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朝な朝な味噌汁のこと怒るのも遠世ながらの罪のつながり 斎藤茂吉

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朝な朝な味噌汁のこと怒るのも遠世ながらの罪のつながり

斎藤茂吉の味噌汁の短歌、晩年の作品を収めた最後の歌集『つきかげ』から主要な代表作の短歌の解説と観賞です。

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斎藤茂吉の記事案内

斎藤茂吉の歌集『つきかげ』から主要な代表作の短歌の解説と観賞です。

斎藤茂吉がどんな歌人かは、斎藤茂吉の作品と生涯 特徴や作風「写生と実相観入」 をご覧ください。

 

朝な朝な味噌汁のこと怒るのも遠世ながらの罪のつながり

読み:あさなさな みそしるのこと おこるのも とおよながらの つみのつながり

歌の意味と現代語訳

毎朝のように味噌汁のことで腹を立てるのも、遠い世そのままの罪につながるものだろうか

歌集 出典

斎藤茂吉『つきかげ』

歌の語句

・朝な朝な…[副]毎朝。朝ごとに。あさなさな

・遠世…遠い世 他に「あの世」

・ながら…ある状態のまま 同じ状態にある意を表す

修辞・表現技法

  • 句切れなし
  • 体言止め

 

鑑賞と解釈

最終の歌集『つきかげ』より。

味噌汁好きだった斎藤茂吉

斎藤茂吉は味噌汁がたいそう好みであり、単に好きというよりも、それ以上の表現の短歌も同じ歌集『つきかげ』に見られる。

味噌汁は尊かりけりうつせみのこの世の限り飲まむと思へば

それ以前の歌集『小園』より

ただひとつ楽しみとする朝々の味噌汁にがくなりてわが臥(ふ)す

体調の変化を味噌汁の味に敏感に感じている様子がわかる。

斎藤家のエピソード

『つきかげ』の頃の晩年は、長男夫婦と同居しており、wikipediaには北杜夫の『晩年・斎藤茂吉』の記述を元にした下のような記述がある。

味噌汁の具にも口うるさく注文し、家人からネギもあるので入れるかと聞かれた時は「うーむ。」としばらく熟考するほど拘った。

この時の「家人」、会話の相手は、長男斎藤茂太の妻の美智子であって、斎藤家では嫁が、今日のみそ汁の具の相談を毎日のようにしていたようだ。

最初の歌の「怒るのも」の内容は判然としないが、好みではない具が味噌汁に入っていて機嫌を悪くすることもあったのかもしれない。

強羅山荘に滞在しているときは、自炊も行ったため、味噌汁を自分で作った歌もある。

山なかに一夜(ひとよ)明けつつ味噌煮ると泉(いづみ)のみづはわれ汲みて来(こ)む

味噌しるのなかに卵を煮て食ふは幾年(いくとせ)ぶりに食ふにやあらむ

 

この山荘には、恋人であった永井ふさ子が立ち寄った際に、偶然茂吉に再会。

食料が乏しい様子を見て、海草などを再度届けたという話もあるが、あるいは、茂吉の味噌汁の好みに合わせた贈り物であったのかもしれない。

永井ふさ子と会ったのは、それが最後となったと伝わってもいる。

斎藤茂吉の他の味噌汁の短歌

歌集『ともしび』より他のみそ汁の短歌。

しづかなる眠(ねむり)よりさめ三人(みたり)くふ朝がれひには味噌汁は無し

味噌汁に笹竹の子を入れたるをあな珍(めづ)らあな有難(ありがた)と云ひつつ居たり

あかつきに小芋(こいも)をいれて煮る汁の府中の味噌は君がたまもの

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