茂吉一首鑑賞 赤光

ゆふ日とほく金に光れば群童は眼つむりて斜面をころがりにけり 斎藤茂吉「赤光」

更新日:


斎藤茂吉「赤光」から主要な代表作の短歌の解説と観賞です。このページは現代語訳付きの方です。
「赤光」の歌一覧は、斎藤茂吉「赤光」短歌一覧 現代語訳付き解説と鑑賞にあります。
「茂吉秀歌」から佐藤佐太郎の語の注解と解釈も併記します。
他にも佐藤佐太郎の「茂吉三十鑑賞」に佐太郎の抽出した「赤光」の歌の詳しい解説と鑑賞がありますので、併せてご覧ください。

スポンサーリンク




歌の意味と現代語訳

ゆふ日とほく金に光れば群童は眼つむりて斜面をころがりにけり 

現代語訳

夕日が遠く金に光ると子供たちは目をつぶって斜面を転がったのだなあ

出典

「赤光」大正2年 8 みなづき嵐

歌の語句

群童 子供の群れの漢語
にけり・・・完了の助動詞「ぬ」+詠嘆の助動詞「けり」

表現技法

初句が字余りなので、助詞を省略して響きが長いのに対して、「眼つむりて斜面を」の9音、「転がりにけり」7音を一気に読み下すリズムが、「転がる」に通じるものがある。

「群童」の漢語が童謡的な甘さをかき消している。

「金 きん」の鋭利な響きがアクセントとなりその後の「群ぐん」につながるものとなっている。

解釈と鑑賞

金や赤の色調を主として、そこに近代絵画の影響や北原白秋、交流のあった木下杢太郎らの影響が指摘されている。

「金にひかれば」の確定条件句については、「偽二句切れ」(塚本)の通り、「ひかれば」と「ころがる」の間に通常の因果関係はない。

牧歌的な子供の遊びを詠んだものなのだが、緊張度が高くどこか不可思議な感じがある。品田は、確定条件句については、やや皮肉を込めて、「彼らはわざわざ夕刻の到来を待って、一斉にこの行動を開始した」と表た上、「群童の奇怪な儀式」と呼んでもいるが、その原因は「光れば・・・けり」の万葉調と漢語「金」「群童」「斜面」と口語「転がる」の不調和がもたらすと述べている。

なお、「ころがる」の古語は「まろぶ」。

 

この歌の前の歌。

ひんがしはあけぼのならむほそほそと口笛吹きて行く童子あり

現代語訳

東の方は夜明けなのだろう。細い音で口笛を吹きながら行く子供がいる

出典

「赤光」大正2年 5 口ぶえ

歌の語句

あけぼの・・・夜明け
ならむ・・・なり 断定の助動詞+らむ 推測の助動詞
童子・・・わらべ 子ども

表現技法

2句切れ
2句切れにして、3句に擬音を置くという構成の歌が多い。

解釈と鑑賞

芸妓と遊んで、朝になって帰ったのだが、どこかやりきれないその悲しみを払うようなすがすがしい情景を詠んだ。
牧歌的な寝覚め。作者が「一つの覚醒を暗示している」と言った一連の連続の歌。

佐藤佐太郎の解説

単に「あけぼの」でいいところを「ひんがしはあけぼのならむ」という、この味わいのあるさわやかな言葉は、この作者の言語感覚の並々でないことを示している。
このように言葉に感情を持たせ得るのは、詩人としての資質によるが、一面は営々とした努力精進の結果でもあった。(「茂吉秀歌」佐藤佐太郎)

類歌

あかねさす朝明けゆゑにひなげしを積みし車に会ひたるならむ

 







-茂吉一首鑑賞, 赤光

Copyright© 短歌のこと , 2018 All Rights Reserved Powered by STINGER.