つゆじも 茂吉一首鑑賞

ゆふぐれの泰山木の白花はわれのなげきをおほふがごとし 斎藤茂吉『つゆじも』短歌代表作

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斎藤茂吉『つゆじも』から主要な代表作の短歌の解説と観賞です。
このページは現代語訳付きの方です。語の注解と「茂吉秀歌」から佐藤佐太郎の解釈も併記します。

他にも佐藤佐太郎の「茂吉三十鑑賞」に佐太郎の抽出した『つゆじも』の歌の詳しい解説と鑑賞がありますので、併せてご覧ください。

『つゆじも』全作品のテキスト筆写は斎藤茂吉「つゆじも」短歌全作品にあります。

ゆふぐれの泰山木の白花はわれのなげきをおほふがごとし

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ゆふぐれの泰山木の白花はわれのなげきをおほふがごとし

歌の意味と現代語訳
夕暮れ時の泰山木(たいざんぼく)の白い花は、私の嘆きを覆うようだ

出典
「つゆじも」大正9年 漫吟

歌の語句
泰山木…たいさんぼく。歌の中での読みは「タイザンボク」。
モクレン科の常緑高木。
6月から7月に、純白で芳香のある花が咲くが、日本の樹木で最も大きな花と言われる。

白花…読みは「しろはな」
ごとし…直喩「ようだ」

表現技法
句切れなし
「白花は」には格助詞は「の」ではなくて「は」を用いている。

鑑賞と解釈

長崎に住んでいた作者は、この時、重篤ではないが6月2日に喀血を起こし、25日に入院となった。
長崎の生活は下宿の一人住まいでたいへんだったようだ。

病中の心細い心境で見る、タイサンボクの花が、夕方暗み始めた景色の中に見えて、自分の気持ちを覆い隠してしまうほど大きくすがすがしいというもの。

もちろん、一首の主題は花に隠れた「なげき」にある。

斎藤茂吉の自解

病院の庭に泰山木があって白い豊かな花が咲いている。それを見ておるとしばらく病気の悲哀を忘れることができる。「おほふがごとし」であった。(『作歌四十年』斎藤茂吉)

佐藤佐太郎の評

泰山木はもくれん科の常緑喬木で、葉は濃緑色で光沢のある大形、花は白色で芳香の強い大輪花である。その白い豊かな花が、夕闇の中にあざやかに浮ぶように見えている。

それを、「われのなげきをおほふ」といったのは、いくばくかのの感傷と平安とをたたえた表現である。「茂吉秀歌」佐藤佐太郎

一連の歌

朝な朝な正信偈(しやうしんげ)よむ稚児(をさなご)ら親(おや)あらなくにこゑ楽しかり
対岸(たいがん)の造船所(ぞうせんじよ)より聞こえくる鉄(てつ)の響(ひびき)は遠(とほ)あらしのごとし
外(と)のもにて魚(うを)が跳ねたり時のまの魚(うを)跳ねし音寂(さび)しかりけれ
藤浪(ふぢなみ)の花は長しと君はいふ夜(よる)の色(いろ)いよよ深くなりつつ
わが心あらしの和(な)ぎたらむがごとし寝所(ふしど)に居(を)りて水飲みにけり
くらやみに向ひてわれは目を開きぬ限(かぎり)もあらぬものの寂(しづ)けさ
ゆふぐれの泰山木(たいさんぼく)の白花(しらはな)はわれのなげきをおほふがごとし
年わかき内科医君(きみ)は日ごと来てわが静脈(じやうみやく)に薬(くすり)入れゆく

 

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