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ものの行とどまらめやも山峡の杉のたいぼくの寒さのひびき 「あらたま」の短歌代表作品 斎藤茂吉

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斎藤茂吉「あらたま」から主要な代表作の短歌の解説と観賞です。
このページは現代語訳付きの方で、語の注解と「茂吉秀歌」から佐藤佐太郎の解釈も併記します。
他にも佐藤佐太郎の「茂吉三十鑑賞」に佐太郎の抽出した「あらたま」の歌の詳しい解説と鑑賞がありますので、併せてご覧ください。
「あらたま」全作品の筆写は斎藤茂吉「あらたま」短歌全作品にあります。

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ものの行(ゆき)とどまらめやも山峡(やまかひ)の杉のたいぼくの寒さのひびき


歌の意味と現代語訳

世のものの変わりゆくはとどめられはしない。山峡の杉の大木のつたえる冬こがらしの響きよ



出典
「あらたま」大正4年 13 冬の山「祖母」其の一


歌の語句

ものの行・・・「万物流転」を大和言葉流にくだいたとの作者の自解がある。
万物流転は「この世にあるあらゆるものは、絶え間なく変化してやまない」という意味。この一連では、祖母の死をも指すことになるが、むしろ一つことに限定しない方がよい。

めやも・・・「め」は推量・意志の助動詞「む」の已然形
「や」は反語の係助詞「や」 「も」は詠嘆の係助詞「も」
推量または意志を反語的に言い表し、それに詠嘆の意が加わったもの。
「…だろうか、いやそんなことはないなあ」の意味となる。

たいぼく ひびき・・・大木 響き はそれぞれ漢字を当てていない



表現技法

反語的表現の2句切れ
「の」の反復の後の体言止め 

鑑賞と解釈

祖母「守谷のぶ」(戸籍名「ひで」)が大正4年11月逝去。郷里山形に帰省した時の作。「祖母」の三部作48首は「あらたま」中の大作であり、「赤光」の「死にたまふ母」とほぼ同じ位置にあるものとされる。
なお、のぶは祖母とはいっても、祖父が、妻の弟である茂吉の父を養子に迎えたため「祖母」とはなったが、実際は父の姉の伯母であって、茂吉は幼い時期、この伯母に育てられたというくらい、近しい間柄であった。

一連は「死にたまふ母」よりもいっそう観照を深くし、厳粛な自然と人の命の終焉を重ねて詠い、深い感動を誘うものとなっている。

上の歌の「ものの行」は祖母の命の終焉を差すが、厳しい寒さにとどろくような杉を重ねて、一人の死を超えて俯瞰した表現の秀歌である。

「作歌四十年」より作者の解説

万物流転を『ものの行』と大和言葉流にくだいたのはその当時なかなか苦心したところであった。また、出来て見ると、「ものの行」の方が、万物流転よりも却っていいようにおもわれる。(中略)「ものの行」云々を上句に置き、「杉のたいぼくの寒さのひびき」を下句に置き、「ひびき」という語で止めたのも、私としては新表現の一つであった。(「作歌四十年」斎藤茂吉)

佐太郎の評

この歌は、初頭のこがらしが吹きすさぶなかに山峡の杉の大木が寒いひびきを伝えているところで、前川を底辺として傾斜している金瓶の部落を「山峡」といい、隣家の宝泉寺の杉、道をへだてた郷社の杉を「杉のたいぼく」といったのであろう。そのひびきを聞いて、ためらいのない厳しさだと感じ、やがて、万物は無限に流転してやまないと感じたのである。だから三句以下が実質で、一二区は下句の抱擁するものを主観的に表白している。
突然のように主観を投げ出して「とどまらめやも」と強く上句を切って、さて支度を複合した名詞のように、実語(名詞)を「の」で連ねて、「ひびき」と名刺で止めた一首の形態が森厳重厚である。  「茂吉秀歌」佐藤佐太郎

一連の歌

13 冬の山「祖母」其の一
おのづからあらはれ迫る冬山にしぐれの雨の降りにけるかも
ものの行(ゆき)とどまらめやも山峡(やまかひ)の杉のたいぼくの寒さのひびき
まなかひにあかはだかなる冬のしぐれに濡れてちかづく吾を
いのちをはりて眼をとぢし祖母(おほはは)の足にかすかなる皹のさびしさ
命たえし祖母(おほば)の頭(かうべ)剃りたまふ父を囲みしうからの目のなみだ
蝋の火のひかりに赤しおほははの棺の上の太刀鞘(ざや)のいろ
朝あけて父のかたはらに食す飯(いひ)ゆ立つ白気(しらいき)も寂しみて食す
さむざむと暁に起き麦飯(むぎいひ)をおしいただきて食ひにけり
ゐろりべにうれへとどまらぬ我がまなこ煙はかかるその渦けむり
あつぶすま堅きをかつぎねむる夜のしばしば覚めてかなしき霜夜は
日の入のあわただしもよ洋燈(らんぷ)つりて心がなしく納豆を食む
土のうへに霜いたく降り露なる玉菜はじけて人音もなし
おほははのつひの葬り火田の畔(くろ)にいとども鳴かぬ霜夜はふり火
終列車のぼりをはりて葬り火をまもる現身のしはぶきのおと
愁へつつ祖母はふる火の渦のしづまり行きて暁ちかからむ
冬の日のかたむき早く櫟原こがらしのなかを鴉くだれり
ここに来てこころいたいたしまなかひに迫れる山に雪つもる見ゆ
いただきは雪かもみだる真日くれてはざまの村に人はねむりぬ
山がはのたぎちの響みとどまらぬわぎへの里に父老いにけり

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