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『赤光』初版と改選版 改定の理由と初版の意義

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『赤光』は斎藤茂吉の代表作である処女歌集ですが、初版と改選版があります。

改選版では大幅な改定が行われ、斎藤茂吉は改選版を定本としていますが、初版を採択する解説書もあります。

『赤光』の初版と改選版についてまとめます。

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『赤光』初版と改選版

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斎藤茂吉の代表作である処女歌集『赤光』には、初版と改選版があります。

『赤光』は出版後に大変な評判となり、初版は三度版を重ねましたが、斎藤茂吉は、旧作を不満としながら、最後の版を発行、その後、五版の発行の際に改作を行いました。

短歌を年代順に配列

最も大きな改定は、掲載された歌の順番です。

初版は、最初に最も最後に制作された伊藤左千夫の訃報を主題とする大正二年作の「悲報来」が収録され、それから、年代をさかのぼって、それまでの作品が年代をさかのぼる順番で掲載されました。

改選版では、最初が明治38年の作品「折に触れ」の初期作品で、歌集に一般的な時間順の掲載に改められました。

 

『赤光』改選版で改定した理由

斎藤茂吉がわざわざ改定を行った理由は、時間がたって自らの作品に不満が生じたたのようです。

三版にの後書きにおいて、斎藤茂吉自らその点を明記しています。

いかにも不満な歌が多いので今更かなしんでいる。かつてはいいつもりで居ったのであって、それが今は駄目である。―「赤光」三版に際して あとがきより

 

そして、直しを加えた後の改選版の発行の際には下のように

「赤光」の歌は既にいろいろの書物にいんようせられたけれども、今後「赤光」の歌を論ぜられる場合には、改選「赤光」のように寄ってもらいたいと思う。しかし直した歌がみなきにいっているというのではない。不満の気持ちは依然としてあるけれども、そう濫りには直すことをしない。-改選『赤光』跋

ここで大切なことは、斎藤茂吉が「改選版に拠ってもらいたい」としている点です。

初版『赤光』の意義

『赤光』の改選版の発行ににおいて興味深いのは、作者である斎藤茂吉が、定本を改選版椅子べしと述べているのにもかかわらず、「『赤光』においては、初版を推す声が高い」(岩波書店『赤光』解説 柴生田稔)という点です。

上を記した、『赤光」の文庫版においては、改選版を先に、その後に初版を合わせて載せるという異例の措置となっています。

また、斎藤茂吉の短歌研究の著者も、近年においても、改選版を採用しているものがみられます。

初版『赤光」を採択する理由

『異形の短歌」で斎藤茂吉の「死にたまふ母」を開設した品田悦一氏はその理由を

初版に従うのは、改選版での改変は歌を無難な形に整えた半面、当初の形に備わっていた破天荒な迫力をそぎ落としてしまった愛が多いと思うからですが、これには異論もあるでしょう。―「異形の短歌」より

と述べて、改選版ではなく、初版の短歌の方を掲載の上解説しています。

他に、塚本邦雄も、その著書『茂吉秀歌』に初版のテキストを用いるにあたって次のように

『赤光』は大正10年、数多削除改定の上、760首所収の「改選版」上梓を見た。著者これを底本としているが、私は削除された作品の性質にもかんがみ、単純な誤記、誤植の修正以外は「初版」に拠った。―『茂吉秀歌』赤光解題

 

よって、これらの著者の解説を読むときには、初版の『赤光」が欠かせないこととなります。

文庫本では、岩波文庫は初版とも両方の『赤光』全文を掲載しています。




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