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ツェッペリン伯号が飛んだ日 斎藤茂吉の飛行船の歌【日めくり短歌】

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8月19日は、ドイツの飛行船ツェッペリン伯号が、日本に立ち寄った日です。

斎藤茂吉の歌集『赤光』に、飛行船の短歌を詠んだものがあります。

きょうの日めくり短歌は、斎藤茂吉の飛行船の短歌をご紹介します。

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まぼしげに空に見入りし女あり黄色(わうしよく)のふね天馳せゆけば

作者:斎藤茂吉 『赤光』きさらぎの日

一首の意味は、

まぶしげに空を見上げる女がいる。黄色の船が空を飛んでいくので

 

ツェッペリン伯号の日

8月19日は1929(昭和4)年、ドイツの飛行船ツェッペリン伯号が世界一周の途中日本に立ち寄った日です。

東京上空に姿を現した後、茨城の霞ケ浦飛行場を数日かけて移動し、当時30万人が空飛ぶ船に見入ったというものです。

 

きさらざの天(あめ)のひかりに飛行船ニコライでらの上を走れり

それに先んじて、大正2年2月、斎藤茂吉が飛行船の短歌を詠んでいます。

だいぶ前なので、ツェッペリンではないはずなので調べてみたら、パルセバール飛行船という船であったようです。

斎藤茂吉の飛行船の短歌

黄色(わうしよく)の魚のかたちし飛行船ニコライでらのうへをゆきしか

この歌を見ると、形状はツェッペリン号にも似たようなもので、色は黄色。

歌の「ニコライ寺」は、お茶の水のニコライ堂のことです。

斎藤茂吉は『赤光』にこの寺をよく詠んでいますが、その辺りが良く歩くあたりであって、たまたまその日は、飛行船を目撃したようです。

 

もろともに天(てん)を見上げし耶蘇士官あかき下衣(ちょつき)を着たりけるかも

茂吉ばかりか、空飛ぶ船は街を行く人々みなの注目を集めます。

足を止めて空を見上げた人の中には、外国人兵士もおり、その服装の「赤」に茂吉は目を留めています。

そして、一連の最後は、

二月ぞら黄いろき船が飛びたればしみじみとをんなに口触(くちふる)るかなや

「空を黄色の船が飛ぶ日、女に接吻をした」という意味なのですが、これはどういう意味なのか。

塚本邦雄は、「その時の体験をありのままに写生した物なら、常世の青年も三舎を避ける大胆不敵な快挙であろう」と言っているのですが、塚本は「夢幻」と「虚構」も示唆、「興味津々の一連である」と結んでいます。

塚本は、話を面白くするために、黄色の船を見上げた隣の女性に、共に船を見上げる連帯と興奮のあまり接吻をしたように話を仕立てています。

個人的に思うには、当時交際のあった「おひろ」と別離を余儀なくされた斎藤茂吉は、今でいういわゆる「夜の街」にも出入りしており、事実とすれば、おそらくはそういう関係の女性でしょう。

なお、この歌は改選版では下句では「女を思ふ」と改作されていますが、あるいは寝物語に「きょうは、黄色の船を見てきた」と話したのであったのかもしれず、それが「しみじみ」の所以かもしれないと思います。

 

きょうの日めくり短歌は、ツェッペリン伯号にちなむ、斎藤茂吉の飛行船の短歌をご紹介しました。

それではまた明日!

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