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斎藤茂吉の歌集解説『赤光』~『白き山』『つきかげ』まで各歌集の特徴と代表作

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斎藤茂吉の歌集で、一番有名なものは、最初の歌集『赤光』です。

その後の歌集は『あらたま』「つゆじも」、中期の歌集には「白桃」、晩年の代表作には「白き山」があります。

斎藤茂吉の歌集と各歌集の特徴、代表歌をまとめます。

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斎藤茂吉の歌集

斎藤茂吉は山形県の現在の上山市に、1882年(明治15年)5月14日生まれ。

生涯に全17,907首の歌を詠み、全17冊の歌集を発表しました。

各歌集を作品の年代順に一覧で示します。

歌集名 発行年
1 赤光 1913年10月 834首 1921年改選版760首
2 あらたま 1921年1月 746首
3 つゆじも 1946年8月 722首
4 遠遊 1947年8月 625首
5 遍歴 1948年4月 828首
6 ともしび 1950年1月 912首
7 たかはら 1950年6月 454首
8 連山 1950年11月 705首
9 石泉 1951年6月 1025首
10 白桃 1941年2月 1033首
11 暁紅 1940年6月 969首
12 寒雲 1940年3月 1115首
13 のぼり路 1943年11月 743首
14 1951年12月 863首
15 小園 1949年4月 843首
16 白き山 1949年8月 850首
17 つきかげ 1954年2月 没後に弟子が刊行

 

 

以下に各歌集の特徴と代表作品をあげます。

第一歌集『赤光』

1913年発行。代表作「死にたまふ母」を含む

初版と、改選版があり、斎藤茂吉自身は、改選版刊行後はそちらを優先するように求めたが、近年は初版での解説書も多い。

改選版は『あらたま』の発行後に手直しの上刊行された。

斎藤茂吉の処女歌集として、歌壇だけでなく、広く文学界に影響を与えた。

『赤光』斎藤茂吉短歌代表作一覧 現代語訳付き解説と鑑賞

 

第2歌集『あらたま』

『赤光』改選版に先んじて、手直しの上刊行。

長崎時代には作歌がふるわず、手直しに難渋。解説にある「あらたま編輯手記」に推敲前後の比較も掲載されている。

北原白秋を通じた梁塵秘抄の摂取が見られる。私生活では、妻輝子と結婚した。代表詠「祖母」。

 

『あらたま』斎藤茂吉短歌一覧 現代語訳付き解説と鑑賞」

 

第3歌集『つゆじも』

1946年の刊行で、これは第12歌集「寒雲」から第13歌集「のぼり路」よりも遅いことになる。

岡井隆によると、「つゆじも」の収録歌の多くは、40年・41年に作られたとのことで、作品の日付に関する限りは”一種の偽物”だったとの指摘がある。

 

斎藤茂吉歌集『つゆじも・遠遊・遍歴・ともしび』短歌一覧 現代語訳付き解説と鑑賞

 

第4歌集『遠遊』

3年間のドイツ滞在期の歌集。代表詠にドナウ川を詠んだものがある。

■「遠遊」代表作品

復活祭の差にうちたる銃(つつ)のおと谷谷(だに)わたるこだまとぞなる

黒貝のむきみの上にしたたれる檸檬の汁は古詩にか似たる

 

第5歌集『遍歴』

ミュンヘン滞在中の歌を収めた歌集。

「西欧文化との接触は歌境に新しい諧調と光彩をもたらす」(岩波書店)

■「遍歴」代表作品

黒林のなかに入りゆくドウナウはふかぶかとして波さへ立たず

大き河ドナウの遠きみなもとを尋(と)めつつぞ来て谷のゆふぐれ

 

第6歌集『ともしび』

日本帰国後の艱難の時期の歌集。

それ以前の歌集は、メモから再構成されたのに対し、病院の焼失という大事に始まる「ともしび」は実際の生活状況と並行して歌作が進められた。

岡井隆は旅行詠が多い特徴の他、「秀歌が多い」と指摘している。

 

第7歌集『たかはら』

中国,北海道,関西など盛んに旅に出た頃の歌集

■「たかはら」代表作品

ふりさけて峠を見ればうつせみは低きに拠りて山を越えにき

松かぜのおと聞くときはいにしへの聖ひじりのごとくわれは寂さびしむ

 

第8歌集『連山』

満州旅行の歌を収めた歌集。

■「連山」代表作品
見はるかす天の最中におのづから雲も起らずいやはてのくに

峨々ががとしてそびえし山のつらなりに小さき三角の山がこもれり

 

第9歌集『石泉』

日本帰国後の艱難の時期の歌集。「柿本人麿研究」と並行して進められた短歌作品。

■「石泉」代表作品
うつせみのはらから三人みたりここに会ひて涙のいづるごとき話す

ゆふぐれの薄明にも雪のまの土つちくろぐろし冴えかへりつつ

 

第10歌集『白桃』

妻輝子と別居に至る時期の歌集。

■「白桃」代表作品

ただひとつ惜しみて置きし白桃のゆたけきを吾は食ひをはりけり

人いとふ心となりて雪の峡流れて出づる水をむすびつ

弟と相むかひゐてものを言ふ互のこゑは父母のこゑ

 

 

第11歌集『暁紅』

永井ふさ子との交流があった時期の歌集。「白桃」と合わせて、茂吉短歌の中でも際立った高峰を形づくった2歌集とされる。

「自然観照の深さ,切実なひびきは,さらに奥行きを増した」(岩波書店)

■「暁紅」代表作品

北とほく真澄(ますみ)がありて冬のくもり遍からざる午後になりたり

さだかならぬ希望(のぞみ)に似たるおもひにて音の聞こゆるあけがたの雨

 

永井ふさ子と斎藤茂吉との恋愛 相聞の短歌と結婚できなかった理由

 

第12歌集『寒雲』

作者が次第に老境に入った時期の歌集。歌集の題名は、永井ふさ子との交流から生まれた。

その現実諦視の深い調べの中に,円熟した詩人の感覚が光る(岩波書店)

■「寒雲」代表作品

人麿がつひのいのちををはりたる鴨山をしもここと定めむ

この山に寂しくたてるわが歌碑よ月あかき夜よをわれはおもはむ

 

第13歌集『のぼり路』

鹿児島県から招かれて神代の遺跡を巡った「高千穂峰」の二百余首の作品を収録

■「のぼり路」代表作品

高千穂の山のいただきに息いきづくや大きかも寒きかも天あめの高山

モナ・リザの唇もしづかなる暗黒にあらむか戦はきびしくなりて

 

第14歌集『霜』

故郷山形に疎開、戦後の心持ちを故郷の風景に重ねて詠う

■「霜」代表作品
かぎりなき稲は稔りていつしかも天あめのうるほふ頃としなりぬ

あまのはら冷ゆらむときにおのづから柘榴ざくろは割れてそのくれなゐよ

・・・

第15歌集『小園』

故郷山形県の金瓶村に疎開した折の歌。沈潜した悲しみを詠う

■「小園」代表作品
くやしまむ言も絶えたり炉のなかに炎のあそぶ冬のゆふぐれ

沈黙のわれに見よとぞ百房の黒き葡萄に雨ふりそそぐ

 

第16歌集『白き山』

斎藤茂吉晩年の最高位にある歌集と言われる。山形県の大石田に滞在中の最上川詠を含む。

 

 

第17歌集『つきかげ』

斎藤茂吉没後に、弟子が編纂した最後の歌集。老境の静かな生活を詠う作品が多い。

■「つきかげ」代表作品

わが生はかくのごとけむおのがため納豆買ひて帰るゆふぐれ

老いづきてわが居る時に蝉のこゑわれの身ぬちを透りて行きぬ

以上、斎藤茂吉の歌集とその代表詠についてご紹介しました。







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