斎藤茂吉の代表作である処女歌集『赤光』には、初版と改選版があります。
初版と改選版では、改定が行われ、収録された短歌に違いがあります。
この記事では、初版と改選版の歌の違いを一覧でまとめます。
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『赤光』初版と改選版
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斎藤茂吉の代表作である処女歌集『赤光』には、初版と改選版があります。
初版は三度版を重ねましたが、斎藤茂吉は、旧作を不満としながら、最後の版を発行、その後、五版の発行の際に改作を行いました。
もっとも大きな改作は歌の順番
行われた、最も大きな改定は、掲載された歌の順番です。
初版は、最初に大正二年作の「悲報来」が収録され、それから、年代をさかのぼって、それまでの作品が年代をさかのぼる順番で掲載されました。
改選版では、最初が明治38年の作品で、時間順の掲載に改められました。
「死にたまふ母」の初版と改選版
その際「死にたまふ母」においても改作が施されました。
以下に、異同の逢ったものを一覧にまとめ、改作のあった部分を対照して掲載します。
先に、教科書に掲載されて、引用の多い「死にたまふ母」の掲載歌、その後に、『赤光』全体の移動を記します。
「死にたまふ母」初版と改選版
「死にたまふ母」において、改作が行われた作品と、その箇所は以下の通りです。
改選版、初版の順にあげ、(初)は「初版」を指します。
「死にたまふ母 其の一」
みちのくの母のいのちを一目(ひとめ)見ん一目みんとぞただにいそげる
(初)みちのくの母のいのちを一目(ひとめ)見ん一目みんとぞいそぐなりけれ
改定された点:助動詞部分
うちひさす都の夜(よる)にともる灯(ひ)のあかきを見つつこころ落ちゐず
(初)うちひさす都の夜(よる)にともる灯(ひ)のあかかりければいそぐなりけれ
改定された点:下句全部の改定
「死にたまふ母 其の二」の改訂された短歌
改定なし
「死にたまふ母 其の三」の改訂された短歌
火を守りてさ夜更け塗れば弟は現身のうたかなしく歌ふ
(初)火を守りてさ夜更け塗れば弟は現身のうた歌ふかなしく
改定された点:語順の倒置とその順番
「死にたまふ母 其の四」の改訂された短歌
改定なし
『赤光』初版と改選版
『赤光』全体において、改作が行われた作品と、その箇所は以下の通りです。
にんげんは牛馬(うしうま)となり岩負ひて牛頭馬頭(ごづめづ)どもの追ひ行くところ
(初)にんげんは馬牛(うまうし)となり岩負ひて牛頭馬頭(ごづめづ)どもの追ひ行くところ
改定された点:言葉の語順
つかれより美(うつく)し夢(ゆめ)に入る如き思ひぞ吾がする蟋蟀のこゑ
(初)つかれより美(うつく)し夢(いめ)に入る如き思ひぞ吾がする蟋蟀のこゑ
改定された点:ふりがなの違い。「いめ」は古語。
気ちがひの面(おもて)まもりてたまさかは田螺も食べてよるに寝(い)ねたる
(初)気ちがひの面(おもて)まもりてたまさかは田螺も食べてよるいねにけり
改定された点:助動詞部分
天(あま)さかる鄙(ひな)の山路にけだものの足跡(あしあと)を見ればこころよろしき
(初)天(あま)さかる鄙(ひな)の山路にけだものの足跡(ああと)を見ればこころよろしき
改定された点:ふりがなの違い。「あ」は上代語
水のべの花(はな)の小花(こばな)の散りどころ盲目(めしひ)になりて抱(いだ)かれて呉れよ
(初)水のべの花(はな)の小花(こはな)の散りどころ盲目(めしひ)になりて抱(いだ)かれて呉れよ
改定された点:ふりがなの違い。
現在判明している改定された部分は以上です。