蕗の葉に丁寧にあつめし骨くづもみな骨瓶(こつがめ)に入れしまひけり
斎藤茂吉の歌集『赤光』「死にたまふ母」から其の3の短歌に現代語訳付き解説と観賞を記します。
スポンサーリンク
斎藤茂吉の記事案内
『赤光』一覧は 斎藤茂吉『赤光』短歌一覧 現代語訳付き解説と鑑賞 にあります。
「死にたまふ母」の全部の短歌は別ページ「死にたまふ母」全59首の方にあります。
※斎藤茂吉の生涯と代表作短歌は下の記事に時間順に配列しています。
蕗の葉に丁寧にあつめし骨くづもみな骨瓶に入れしまひけり
現代語での読み:ふきのはに ていねいにあつめし ほねくずも みなこつがめに いれしまいけり
作者と出典
斎藤茂吉『赤光』「死にたまふ母」 其の3 12首目の歌
現代語訳
蕗の葉を手に丁寧に集めた母の細かい骨もみな骨つぼに入れてしまったよ
歌の語句
・蕗の葉に…蕗の葉は大きな丸葉
・丁寧に…ここでは、現代語を用いている
・骨くづ…細かい骨や灰
・骨瓶…骨壺のこと
・入れ仕舞ひけり…「入れて仕舞う」を省略した用法
句切れと表現技法
- 句切れなし
- 現代語と口語的な用法
解釈と鑑賞
歌集『赤光』の其の3 12首目の歌
火葬にした母の骨拾いの最後の場面となる歌。
「丁寧に」は現代語
この歌にはこほばの用法で特徴がある。
ひとつは「丁寧に」という副詞で、「ねんごろに」などの古語への置き換えの可能だが、あえて現代語を使い、これは作者自身も意識した用法である。(以下参照)
もう一つは「入れ仕舞ひけり」で、塚本邦雄は「入れて仕舞ふ」が正しいので、この言葉を「失敗」としている。
斎藤茂吉自註より
以下は、斎藤茂吉のこの歌の自解自注より
「丁寧に」という語は、従来の歌人などによって殆ど全く使われなかった表現だけに珍しいと言えば珍しく、これもまた、こんな平凡な語と言えども模倣によって繰り返されると厭味になってくるものである。―――『斎藤茂吉著『作歌四十年』より
一連の歌
ひた心目守(まも)らんものかほの赤くのぼるけむりのその煙はや
灰のなかに母をひろへり朝日子(あさひこ)ののぼるがなかに母をひろへり
蕗の葉に丁寧にあつめし骨くづもみな骨瓶(こつがめ)に入れしまひけり