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ひんがしはあけぼのならむほそほそと口笛吹きて行く童子あり 斎藤茂吉『赤光』

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斎藤茂吉『赤光』から主要な代表歌の解説と観賞です。
このページは現代語訳付きの方です。

歌の意味と現代語訳


ひんがしはあけぼのならむほそほそと口笛吹きて行く童子あり

現代語訳


東の方は夜明けなのだろう。細い音で口笛を吹きながら行く子供がいる

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出典

『赤光』大正2年 5 口ぶえ

歌の語句

あけぼの・・・夜明け
ならむ・・・なり 断定の助動詞+らむ 推測の助動詞
童子・・・わらべ 子ども

表現技法

2句切れ
2句切れにして、3句に擬音を置くという構成の歌が多い。

解釈と鑑賞

芸妓と遊んで、朝になって帰ったのだが、どこかやりきれないその悲しみを払うようなすがすがしい情景を詠んだ。
牧歌的な寝覚め。作者が「一つの覚醒を暗示している」と言った一連の連続の歌。

単に「あけぼの」でいいところを「ひんがしはあけぼのならむ」という、この味わいのあるさわやかな言葉は、この作者の言語感覚の並々でないことを示している。
このように言葉に感情を持たせ得るのは、詩人としての資質によるが、一面は営々とした努力精進の結果でもあった。(「茂吉秀歌」佐藤佐太郎)

類歌

あかねさす朝明けゆゑにひなげしを積みし車に会ひたるならむ


なげかへばものみな暗しひんがしに出づる星さへあかからなくに

現代語訳


嘆き続けていれば辺りのものは皆暗い。東の空に上る星さえ明るく見えないくらいに

出典

『赤光』大正2年 6 おひろ

歌の語句

なげかふ・・・なげく+反復継続の助動詞》嘆き続ける
ひんがし・・・東
あかからなくに・・・初版では「赤からなくに」
      「赤い」と同時に、「明し」明るいの意味 
なくに・・・連語 ないことだなあ。
      文末に用いて、打消に詠嘆の意を込めて言い切る。

表現技法

2句切れ
…なくには万葉集の常套句を用いたもの

解釈と鑑賞

『赤光』で「死にたまふ母」と並ぶ代表作の連作「おひろ」の一首目。
交際のあった女性「おひろ」との別れを星に即して詠った。


「ものみな暗し」といって、さらに「あかからなくに」といったのは、やや即しすぎているようにも感じられるが、どちらも詠嘆の語気であり、この強調があって一首が切実になっている。
二句で切迫したように強く切れ、三句をおおどかに起こして、結句を「あかからなくに」と重く据えた声調に心情さながらのひびきがある。(「茂吉秀歌」佐藤佐太郎)

一連の歌から
とほくとほく行きたるならむ電燈を消せばぬばたまの夜も更けぬる
ほのぼのと目を細くして抱かれし子は去りしより幾夜か経たる
あさぼらけひとめ見しゆゑしばだたくくろきまつげをあはれみにけり
しんしんと雪ふりし夜にその指のあな冷たよと言ひて寄りしか
この心葬りはてんと秀の光る錐を畳に刺しにけるかも
ひんがしに星いづるとき汝が見なばその目ほのぼのとかなしくあれよ




-赤光

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