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ふるさとのわぎへの里にかへり来て白ふぢの花ひでて食ひけり 「死にたまふ母」斎藤茂吉『赤光』 

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ふるさとのわぎへの里にかへり来て白ふぢの花ひでて食ひけり

斎藤茂吉の歌集『赤光』「死にたまふ母」から「其の4」の短歌に現代語訳付き解説と観賞を記します。

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斎藤茂吉の記事案内

『赤光』一覧は 斎藤茂吉『赤光』短歌一覧 現代語訳付き解説と鑑賞 にあります。

「死にたまふ母」の全部の短歌は別ページ「死にたまふ母」全59首の方にあります。

※斎藤茂吉の生涯と代表作短歌は下の記事に時間順に配列しています。

 

ふるさとのわぎへの里にかへり来て白ふぢの花ひでて食ひけり

現代語での読み:ふるさとの わぎえのさとに かえりきて しろふじのはな ひでてくいけり

作者と出典

斎藤茂吉『赤光』「死にたまふ母」 其の4 6首目の歌

現代語訳

故郷のわが実家のある村に帰ってきて 白藤の花の若い芽を茹でて食べたのであるよ

歌の語句

・ふるさとの…初稿では「みちのくの」であったとされる

・わぎえ…我が家のこと 作者の実家は山形県

・白藤…白い藤 若い花芽は食べることができる

・ひでて…漢字は「漬でて」。熱湯につけて火を通す調理法。茹でるとほぼ同じ。

句切れと表現技法

・句切れなし




解釈と鑑賞

歌集『赤光』「死にたまふ母」の其の4 5首目の歌。

作者茂吉は母の火葬の後、温泉の旅館に滞在して帰京した。

その滞在中の様子を詠んだ歌が、「死にたまふ母」の其の4の一連となる。

中村憲吉宛書簡では初句は「みちのくの」だったとされる。

白藤の花

藤の花の花芽は若いうちになら食用にできるらしい。

母の葬儀は5月、東北地方の遅い春を伝えるものとして、白藤の花芽が詠まれている。

「ひでて」の調理法

「ひでて」の基本形は、「漬づ」。

意味は「ひたす。水につける。ぬらす」のことで、この時の調理法を、塚本邦雄は「熱湯につけた」としている。

いわゆる「おひたし」のような調理法、または供し方であったとも思われる。

この一連には、ほかの食物としてジュンサイやタケノコも詠み込まれている。

いずれも素朴な山野草で、故郷の風土を伝える物だろう。

なお、茂吉が止まったのは、親類筋のわかまつや旅館であったと思われる。

一連の歌

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