蕗の薹の苞の青きがそよぐときあまつ光を吸はむとぞする 斎藤茂吉
歌集『のぼり道』他より斎藤茂吉の蕗の薹を詠んだ短歌を解説、鑑賞します。
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斎藤茂吉の短歌から主要な代表作の短歌の解説と観賞です。
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その作品については
斎藤茂吉の作品と生涯 特徴や作風「写生と実相観入」
をご覧ください。
蕗の薹の苞の青きがそよぐときあまつ光を吸はむとぞする
読み:ふきのとうの つとのあおきが そよぐとき あまつひかりを すわんとぞする
作者と出典
斎藤茂吉『のぼり道』
歌の意味
私が眠るこの家の近くに杉の林に、梟が鳴き始めた。春が来たのだろうか
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句切れと表現技法
- 句切れなし
- 係り結び「ぞ・・・する」
鑑賞と解釈
昭和15年作、「蕗の薹8首」の中の一首。
鉢植えにして部屋に置いてある蕗の薹を詠んだもの。
東北地方の農家出身の斎藤茂吉にとって、蕗の薹はなじみの深い野草の一つであったと思われる。
盆栽のようにして部屋に置いて楽しんだのだろう蕗の薹を窓辺に置いておくと、その葉が風に揺らぐときがある。
それを見て、「光を吸おうする」と蕗の薹を擬人化して詠んでいる。
佐藤佐太郎の評
以下は佐藤佐太郎のこの歌の評と解説。
ありなしの風が部屋に通って、蕗の薹の苞の葉のようなものがそよぐのだろう、歌は、蕗の薹が石的に、日光に喜んで反応すrに陽に着けとっている。これも物を見る一つで、ゆとりのある柔軟な観入と表現とは、おいおい老境に向かおうとする作者を感じさせる。―「茂吉秀歌」より
斎藤茂吉の蕗の薹の短歌
斎藤茂吉の蕗の薹の歌は他にも
日あたれば根岸の里の川べりの青蕗のたう揺りたつらむか『赤光』
来て見れば 雪消の川べのしろがねの柳ふふめり蕗の薹も咲けり『赤光』
蕗のとういまやふふまむ蓮華寺(れんげじ)の窿応和尚を訪ひがてぬかも 『ともしび』
蕗の薹ひらく息づき見つつをり消のこる雪にほとほと触れて『白き山』
みずからがもて来りたる蕗の薹あまつ光にむかひて震ふ『白き山』
蕗の薹味噌汁に入れて食はむとす春のはじまりとわが言ひながら『つきかげ』