斎藤茂吉の解説書は、古いものから新しいものまでさまざまな著者によるものが出版されています。
斎藤茂吉の解説書で読んでおきたいものをご紹介します。
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斎藤茂吉の解説書
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斎藤茂吉の解説書で、おすすめの本とその内容をまとめます。
※斎藤茂吉の作品と生涯については
『茂吉秀歌』佐藤佐太郎著
斎藤茂吉の弟子である、佐藤佐太郎が記した解説書です。
斎藤茂吉の短歌から主要な作品を選び、一首ずつにコンパクトな解説を記したものです。
著者自身の感想にとどまらず、斎藤茂吉の各作品の、どこがどう優れているのかのポイントをつぶさに指摘しており、短歌の勉強にも役立ちます。
岩波文庫から上下巻2冊で出版されましたが、再販がありませんので、現在は古本のみでしか手に入りませんが、斎藤茂吉の解説書としては、最も優れたものです。
当ブログでは、佐藤佐太郎の解説の一部をご紹介しています。主要な歌については、こちらからもお読みになれます。
『茂吉秀歌』塚本邦雄著
佐藤佐太郎の著者と同じタイトルで、塚本邦雄も茂吉の解説を全4巻に記しています。
秀歌を選び、解説を記しているのは、佐太郎の『茂吉秀歌』と変わりませんが、選出には塚本の好みも反映しており、塚本独自の感想も記されているのが興味深い点です。
解説の内容は、ひじょうに詳細で、忌憚のない意見が記されている他、類歌や例証も豊富です。
また、文体が饒舌で、塚本の語りを聞いている感があり、解説を離れても楽しく読めます。
ハードカバーは再販なしですが、文庫本が出ています。
『異形の短歌』品田悦一著
斎藤茂吉の代表作の連作「死にたまふ母」の全首の解説があります。
音韻に関する、他にはない詳細な分析があり、斎藤茂吉の解説としてだけではなく、短歌学習者は、必ず目を通したい一冊です。
『あかあかと一本の道とほりたり―斎藤茂吉』品田悦一著
斎藤茂吉の伝記ですが、身辺にとどまらず、斎藤茂吉が国民的な歌人になるまでの社会的な背景が詳しく記されています。
また、斎藤茂吉の短歌の特徴を、「異化」や「シニフィアン」等のキーワードで切り取り、著者独自の視点で解析。
じっさい『赤光』には、日常の一齣が異様な生々しさで迫ってくる作がいくらでもあって(中略)この世界を見慣れぬ世界として再現して見せること、別の世界を創造したり、虚構したりするのではなく、「接触のしかた、経験のしかた」をずらして「新しい世界の創造」を果たすこと---のちに一般化する文芸批評の用語では、「異化(非日常化)」と呼ばれる事態がこれに該当するはずである。(シクロフスキー)
また、茂吉の短歌について、
茂吉が創作を通して相手どっていたのは、<世界があること>と<自分がいること>とが同時に開けてくるような次元なのだった。存在の根源的な不可解さと対峙していた、と言ってもよいだろう。 とにかく歌心が恐ろしく深いところから湧いたらしい。
斎藤茂吉論は他にもありますが、品田教授の場合は、文学総論ではなく、短歌そのものを徹底して詠み込み、具体的な分析の上で斎藤茂吉の短歌の特徴の本質に迫ります。
斎藤茂吉の好きな方には、必ず目を通していただきたい一冊です。
『斎藤茂吉―生きた足あと』 藤岡 武雄著
斎藤茂吉のエピソードを通して、生涯を追います。人間としての斎藤茂吉が伝わる読みやすい内容ですが、これまでの研究書にはない内容もあり、他の本では得られない新しい情報も含まれています。
また、著者は永井ふさ子氏とも面識があり、その歌集の出版も勧めた方で、永井氏のその後の様子も伝えています。