をさなごは畳のうへに立ちて居りこのおさなごは立ちそめりけり
斎藤茂吉『あらたま』から主要な代表歌の解説と観賞です。
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斎藤茂吉の短歌案内
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をさなごは畳のうへに立ちて居りこのおさなごは立ちそめにけり
読み:おさなごは たたみのうえに たちており このおさなごは たちそめりけり
意味と現代語訳
幼いこの子は、畳の上に立っている。この子は初めて立ったのだよ。
作者と出典
斎藤茂吉 歌集『あらたま』
歌の語句
・をさなご…斎藤茂吉の長男のこと
・立ちており…「立つの連用形+居る(をる)+「り」官僚の助動詞」
「立ちそめにけり」品詞分解
立つ…タ行4段活用 動詞の連用形
そむ…「はじめる」の意味の動詞 連用形
に…官僚の助動詞「ぬ」の連用形
短歌の修辞法と表現技法
・3句切れ
・「立つ」を含む句の反復
解釈と鑑賞
歌集『あらたま』の中の幼子を詠う歌。
長男茂太氏のことを「をさなご」として、多数の歌を詠んでいる。
おさない子どもが初めて立った時の喜びを、反復で「立ちており・立ちそめにけり」と繰り返す。
最初の「立ちており」は、「立っていた」となるので、気が付いた時には、あるいは茂吉が見た時には、子どもはすでに立っていたということになるだろう。
それをさらに、初めての歩みであるということを「立ちそめにけり」と強調する。
この歌の少しあとには、「をさなごはつひに歩めりさ庭べの土ふましめてかなしむわれは」があるところを見ると、歩み始めたのはそのあとのことで、ここでは、「立った」ことだけを喜んでいると思われる。
次男で作家の北杜夫氏によると、茂吉は子煩悩であったらしく、孫が生まれてからは、共に散歩をするのを楽しみにしており、子ども好きな一面があったようだ。