところの様子です。

 

人絶えて鴉が桜啄(ついば)める地球最後の昼下がりのごと

東京都 佐藤幹夫

鴉は時に禍々しい鳥にも見えますが、誰も見る人がいない桜をその鴉が食み散らしている。

たまたま、目にした情景を、何かの啓示のように受け取っているのです。

斎藤茂吉の「のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて足乳根の母は死にたまふなり」も思い出します。

 

コロナに立ち向かう人たち

このような中でも、外出自粛しているばかりではなく、コロナに立ち向かう人たちがいます。

いつの世も前線、後方の別ありて防護服の医師スーツの専門家

大和郡山市 四方護

コロナに直接対応する人達をやや俯瞰してとらえた作品。

時間的な距離感である戦争との比較をパラレルに、そして、前線、後方の隔たりのコントラストの両方を取り入れています。

 

インタビュー受くるにマスク外したりゴム跡深き大臣の頬

広島市 金田美羽

カメラのクローズアップの手法。マスクを外すまでの時間経過と、その後の転換で、広い画面の中のただ一点「頬」に焦点を集約させて、体言止めで終えています。

政権への批判も多いのですが、医療関係者もちろん、非常事態での長時間の激務が続く人も多くおられることでしょう。

 

「いい人生だった」と人工呼吸器を若者に譲り逝きし老女よ

観音寺市 篠原俊則

海外のニュースから。

伝聞ではありますが、日本とは違う状況に驚くと同時に、胸が痛まずにはおれません。

 

以上、コロナが題材の短歌です。

どの歌も積極的にコロナを題材に詠んでおられて素晴らしいですね。ありがとうございます。

 

コロナ以外の短歌

以下は、コロナ以外の短歌で、すてきな歌だなと思ったものです。

老人へ薬をはこぶドローンいま無垢島(むくじま)めざし海を越えゆく

大分市 岩永知子

お馴染みドローンが、撮影ばかりでなく、薬の輸送にも使われるようになるという歌。

海の上の広い空を飛ぶドローンが一直線に進んでいく様子に、作者の思いがまた現れているように思えます。

 

主婦力も想像力も乏しくて肉じゃが率の高い夕飯

三原市 池田桂子

おもしろみがある作品。こんなことも作品になるという点を見習いたいです。

「肉じゃが率」の一種の造語が面白い。

もちろん、作者の能力のせいばかりではなくて、コロナ下の買い物の制限が背景にあります。

 

信号を待つ間もスマホをさわる彼 空を見ようよ 私を見てよ

神戸市 藤井啓子

口語で詠まれた作品。スマホ依存は、コロナ下の生活でも増えていると言われますが、ううむ、これはひどい!

彼にこの短歌を見せたらどうでしょう。もちろん、スマホで投稿歌掲載の紙面の写真を撮って送ってあげてください。

 

入選を祝ってくれる人もなく知らせる人もなく日が暮れる

東京都 村上ちえ子

短歌の入選を題材に、分かち合う人のいない孤独を表した作品。

結句「日が暮れる」で、作者が一日うれしい思いでおられたことが伝わります。

ですが、わざわざ誰かに知らせるまでもなく、もっと大勢の人が作品を見ていますよ。

 

鳴き声をまねて口笛吹く我を怪しみて鳴く庭の鶯

大田市 安立聖

庭に来る鶯とのデュエット。

「怪しみて」というのは、一種短歌に特有の言葉で、「あやしみて人はおもふな年老いしショオペンハウエル笛ふきしかど」を思い出します。

「怪しみて」の主語は鶯なので、作者の口笛を「自分と同類のようだが、ちょっと変かな」と感じているのです。

初句の「鳴き声をまねて」の主語は作者で、庭に来た鶯の鳴き声をまねて作者が吹く口笛がまずあって、そこにさらに、鶯があやしみつつも鳴く、つまり、上下句がつながって循環できるような構成となっていて、鳥との対話が、歌の上でも成り立っています。

単に対象を引き付けて詠むと言っただけではなくて、歌以前に鳥との対話を試みる作者がすばらしいと思います。

終わりに

こちらにあげただけではなくて、他の歌ももっと引用させていただきたいものばかりでした。

コロナの歌も、楽しんで作っていきましょう。

それではまた来週お届けしようと思います。

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