教科書の短歌

枕詞とは その意味と主要20一覧と和歌の用例

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枕詞は短歌や和歌に使われる言葉で、それ自体に意味はなく、次の言葉を引き出す主に5文字の言葉をいいます。

枕詞とは何か、主要な枕詞を一覧に示し、和歌の用例をあげながら解説します。

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枕詞とは

古い時代の和歌、短歌を鑑賞していて必ず出会うのが、「枕詞」(まくらことば)です。

もっともよく知られているのが「たらちねの」、他にも「ぬばたまの」「うつせみの」など様々なものがあります。

枕詞の音数は五音が普通ですが、4音、6音もあります。

どれが枕詞かということを知るには、あらかじめ枕詞にどのようなものがあるのかを知っておかないと、識別が難しい場合があります。

 

枕詞の意味

枕詞は、それ自体の意味がよくわからない、あるいは、意味がないとされているものがほとんどです。

現代語訳するときも、訳す必要がないものが多いのです。

枕詞の目的

枕詞は一定の語句の上につけて修飾したり、口調を整えたりするのに用います。

特に枕詞は、次に続く言葉とセットになって使われることが多いので、セットになる言葉が何かを知っておく必要があります。

なぜそのように使われているのかというと、短歌は古くは、現在のように紙に書かれて鑑賞することが目的ではなく、読み上げられて鑑賞される、「口誦(こうしょう)」が主な伝達の方法でした。

口誦というのは、古く短歌を文字ではなく、謡のように読んで伝えていたという意味です。

枕詞は、その口誦(こうしょう)時代には、一定の語句を引き出す役目をするために配置されたのです。

短歌の読み上げ

宮中の歌会始などを見ると、短歌が一語一語、現代からみるととてもゆっくりと歌を読み上げられています。

そういうときに「たらちねのー」というと、読み上げの間も、次に移る間にも、「次には『母』が来るのだな」と母のイメージを持ちながら聞き続けることができます。

「母」と二文字だけでいうよりも、「たらちねの母」と7文字にすれば、母のイメージを持つ部分がそれだけ長く、印象に強くなります。

「枕詞」とは、そもそもそういう決まった語句を引き出す役割をしたもののようです。

ですので、枕詞というのは、意味が何かではなくて、次に来る言葉が何かということ、何という言葉と一緒に用いられるかということの方が大切なのです。

序詞との違い

枕詞は、5文字の言葉ですが、序詞は単語ではなく、一つの言葉を導くための文節を言います。

文字数に決まりはありません。また、決まった言葉でもないので、各歌の意味と構成から判断をすることとなります。

 

主要な枕詞一覧

枕詞は、全部で千語を超すものがあると言われていますが、よく使われるものをあげると下の通りです。

あかねさす日・昼・紫・君
あづさゆみ引く・張る(春)・射る・音
あしひきの/あしびきの山・峰
天ざかる日・鄙(ひな)・向かふ
あらたまの年・月・日
あをによし奈良
石走る (いはばしる)垂水(たるみ)・滝
うつせみの命・世・人・命
唐衣 (からころも)着る・裁つ・かへす・紐・裾
草枕 (くさまくら)旅・度(たび)・結ぶ、結ふ・夕
敷島の (しきしまの)大和
白妙の (しろたへの)衣・袂・紐・帯・袖・たすき・雲・雪
そらみつ大和
玉の緒の (たまのおの)長き・短き・絶え・乱れ・継ぐ・惜し
たらちね(垂乳根)の母・親
ちはやぶる神・宇治・氏(うぢ)
ぬばたまの黒・夜・夕べ・夢・月・髪
ははそは(柞葉)の
久方の (ひさかたの)天(あめ、あま)・雨・月・空・光
八雲立つ (やくもたつ)出雲(いずも)

 

枕詞の用例

それぞれの枕詞の用例をあげます。

あかねさす

あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る

「あかねさす→紫」にかかります

作者と出典

額田王 ぬかたのおおきみ 万葉集 1-20

現代語訳

紫草の生えているこの野原をあちらに行きこちらに行きして、野の番人がみとがめるではありませんか。あなたがそんなに私に袖をお振りになるのを

この歌の詳しい解説:
あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る/額田王の有名な問答歌

 

あづさゆみ

あづさ弓引けど引かねど昔より心は君に寄りにしものを

あづさゆみ→引く にかかります

作者と出典

作者は未詳 伊勢物語 24

現代語訳

あなたがわたしの心を引こうと引くまいと、昔からわたしの心はあなたに傾いていたのに

 

あしひきの

あしひきの山のしづくに妹待つと我立ち濡れぬ山のしづくに

あしひき→山 にかかります

作者と出典

大津皇子 万葉集(2-107)

現代語訳

山の雫にあなたが来るのを待っていて私は濡れてしまった その山のしずくに

この歌の詳しい解説:
あしひきの山のしづくに妹待つと我立ち濡れぬ山のしづくに 大津皇子

 

天離る

天離る鄙(ひな)の長道(ながぢ)ゆ恋ひ来れば明石(あかし)の門(と)より大和島見ゆ

天離る→鄙(ひな)にかかります

作者と出典

・柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)万葉集 255

現代語訳

西の地方からの長い道のりをたどって、都を恋しく思いながらやって来ると、明石の海峡から、あの懐かしい大和の山々が見えるよ

 

あらたまの

あらたまの年行(ゆ)き返り春立たばまづわがやどにうぐひすは鳴け

あらたま→年 にかかります

作者と出典

大伴家持 「万葉集」

現代語訳

年が改まって新しい春を迎えたなら、鶯よ、まずわが庭に鳴いてくれ

この歌の詳しい解説:
大晦日と年明けの短歌 万葉集と古今集他 大伴家持 紀貫之

 

あをによし

あをによし奈良の都は咲く花のにほふがごとく今盛りなり

あをによし→奈良 にかかります

作者と出典

小野老 「万葉集」巻三(三二八)

現代語訳

美しい奈良の京は、咲く花の匂うかのように今が盛りです

 

石走る

石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも

石走る→垂水 にかかります

作者と出典

志貴皇子(しきのみこ) 万葉集 巻8・1418

現代語訳

岩をほとばりし流れる垂水のほとりのさわらびが、芽を出す春になったことだ

この歌の詳しい解説:
石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも

 

うつせみの

うつせみの世は常(つね)なしと知るものを秋風(あきかぜ)寒み思(しの)ひつるかも

うつせみの→世 にかかります

作者と出典

大伴家持 巻三(四六五)

現代語訳

現実の世は常のなきものと知りながらも、秋風が寒く感じられるようになると、妻のことが思い出されるよ

 

うつせみの・うつそみの

うつそみの人なる我や明日よりは二上山を弟と我が見む

うつせみの→人 にかかります

作者と出典

大伯皇女 万葉集(2-165)

現代語訳

一人この世に生き続ける私は、明日からは弟の眠るあの二上山を弟として見続けよう

この歌の詳しい解説:
うつそみの人なる我や明日よりは二上山を弟と我が見む

 

唐衣・からころも

から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬるたびをしぞ思ふ

から衣→着る にかかります

作者と出典

在原業平(ありわらのなりひら) 古今和歌集 伊勢物語

現代語訳

唐衣を着なれるように、なれ親しんだ妻が都にいるので、はるかここまでやって来た旅のつらさを身にしみて感じることだ

この歌の詳しい解説:
から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬるたびをしぞ思ふ 在原業平

 

草枕

家にあればに盛るいひを草枕旅にしあれば椎の葉に盛る

草枕→旅 にかかります

作者と出典

有間皇子(ありまのみこ) 万葉集142

現代語訳

家にいれば器に盛る飯を、旅の途中なので椎の葉に盛るのだ

この歌の詳しい解説:
家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る 有間皇子

 

敷島の・磯城島の

磯城島しきしま大和やまとの国に人二人ありとし思はば何か嘆かむ

草枕→旅 にかかります

作者と出典

作者不詳  巻13・3249

現代語訳

しきしまのこの日本のくにに、いとしいあなたが、二人あると思ったならば、どうしてこんなに嘆くでしょうか。二人といないあなたなので、そのあなたに会えないからこそ、こんなに悲しんでいるのです。

この歌の詳しい解説:
磯城島の日本の国に人二人ありとし思はば何か嘆かむ【万葉集】

 

白妙の

春過ぎて夏きたるらし白妙の衣干したり天の香具山

白妙の→衣 にかかります

作者と出典

持統天皇  万葉集 1-28

現代語訳

春が過ぎて夏が到来したようだ 天の香具山に白い夏衣が干してあるのを見るとそれが実感できる

この歌の詳しい解説:
春過ぎて夏きたるらし白妙の衣干したり天の香具山/品詞分解と表現技法/持統天皇

 

玉の緒の

玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする

玉の緒=命
この歌では、「玉の緒の命」と使わずに、「玉の緒」をそのまま「命」の意味での代名詞として用いています

同様の例は「たらちね」などにもあります。

作者と出典

式子内親王(しょくしないしんのう) 百人一首89番 新古今和歌集

現代語訳と意味

わたしの命よ。絶えてしまうというなら絶えてしまっておくれ。生きつづけていたならば、恋心を秘めている力が弱って、秘めきれなくなるかもしれないので

この歌の詳しい解説:
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする/式子内親王

 

たらちね

たらちねの母が手離れかくばかりすべなきことはいまだせなくに

たらちねの→母にかかります

作者と出典

万葉集:220 作者不詳

現代語訳と意味

生みの母を離れて以来こんなにどうしようもない思いは、いまだかつてしたことがなかったのに

この歌の詳しい解説:
「たらちね」の意味と垂乳根 の枕詞を用いた短歌の用例 万葉集他

 

ちはやぶる

ちはやぶる神世も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは

ちはやぶる→神 にかかります

作者と出典

在原業平朝臣(ありわらのなりひらあそん)

・百人一首 17・「古今集」294

現代語訳と意味

不思議なことが多かった神代にも聞いたことがない。龍田川が、水を美しい紅色にくくり初めにするなんて

この歌の詳しい解説:
ちはやぶる神世も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは 在原業平

 

ぬばたまの

ぬばたまの夜のふけゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しば鳴く

ぬばたまの→夜  にかかります

作者と出典

万葉集 九二五・山部赤人(やまべのあかひと)

現代語訳と意味

夜がしだいに更けてゆくと、久木の生えている清らかな川原で千鳥がしきりに鳴いている。

他に

ぬばたまの夜にならむとするときに向ひの丘に雷ちかづきぬ 斎藤茂吉『ともしび』

 

ははそは(柞葉)の

山ゆゑに笹竹の子を食ひにけりははそはの母よははそはの母よ

ははそはの→母   にかかります

作者と出典

斎藤茂吉『赤光』

夜がしだいに更けてゆくと、久木の生えている清らかな川原で千鳥がしきりに鳴いている。

現代語訳と意味

山であるので、笹竹の子を食べたのであった。幼い時の味にまたも思い出される母よ、逝ってしまった母よ

他に
星のゐる夜ぞらのもとに赤赤とははそはの母は燃えゆきにけり

斎藤茂吉「死にたまふ母」全短歌作品 現代語訳付き解説と鑑賞

 

久方の

久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ

久方の→光  にかかります

作者と出典

紀友則 古今和歌集

現代語訳と意味

日の光がのどかな春の日に、どうして落ち着いた心もなく桜の花は散っていくのだろうか

この歌の詳しい解説:
久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ 紀友則 修辞と解説

 

八雲立つ

八雲立つ出雲八重垣妻ごみに八重垣作るその八重垣を

八雲立つ→出雲 にかかります

作者と出典

須佐之男命(すさのおのみこと)

現代語訳と意味

八雲立つ出雲の国を幾重にもとりまわしている雲ではないが、かわいい妻を籠らせるために、家の周りに幾重にも囲いを作るよ、その八重の囲いよ。

この歌の詳しい解説:
八雲立つ出雲八重垣妻ごみに八重垣作るその八重垣を 日本初の和歌の意味

他に
八雲さす出雲の子らが黒髪は吉野の川の沖になづさふ 柿本人麻呂

まとめ

以上、枕詞とは何か、そして主要な枕詞の使われた短歌や和歌をご紹介しました。







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