斎藤茂吉『赤光』から主要な代表歌の解説と観賞です。
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けだものは食(たべ)もの恋ひて啼き居たり何(なに)といふやさしさぞこれは
読み:けだものは たべものこいて なきいたり なにというやさしさぞこれは
現代語訳
けものたちは食べ物を欲しいがために鳴いている。なんというやさしさなのだろう、これは。
出典
『赤光』大正元年 14 冬来
歌の語句
啼き居たり・・・鳴いていた
ぞ・・・強意を表す終助詞 強く指示して断定する働き
表現技法
3句切れ 結句は倒置
解釈と鑑賞
狂人の自殺という悲しみの後にやってきた動物園で、動物の無心な姿に心を慰めようとした。
死に立ち会った後に見る、けものの生の新鮮さ、ただ、食べ物が欲しいそれだけのために鳴く動物の偽りのない姿を「やさしさ」と取る。
作者は食物に執心が深かったとも言われるが、他にも歌の中で自身を動物に置き換えたものも多い。
佐藤佐太郎の解説
動物園に来ると虎とかライオンとかいう獣類が啼いている。それは「食もの恋ひて」啼いているのだと感じ、空腹になれば本能のままにこのように啼くというのは、何と言う率直な愛らしさであろうというのである。
「やさしさぞこれは」と、主観をそのまま端的に強くいったところに人間的な悲哀も動物に寄せる同情もあるが、そういうものをこめて、さしあたり端的にいったのがこの歌の切実な点である。「茂吉秀歌」佐藤佐太郎
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