赤光

『赤光』斎藤茂吉の歌集 短歌代表作を現代語訳付きで解説

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「赤光」は大正から昭和の時代の日本の代表的な歌人、斎藤茂吉の代表作である第一短歌集で、「死にたまふ母」は教科書にも掲載、日本の代表的な短歌とされています。

芥川龍之介も絶賛した「赤光」とはどんなものか、歌集の特徴、主要な短歌を抜粋し、現代語訳と文法解説、解説をまとめました。

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「赤光」について

『赤光』(しゃっこう)は、歌人斎藤茂吉が最初に出した短歌集のタイトルです。

1913年発行。代表作「死にたまふ母」を含み、斎藤茂吉の処女歌集として、歌壇だけでなく、広く文学界に影響を与えました。

初版と、改選版があり、斎藤茂吉自身は、改選版刊行後はそちらを優先するように求めましたが、近年は初版での解説書も多く見られます。

改選版は「あらたま」の発行後に手直しの上刊行されました。

・斎藤茂吉の生涯と、折々の代表作短歌は下の記事に時間順に配列しています。

斎藤茂吉の生涯と代表作短歌 特徴や作風「写生と実相観入」

・「死にたまふ母」は別ページ「死にたまふ母」全59首の方にあります。

「赤光」の概説

斎藤茂吉の処女歌集。明治38年(1905年)~大正2年(1913年)の作品を集めて、大正2年(1913年)10月に東雲堂書店から刊行された。茂吉のもっともよく知られる代表的な歌集と言える。

初版は834首が収録され、逆年代順の配列だったが、大正10年(1921年)発行の改選版では760首にまで削られ、年代順に改められた。その際改作や推敲が行われたため、初版と改選版の歌は部分的に異なっている。

『赤光』の題名は仏教の経から

歌集名の『赤光』は、幼いころから仏教に親しんだ茂吉が、『仏説阿弥陀経』の

『地中蓮華大如車輪青色青光黄色黄光赤色赤光白色白光微妙香潔・・・』

の部分からとったものです。

「赤光」の「赤」は斎藤茂吉のテーマカラー

さらに、本歌集の中に頻繁に出てくる赤い色は茂吉のテーマカラーともいえます。

「赤」が出てくる短歌作品が多いため、茂吉は「くれなゐの茂吉」とも言われました。

 

赤光の代表作短歌

「赤光」の代表作の連作(短歌が複数まとまったもの)には下のようなものがあります。

  • 「死にたまふ母」
  • 「おひろ」
  • 「おくに」
  • 「悲報来」

 

生母を失った際の「死にたまふ母」は『赤光』中の代表作とされています。

その次には、恋人との出会いと別れの「おひろ」、忠実な召使であった「おくに」は、どちらも女性との交流を詠ったものです。

他に、斎藤茂吉の短歌の師である歌人・伊藤左千夫の逝去の報を詠った「悲報来」も主要な連作となっており、初版では時間順に、この一連が一番最初に置かれました。

 

『赤光』「死にたまふ母」の短歌代表作

『赤光』の代表作はなんといっても、その中の「死にたまふ母」一連の作品です。

教科書にも掲載されて、皆に知られる作品となっています。

いちばんよく知られている歌3首を先にあげます。

各歌の解説については、下の一覧から、各歌をクリックしてくだされば、各歌の解説ページに飛びますので、どうぞ一首ずつご覧ください。他の『死にたまふ母』59首、また、『死にたまふ母』のあらすじにつきましては、別ページ「死にたまふ母」全59首の方からご覧ください。

コンパクトに現代語訳入りで、全部を読みたいという場合は、斎藤茂吉『赤光』代表作解説全文(短縮版)からご覧ください。

 

『赤光』斎藤茂吉 掲載短歌一覧

『赤光』の「死にたまふ母」以外の代表作一覧です。

このページはインデックスです。各歌をクリックしてくだされば、各歌の解説ページに飛びますので、どうぞ一首ずつご覧ください。

『赤光』斎藤茂吉の代表的な作品

蚊帳のなかに放ちし蛍夕さればおのれ光りて飛びそめにけり

月落ちてさ夜ほの暗く未だかも弥勒は出でず虫鳴けるかも

かへり見る谷の紅葉の明(あき)らけく天(あめ)にひびかふ山がはの鳴り

隣室に人は死ねどもひたぶるに箒ぐさの実食ひたかりけり

細みづにながるる砂の片寄りに静まるほどのうれひなりけり

木のもとに梅はめば酸しをさな妻ひとにさにづらふ時たちにけり

おのが身をいとほしみつつ帰り来る夕細道に柿の花落つも

たまたまに手など触れつつ添ひ歩む枳殻垣にほこりたまれり

しろがねの雪ふる山に人かよふ細ほそとして路見ゆるかな

さにづらふ少女ごころに酸漿(ほほづき)の籠らふほどの悲しみを見し

よにも弱き吾なれば忍ばざるべからず雨ふるよ若葉かへるで

赤茄子の腐れてゐたるところより幾程もなき歩みなりけり

はるばるも来つれこころは杉の樹の紅の油に寄りてなげかふ

みちのくの蔵王のやま腹にけだものと人と生きにけるかも

長鳴くはかの犬族のなが鳴くは遠街にして火は燃えにけり

猫の舌のうすらに紅きてざわりのこの悲しさを知りそめにけり

ほのかなる茗荷の花を目守る時わが思ふ子ははるかなるかも

ものみなの饐ゆるがごとき空恋ひて鳴かねばならぬ蝉のこゑ聞ゆ

けふもまた向ひの岡に人あまた群れゐて人を葬りたるかな

いちめんに唐辛子あかき畑みちに立てる童のまなこ小さし

自殺せる狂者をあかき火に葬りにんげんの世に戦きにけり

けだものは食(たべ)もの恋ひて啼き居たり何(なに)といふやさしさぞこれは

わが目より涙ながれて居たりけり鶴のあたまは悲しきものを

かの岡に瘋癲院のたちたるは邪宗来より悲しかるらむ

遠国へ行かば剃刀のひかりさへ慣れて親しといへば嘆かゆ

神無月空の果てよりきたるとき眼ひらく花はあはれなるかも

いのち死にてかくろひ果つるけだものを悲しみにつつ峡に入りけり

ゆふ日とほく金にひかれば群童は目つむりて斜面をころがりにけり

雪の中に日の落つる見ゆほのぼのと懺悔(さんげ)の心かなしかれども

赤電車にまなこ閉づれば遠国へ流れて去らむこころ湧きたり

にんげんの赤子を負へる子守居りこの子守はも笑はざりけり

ひんがしはあけぼのならむほそほそと口笛吹きて行く童子あり

なげかへばものみな暗しひんがしに出づる星さへあかからなくに

ほのぼのと目を細くして抱かれし子は去りしより幾夜か経たる

ひったりと抱きて悲しもひとならぬ瘋癲学の書のかなしも

わが生れし星を慕ひしくちびるの紅きをんなをあはれみにけり

うれひつつ去にし子ゆゑに藤のはな揺る光りさへ悲しきものを

この心葬り果てんと秀の光る錐を畳にさしにけるかも

ひんがしに星いづる時汝が見なばその目ほのぼのとかなしくあれよ

死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞ゆる

我が母よ死にたまひゆく我が母よ我を生まし乳足らひし母よ

のど赤き玄鳥(つばくらめ)ふたつ屋梁(はり)にゐて足乳根の母は死にたまふなり

どんよりと空は曇りて居りしとき二たび空を見ざりけるかも

ダアリヤは黒し笑ひて去りゆける狂人は終にかへり見ずけり

めん鶏ら砂あび居たれひつそりと剃刀研人(かみそりとぎ)は過ぎ行きにけり

たたかひは上海に起り居たりけり鳳仙花赤く散りゐたりけり

ひた赤し煉瓦の塀はひた赤し女刺しし男に物いひ居れば

天そそる山のまほらに夕よどむ光の中に抱きけるかも

鳳仙花城跡に散り散りたまる夕かたまけて忍び来にけり

ひた走るわが道暗ししんしんと怺へかねたるわが道くらし

罌粟はたの向うに湖の光りたる信濃のくにに目ざめけるかも

氷きるをとこの口のたばこの火あかかりければ見て走りたり

ほのぼのとおのれ光りてながれたる蛍を殺すわが道くらし







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