「ゆふ日とほく金に光れば群童は眼つむりて斜面をころがりにけり」
斎藤茂吉『赤光』から主要な代表作の短歌の解説と観賞です。このページは現代語訳付きの方です。
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ゆふ日とほく金に光れば群童は眼つむりて斜面をころがりにけり
読み ゆうひとおく きんにひかれば ぐんどうは めつむりてしゃめんを ころがりにけり
歌の意味と現代語訳
この歌のポイントです。
現代語訳
夕日が遠く金に光ると子供たちは目をつぶって斜面を転がったのだなあ
出典
『赤光』大正2年 8 みなづき嵐
歌の語句
群童 子供の群れの漢語
にけり・・・完了の助動詞「ぬ」+詠嘆の助動詞「けり」
表現技法
初句が字余りなので、助詞を省略して響きが長いのに対して、「眼つむりて斜面を」の9音、「転がりにけり」7音を一気に読み下すリズムが、「転がる」に通じるものがある。
「群童」の漢語が童謡的な甘さをかき消している。
「金 きん」の鋭利な響きがアクセントとなりその後の「群 ぐん」につながるものとなっている。
解釈と鑑賞
金や赤の色調を主として、そこに近代絵画の影響や北原白秋、交流のあった木下杢太郎らの影響が指摘されている。
「金にひかれば」の確定条件句については、「偽二句切れ」(塚本)の通り、「ひかれば」と「ころがる」の間に通常の因果関係はない。
牧歌的な子供の遊びを詠んだものなのだが、緊張度が高くどこか不可思議な感じがある。
品田悦一は、確定条件句については、やや皮肉を込めて、「彼らはわざわざ夕刻の到来を待って、一斉にこの行動を開始した」と表した上、「群童の奇怪な儀式」と呼んでもいる。
その原因は「光れば・・・けり」の万葉調と漢語「金」「群童」「斜面」と口語「転がる」の不調和がもたらすと述べている。
なお、「ころがる」の古語は「まろぶ」。