つゆじも 斎藤茂吉

斎藤茂吉歌集『つゆじも』『ともしび』短歌一覧 現代語訳付き解説と鑑賞

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斎藤茂吉の第3集『つゆじも』と『ともしび』の中の短歌の代表作です。
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斎藤茂吉「つゆじも」短歌全作品 テキストのみ解説なし

斎藤茂吉の他の歌集:
斎藤茂吉「赤光」短歌一覧 現代語訳付き解説と鑑賞
斎藤茂吉「あらたま」短歌一覧 現代語訳付き解説と鑑賞

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掲載歌一覧

『つゆじも』『ともしび』から選んだ代表歌について一首ずつ書き記します。
各歌をクリックすると、掲載ページへ飛びます。

『つゆじも』

ゆふぐれの泰山木の白花はわれのなげきをおほふがごとし

湯いづる山の月の光は隈なくて枕べにおきししろがねの時計を照らす

のぼり来し福済禅寺(ふくさいぜんじ)の石畳そよげる小草とおのれ一人と

海のべの唐津のやどりしばしばも噛みあつる飯(いひ)の砂のかなしさ

いつくしく虹たちにけりあはれあへれ戯れのごとくおもほゆるかも

みづからの生(いのち)をしまむ日を経つつ川上がはに月照りにけり

牛の背に畠つものをば負はしめぬ浦上人(うらかみびと)は世の唄うたはず

松風のおともこそすれ松かぜは遠くかすかになりにけるかも

ながらふる月のひかりに照らされしわが足もとの秋ぐさのはな

飛騨の空にあまつ日おちて夕映のしづかなるいろを月てらすなり

わがいのちをくやしまむとは思はねと月の光は身にしみにけり

『ともしび』

かへりこし家にあかつきのちやぶ台に火焔(ほのほ)の香する沢庵を食む

家いでてわれは来しとき渋谷川に卵のからがながれ居にけり

ひかりさす松山のべを越えしかば苔よりいづるみづを飲むなり

さ夜なかにめざむるときに物音たえわれに涙のいづることあり

目をあきてわがかたはらに臥したまふ和尚のにほひかなしも

今日の日も夕ぐれざまとおもふとき首(かうべ)を垂れて我は居りにき

こもり波あをきがうへにうたかたの消えがてにして行くはさびしゑ

さ夜ふけて慈悲心鳥のこゑ聞けば光にむかふこゑならなくに

うごきゐし夜(よる)のしら雲のなくなりて高野(たかの)の山に月てりわたる

しづかなる峠をのぼり来しときに月のひかりは八谷をてらす

ひる過ぎてくもれる空となりにけり馬おそふ虻(あぶ)は山こえて飛ぶ

雪ぐもりひくく暗きにひんがしの空ぞはつかに澄みとほりたる

目のまへの雑草(あらくさ)なびき空国(むなぐに)にもの充(み)つるなして雨ぞ降りゐる

秋づきて心しづけし町なかの家に氷を挽きをる見れば

信濃路はあかつきのみち車前草も黄色になりて霜がれにけり

むかうより瀬のしらなみの激ちくる天龍川におりたちにけり

ぬばたまの夜にならむとするとき向ひの丘に雷ちかづきぬ

音立てて茅(ち)がやなびける山のうえへに秋の彼岸のひかり差し居り

はざまより空にひびかふ日すがらにわれは寂しゑ鳴沢(なるさは)のおと

山がひの空つたふ日よあるときは杉の根方まで光さしきぬ

きはまりて晴れわたりたる冬の日の天龍川にたてる白波

浅草のきさらぎ寒きゆふまぐれ石燈籠にねむる鷄(とり)あり

わが父も母もなかりし頃よりぞ湯殿のやまに湯は湧きたまふ

常ならぬものにもあるか月山(ぐわつさん)のうへにけむりをあげて雪とくる見ゆ

夜もすがらたまゆらも眠りがたしとて吾にむかへる労働人(はたらきびと)ひとり

絶間なきものの響やわれひとり野分(のわき)だつ庭にいで来りける

 

-つゆじも, 斎藤茂吉

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