旅人に宿かすが野のゆづる葉の紅葉せむ世や君を忘れむの意味解説  

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旅人に宿かすが野のゆづる葉の紅葉せむ世や君を忘れむの意味解説

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旅人に宿かすが野のゆづる葉の紅葉せむ世や君を忘れむ 「古今和歌六帖」の和歌が朝日新聞の天声人語で紹介されました。

『枕草子』においても引用されているこの和歌の意味と作者についてお知らせします。

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旅人に宿かすが野のゆづる葉の紅葉せむ世や君を忘れむの作者

読み方と出典からです。

現代語での読み

現代語での読み方は

たびびとに やどかすがのの ゆずるはの もみじせんよや きみをわすれん

となります。

出典

『古今和歌六帖』

『枕草子』〔三十七〕花の木ならぬは に引用あり

※清少納言の代表作は
夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関はゆるさじ 百人一首62番 清少納言

古今和歌集の代表作品一覧 読んでおきたい有名20首

作者

この歌の作者は詠み人知らずとなっており、作者不詳です。

和歌の現代語訳

この歌の意味は、直訳すると

ゆずり葉が紅葉するようなことがあったら、旅人に宿を貸してくれたあなたを忘れるだろう

となります。

和歌の意味

もちろん直訳なので普通ならこのようには言わず

旅人に宿を貸してくれるというあなたのご厚意はけっして忘れることはありません

というのが和歌の意味です。

ゆずり葉云々の部分は、あくまで和歌に用いる修辞の部分です。

この部分を中心に、文法を含め、和歌の技法を確認してみましょう。

和歌の解説

この和歌の解説です。

掛詞

「かすが野」とは奈良県の当時の地名のことで、春日山の麓一帯の平野のエリアを言います。

「旅人に宿かすが野の」の2句目の部分、「宿」と「かすが野」はそれぞれ別々の言葉ですが、ここが「宿を貸す」の掛詞となっています。

動詞の含まれる名詞の連続

「ゆづる葉」は今でいうユズリハの植物名ですが、「かすが野」と「ゆづる葉」はそれぞれ「貸す」「譲る」の動詞が含まれています。

どちらも人に対して厚意を持って行うことで、同じ4文字でほとんど対句のように印象に残る部分です。

「紅葉せむ世や」の反語

ゆずり葉は常緑樹であり、赤く色づくのは実の部分のみです。

そのため、紅葉をするというのは事実に反する過程です。

「や」は反語と呼ばれる修辞の一つで、意味は「(だろう)か、いや、… ない」の意味となります。

「ありえない紅葉することがあるだろうか、いや、ない」の打ち消しです。

さらにこの「や」は「紅葉する世」につく「や」ですが、紅葉するしないではなく、このあとの「君を忘れむ」の方の反語です。

係り結び

和歌や古文の修辞で係り結びという修辞がありますが、この部分「む・・・や」がその係り結びです。

さらにこの意味は反語なので「反語の係り結び」ということになります。

なお、反語でない疑問の「や」もありますので、全体の意味を持って見分けることになります。

「君を忘れむ」の意味

「君を忘れむ」はあなたを忘れるだろう」の意味ですが、前に反語の「や」があれば、「だろうか・・・いや、ない」の意味となり、「紅葉せむ世や」の「ゆずり葉が紅葉するだろうか・・・いやない」と同じです。

この「や」は前にあっても「君を忘れむ」よりも前に合っても、この部分の反語となります。

枕草子への引用

この和歌の枕草子への引用は以下の通り。

ゆづり葉<の、いみじうふさやかにつやめき、茎はいとあかくきらきらしく見えたるこそ、あやしけれどをかし。なべての月には見えぬ物の、師走のつごもりのみ時めきて、亡き人のくひものに敷く物にやとあはれなるに、また、よはひを延ぶる歯固めの具にももてつかひためるは。いかなる世にか、「紅葉せん世や」といひたるもたのもし。

この部分では、クスノキやヒノキ、樫の木などのいろいろな木の趣を比較しており、その最後の部分にゆずり葉が取り上げられます。

茎が赤く目立って美しい様子や、行事の際に用いられることを述べた後、最後に「紅葉せん世や」と歌に詠まれていることを「たのもし」としています。

頼もしの意味は「こころ強い」「 あてにできる」ということですが、紅葉するもみじも素晴らしいながら、色が変わらずに保つことを清少納言が逆に評価しているようです。

まとめ

和歌の修辞の反語というのは、現代語からするとややわかりにくいものです。

「君を忘れむ」と終わっていても「忘れよう」ではなくて、「決して忘れない」の意味となりますので、同様の表現を見かけたら反語ではないか、その独特の表現を思い出してみてください。




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