アララギの歌人たち 未分類 正岡子規 短歌

対象に時間を見る姿勢 正岡子規 庭前即景 島木赤彦 切り火

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くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる
汽車の音の走り過ぎがる垣の外の萌ゆる梢に煙うづまく
くれなゐの若菜ひろがる鉢植えの牡丹の蕾いまだなかりけり
春雨をふくめる空のうす曇り山吹の花の枝も動かず
-------正岡子規 庭前即景

「一は細部を見ること、一は時間を見ること」「いずれも対象に時間を見ようとする姿勢がはっきりと出ている。」佐々木幸綱「観賞日本現代文学」

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夕焼空焦げきはまれる下にして氷らんとする湖(うみ)の静けさ
夕空の天(あめ)の夕焼にひたりたる褐色の湖は動がざりけり
たかだかと繭の荷車を推す人の足の光も氷らんとする
押して行く繭の荷車は山の湖の夕照(ゆふでり)さむく片明りせり
かわきたる草枯いろの山あひに湖は氷りて固まりにたり
この夕氷のいろに滲みたる空気明りのいちじろく見ゆ
おぼろおぼろ湖にくろめる山のいろも崩れんとする夜の寒さはや
-------島木赤彦 『切り火』諏訪湖

「氷らんとする」「動かざりけり」「氷らんとする」「氷りて固まりにたり」「山のいろも崩れんとする」といった、<時間>を表す語がそれぞれの歌のキー・ワードとなっており、それ以外の「夕照さむく片明りせり」「空気明りのいちじろく見ゆ」も、たちまちに映ろう夕方の光と影の光の部分を、瞬間的にクローズ・アップしたこれも<時間>をうたった歌とみなすことができよう。」

「凍ろうとしてまだ凍ってはいない未遂のドラマ、静寂の中を徐々に深まっていく結氷の予感。この「まだ」とか「徐々に深まっていく」としか表現しようのない<時間>こそがこの歌の核心なのであろう。」(同上)







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