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精神科医斎藤茂吉と不眠症 芥川龍之介に睡眠薬を処方

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斎藤茂吉は精神科医で、芥川龍之介を含む不眠症の患者の診察を行いましたが、自らも睡眠薬を服用していたようです。

斉藤茂吉と眠りの短歌をまとめます。

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斎藤茂吉は不眠で睡眠薬を服用

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斎藤茂吉は精神科医で、不眠症の患者も診察したのは勿論ですが、自分でも睡眠薬を常用していたようです。

他に、不眠に悩む芥川龍之介の診察を行い、睡眠薬を処方していたことも伝わっています。

睡眠薬の歌は『赤光』にある下の歌が最初の物です。

やすらなる眠(ねむり)もがもと此の日ごろ眠(ねむり)ぐすりに親しみにけり

出典:『赤光』おくに

解説

「もがも」は「…があったらよい」の意味で、眠れなかった作者茂吉が睡眠薬の服用を始めたことがこの歌でわかります。

タイトルの「おくに」は斎藤茂吉の女中でしたが、腸チフスで死亡。

それを悲しんだ茂吉が一時的に眠れなくなっていたことが、一連の作品からわかります。

「おくに」は斎藤茂吉の恋愛の相手ではありませんでしたが、まだてる子と結婚する前のことで、それだけ茂吉が孤独だったとも言えます。

・・・

卓の下に蚊遣の香を焚きながら人ねむらせむ処方書きたり

読みは「たくのしたに かやりのこうを たきながら ひとねむらせむ しょほうかきたり」。

歌集『あらたま』より。

上の作品はある日の診察風景ですが、「睡眠薬を処方した」ことを「ひとねむらせむ」と言っています。

「蚊遣りの香」とは、蚊取り線香のことですが、これと「ねむらせむ」とが組み合わせられると、呪術のような不思議な雰囲気がかもしだされます。

 

 

夜ふけてねむり死なむとせし君の心はつひに氷のごとし

芥川龍之介の忌日、河童忌の短歌。

芥川龍之介は、斎藤茂吉に不眠を含めた精神的不調を相談。

斎藤茂吉は、芥川に睡眠薬を処方していましたが、芥川がそれらの薬で自殺したという報を受け、日記に「驚愕倒レンバカリニナリタレドモ」と記した通り、大きな衝撃を受けます。

「ねむり死なむとせし」は、斎藤茂吉自身も自註で述べる通り、睡眠薬自殺をくだいていう言い方です。

眠りについては、職業的にも関心が深かったのはもちろんですが、一方で、茂吉の服用していた睡眠薬の量は患者が驚くほどだったというエピソードも残されています。

それだけに、芥川がそれで自殺するかもしれないということは、思ってもみなかったことだったのです。

 

夜もすがらたまゆらも眠りがたしとて吾にむかへる労働人(はたらきびと)ひとり

歌集『ともしび』の短歌。

「たまゆらも」は「わずかなあいだすらも」の意味です。

「労働人(はたらきびと)」はいわゆる労働者を、大和言葉にしたものですが、斎藤茂吉のほとんど造語と言っていいと思います。

この「労働人」は、労働者といっても、都市労働者のことで、近代日本に精神的な疲れから、不眠の症状が現れる社会になったということが主題です。

それにしても、上句は「不眠」という状態が、美しく表されています。

終りに

精神科医である斎藤茂吉は、「不眠」という症状に職業的に接する機会があり、常人とはまた違った見方を持っていたとも思われます。

それゆえに、眠りにや夢については関心が深かったため、上のような短歌が詠まれたのです。




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