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斎藤茂吉 ゴーガン ミレー ゴッホの絵画を題材にした短歌

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斎藤茂吉の短歌には、絵画の影響がたいへんに大きいと言われます。

斎藤茂吉の絵画や美術と関わりの深い短歌をまとめます。

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斎藤茂吉と絵画

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斎藤茂吉は子どもの時には絵描きになろうかと考えたほど絵がうまく、短歌を始めたのも、正岡子規が絵を見て詠んだ歌に接したことがきっかけとなったようです。

斎藤茂吉の短歌が、絵画からのどのようなインスピレーションを得ていたか、どのような画家の影響を受けたかを調べたいと思います。

 

斎藤茂吉の絵画を影響とした短歌

絵画を影響としたと思われる短歌を画家別にして提示します。

仏画「地獄極楽図」

この連作は、明治38年の書簡に記されており、正岡子規の「竹の里歌」に感動して、自らも短歌を作り始めたというとおり、最初に作られた短歌といってもいい作品です。

浄玻璃(じやうはり)にあらはれにけり脇差(わきざし)を差して女(をんな)をいぢめるところ
飯(いひ)の中(なか)ゆとろとろと上(のぼ)る炎(ほのほ)見てほそき炎口(えんく)のおどろくところ
赤き池にひとりぼつちの真裸(まはだか)のをんな亡者(まうじや)の泣きゐるところ
白き華(はな)しろくかがやき赤き華あかき光を放ちゐるところ

 

ゴオガンの自画像の短歌

『赤光』の初期にはゴオガンを主題とする、よく知られる短歌があります。

ゴオガンの自画像みればみちのくに山蚕やまこ殺ししその日おもほゆ

ゴーギャンの短歌からの直截なインスピレーションを詠っているものです。

連想されるゴーギャンの絵画タイトル

「自画像 レ・ミゼラブル」ゴーガン作

 

ゴッホの影響のある短歌

斎藤茂吉の絵画に関するメモやスケッチで一番多いものは、ゴッホに関するものです。

文章のメモのみではなくて、自分の見た通りに、絵そのもののスケッチをするのが斎藤茂吉のやり方でした。

その際に、スケッチをしたのは、「向日葵」「赤いひなげしの畑」「オーヴェール付近の平野」「鳥の飛ぶ麦畑」と伝わっています。

ゴッホの”廻転光”

あかあかと日輪天てんにまはりしが猫やなぎこそひかりそめぬれ

くれなゐの獅子のあたまは天あめなるや廻転光くわいてんくわうにぬれゐたりけり

上の二首は、ゴッホの影響を受けた短歌。

斎藤茂吉自身が「ゴオホの絵などを見て其れに興奮して」と『堂馬漫語』に自ら記し、ゴッホの絵に見られる特殊な光を「廻転光」と造語で表しました。

ただし、これらの歌はそれに嫌気がさして、『赤光』から削除したことが「あらたま」の編集記に記されました。

ゴッホの糸杉

『あらたま』に残っているのは、「糸杉」をほうふつとさせる

かぜむかふ欅太樹の日てり葉の青きうづだちしまし見て居り

参考:
この歌のある「12 暗緑林」

さやぎつつ鴉のむれのかくろへる暗緑の森をわれは見て立つ
うれひつつひとり来りし野のはての暗緑林に近づく群鳥(むらどり)
かぜむかふ欅太樹の日てり葉の青きうづだちしまし見て居り
真日あかく傾きにけり一つ樹のもとに佇ずむ徒歩兵ひとり
風はやし橡の高樹のをさな葉のもろむきなびき鴉ちかづく
くもり日の昼も過ぎたるすかんぽの鴉のくれなゐにこころなげけり
おもおもとそらの曇れる昼すぎて岡のぼりつめ心しづけし
みちのくの我家の里ゆおくり来し蕨をひでてけふも食ひけり

 

連想されるゴッホの絵画タイトル

ゴッホの「糸杉」「星月夜」「鴉の群れ飛ぶ麦畑」

 

「ムスメの肖像」

うらさびしき女(をみな)にあひて手の甲の静脈まもる朝のひととき

ゴッホはピエール・ロチの小説「お菊さん」を詠んで日本の女性の肖像画「ムスメの肖像」を描きました。

ピエール・ロチの小説の扉絵の芸者の絵を模したものかもしれず、女性の手が細く美しく描かれています。

 

『あらたま』の「一本道」とゴッホ

『あらたま』の「一本道」の連作は芥川龍之介が、「ゴッホ」との連想を記しています。

あかあかと一本の道とほりたりたまきはる我が命なりけり

かがやけるひとすぢの道遥けくてかうかうと風は吹きゆきにけり

予想されるゴッホの絵画タイトル

ゴッホ 「夕暮れのポプラ並木」

 

ゴッホの家を訪ねた斎藤茂吉

ゴッホの展覧会では

ここに来てゴオホの物をあまた見たりいくたびかわが生よみがへる

の他、家他の史跡を訪ねて

ヴァン・ゴオホつひの命ををはりたる狭き家に来て昼の肉食(を)す

雨のふる岡のうへには同砲(はらから)の二つの墓がならびて悲し

医師ガツセの肖像も見つフランクフルトのものとこの二つとあはれ

脳病みてここに起臥せしし境界の彼をおもへば悲しむわれは

予想されるゴッホの絵画タイトル

ゴッホ 「夕暮れのポプラ並木」

 

向日葵の短歌『あらたま』

ゴッホと言えば「ひまわり」はもっとも有名な絵画の一つですが、斎藤茂吉は向日葵の画面の花12個全部に番号を振って、それらがどのような様子かをメモに記したと言います。

向日葵は諸伏しゐたりひた吹きに疾風ふき過ぎし方にむかひて
―『あらたま』

『あらたま』にあるひまわりの短歌は、むしろ、ゴッホのひまわりよりも、畑を描いた絵の方を思い浮かべなくもありません。

予想されるゴッホの絵画タイトル

ゴッホ 「向日葵」「太陽と種まく人」

そして、『あらたま』9「遊光」の短歌も、ゴッホの絵画の影響があると思われます。

参考:
ふくらめる陸稲(おかぼ)ばたけに人はゐずあめなるや日のひかり澄みつつ
空をかぎりまろくひろごれる青畑をいそぎてのぼる人ひとり見ゆ
ありがたや玉蜀黍(たうきび)の実のものものもみな紅毛をいただきにけり
な騒ぎそ此の郊外に真日落ちて山羊は土掘り臥しにけるかも
あかあかと南瓜ころがりゐたりけりむかうの道を農夫はかへる
ゆふづくと南瓜ばたけに漂へるあかき遊光に礙りあらずも
あかあかと土に埋まる大日(だいにち)のなかにひと見ゆ鍬をかつぎて
真日おつる陸稲ばたけの向うにもひとりさびしく農夫かがめり

・・・

ゴッホの囚人の絵

ゴッホの囚人の絵を思わせるのが、下の歌です。

大戸よりいろ一様の著物きてものぐるひの群外光にいづ

予想されるゴッホの絵画タイトル

ゴッホ 「監獄の中庭 ギュスタブ・ドレによる」

 

ミレーの短歌

『ともしび』には、ミレーに題材をとったと思われる短歌があります。

今日の日も夕ぐれざまとおもふとき首をたれて我は居りにき『ともしび』

予想されるミレーの絵画タイトル

ミレー「晩鐘」

 

セガンチニーの短歌

1924年チューリヒの展覧会で偶然見たというセガンチニーの印象を詠んだ短歌もあります。

アルプスの高原といへばきびしくもつつましく生きし画家に親しむ
セガンチニーの展覧会をゆくりなく見たる幸(さひはひ)いひ合へりけり
チユーリヒはセガンチニーにて心足りこれよりRigi(リギー)に旅たたむとす
牛の頸(くび)にさげたる鈴が日もすがら鳴りゐるアルプの青原(あをはら)を来も
かなたには雪原(ゆきはら)となりつづけるに巌(いはほ)のうへに羚羊(かもしか)ひとつ

後年『つきかげ』にも

セガンチニの境界の山くだりきて青野のうへに少女(をとめ)ひとりたつ

予想されるセガンチニーの絵画タイトル

「アルプスの白昼」他

 

レオナルド・ダ・ビンチモナ・リザの短歌

レオナルド・ダ・ビンチの短歌

レオナルドウにこの二日あまり集中しわれの眼の澄むをおぼゆる

モナ・リザの唇もしづかなる暗黒にあらむか戦はきびしくなりて

予想されるレオナルドの絵画タイトル

「モナ・リザ」

 




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