万葉集 教科書の短歌

教科書の和歌 万葉集より中学高校教材収録作品 現代語訳と解説

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教科書に収録されている、万葉集の和歌を一覧にまとめました。

持統天皇、柿本人麻呂、額田王、山部赤人他の短歌の現代語訳と解説をコンパクトにまとめます。

語の注解と解説、文法と表現技法、解説と鑑賞のポイントなどは、歌別の記事の方でご覧ください。

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教科書の短歌

教科書に掲載された短歌を、近代短歌と現代短歌、さらに古い時代の和歌とに分けて記します。

このページは和歌のページのインデックス、目次です。詳しい文法解説については、個々の短歌別の記事でお読みください。

現代短歌と近代短歌については下のページにありますので、そちらをご覧ください。

教科書の短歌/中学校教材に収録の近代歌人の作品/正岡子規斎藤茂吉若山牧水石川啄木与謝野晶子

教科書の短歌/中学校教材に収録の現代歌人の作品/寺山修司俵万智

春過ぎて夏きたるらし白妙の衣干したり天の香具山

読み:

読み:はるすぎて なつきたるらし しろたえの ころもほしたり あめのかぐやま

作者

持統天皇 万葉集1-28 百人一首2 新古今集 175

現代語訳

春が過ぎて夏が到来したようだ 天の香具山に白い夏衣が干してあるのを見るとそれが実感できる

解説

作者の持統天皇は女性で、天智天皇の皇女です。

雨の香久山は、どこよりも早く季節が訪れる神秘の存在とみなされている場所であることが、古い文書に残っています。

持統天皇は古くから神の山として崇められてきた、天の香久山に藤原京を遷都差せました。

その香久山の景色に夏の到来を感じて、山の緑と、衣の城を穏やかに対比させ叙情豊かに読み上げたものです

この歌の詳しい文法解説は、下の記事に
春過ぎて夏きたるらし白妙の衣干したり天の香具山/品詞分解と表現技法/持統天皇

 

田子の浦ゆうち出でてみればま白にぞ富士の高嶺に雪は降りつつ

読み:たごのうらゆ うちいでてみれば ましろにぞ ふじのたかねに ゆきはふりつつ

作者

山部赤人 万葉集 3-318 新古今集675

現代語訳

田子の浦の海岸を先の方まで歩いて行ってそこから見ると、真っ白に富士山の高嶺に雪が降り積もっていることだ

解説

山部赤人は万葉集を代表する歌人のひとりです。

神の山である富士の白雪を選んだ雄大な叙景歌です。

青い海と白い砂浜の彼方に雪の降りしきる気高い富士の映像が、読む人の心に美しく浮かび上がる門のとして、古くから秀歌として鑑賞されています。

 

銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも

読み:しろかねも くがねもたまも なにせむに まされるたから こにしかめやも

作者と出典

山上憶良 やまのうえのおくら 「万葉集」803

現代語訳

銀も金も玉も、いかに貴いものであろうとも、子どもという宝物に比べたら何のことがあろう

解説

山上憶良の子どもを想う有名な歌です。

この歌には、山上憶良の人間としての無類のやさしさがみられます。

そして、古代性を持った仏教の信仰の中から、一人の人間としての子どもの親、あるいは普通の人間としての隣人に対する思いというものを表現しています。

万葉の時代にこのような子どもへの思いを歌ったものはめずらしいですが、いつの世にも共感を誘われるものです。

 

父母がかしらかき撫で幸くあれていひし言葉けとばぜ忘れかねつる

読み:ちちははが かしらかきなで さちあれて いひしけとばぜ わすれかねつる

作者と出典

丈部稲麻呂 はせつかべのいなまろ 万葉集巻20-4346

現代語訳

父母が私の頭を撫でてと無事であれと言った言葉が忘れられない

解説

防人に出かけるまだ年若い男性が、父母との別れと愛慕の念を詠んだ和歌です。

「頭かき撫で」というのは、子供の頭を撫でることではなく、古代の別れの儀式の一つでした

この歌の詳しい文法解説は、下の記事に
父母が頭かき撫で幸くあれていひし言葉ぜ忘れかねつる/防人の歌

 

東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ

読み:ひんがしの のにかぎろいの たつみえて かえりみすれば つきかたぶきぬ

作者

柿本人麻呂 1-48

現代語訳

東の野に陽炎の立つのが見えて振り返ってみると月は西に傾いてしまった

解説

柿本人麻呂は万葉集を代表する大歌人であり、その後の時代の六歌仙のひとりです。

人麻呂らしい雄大でり、この一首のみではなく、長歌と短歌からなる一連の歌で、この壮大な景色には、それにふさわしい天皇となる人が立つべきであるということが暗示されています。

一連の和歌は、神話的な背景をも含め、天皇のつかさどる世界を骨太で雄大な成長で表したものです。

 

淡海あふみうみ夕浪ゆふなみ千鳥ちどりけばこころもしぬにいにしへおもほゆ

読み:おうみのうみ ゆうなみちどり ながなけば こころもしぬに いにしえおもおゆ

作者

柿本人麻呂 巻3 266

現代語訳

千鳥よ、夕暮れの近江の湖に、お前たちの鳴く声を聞けば、心もしおれて、昔の都の栄華のさまを偲ばれてならない

解説

万葉集の大歌人、柿本人麻呂の都の栄華をしのぶ歌。

近江宮の荒廃した後を見た時に、琵琶湖に来て詠んだ歌。

夕暮れの湖に鳴いている鳥たちの声と、その淋しいさまを「汝」と取りに呼びかける形で、過不足なく表現しています。

 

我が宿のいささ群竹吹く風の音のかそけきこの夕かも

読み:わがやどの いささむらたけ ふくかぜの おとのかそけき このゆうべかも

作者

大伴家持 巻19-4291

現代語訳

私の家の小竹林に、夕がたの風が吹いて、幽かすかな音をたてている。悲しくもあわれなこの夕がたよ

解説

大伴家持は、万葉集を編纂した人だといわれています。

それまでの万葉集にはなかった、線の細い”憂い”という微妙なところを表しています。

「いささむらたけ」の「いささ」は「少しばかり」の接頭語ですが、「笹」の音とも、竹の葉ずれの音とも重なります。

「いささ」と「かそけき」の「さ」と「そ」のサ行の音も、ほそほそとした悲しみに添う成長となっています。

この歌は「春愁三首」と言われる大伴家持の、三首の中の一首で、 「春の野に霞たなびきうら悲しこの夕かげにうぐひす鳴くも」「うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しもひとり思へば」のいずれの歌も大変有名です。

 

君待つと吾が恋ひ居れば我が屋戸の簾動かし秋の風吹く

読み:きみまつと あがこいおれば わがやどの すだれうごかし あきのかぜふく

作者

額田王(ぬかたのおほきみ) 488

現代語訳

あの方をお待ちして、私が恋焦がれている時に、庭前のすだれを動かして秋風が入ってきた。(あなたのおとずれのはかない前兆に過ぎないのに)

解説

「額田王(ぬかたのおほきみ)の近江天皇を思(しぬ)ひまつりてよみたまへる歌一首」。

この「君」は天智天皇であり、下の鏡女王というのは、妹で共に天皇に嫁いだと言われています。

なので、単なる恋心というよりは、やはり、天皇の寵を受けようと強い思いがあったのでしょう。

 

苦しくも降り来る雨か神の崎狭野の渡りに家もあらなくに

読み:くるしくも ふりくるあめか みわのさき さののわたりに いへもあらなくに

作者

長忌寸奥麿(ながのいみきおきまろ)

現代語訳と意味

不本意にも降ってくる雨だ。三輪の崎の狭野の渡し場には家もないというのに

解説

今の和歌山県の河の付近にいる旅の途中に降り出した雨のことを、そのまま詠んだ歌です。

長忌寸奥麿には、

「蓮葉(はちすは)はかくこそあるもの意吉麻呂(おきまろ)が家にあるものは芋の葉にあらし」

(はすの葉とはこのようなものを言うのか。どうも意吉麻呂の家にあるのは,里いもの葉かも知れない 巻第 16 - 3826)という歌もあって、どちらも親しみやすく面白い歌です。

 

多摩川にさらす手作りさらさらに何そこの児のここだ悲しき

読み:たまがわに さらすてづくり さらさらに なにそこのこの ここだかなしき

作者

作者未詳の歌

現代語訳と意味

多摩川にさらす布ではないが、さらにさらに、なぜあの子のことが、こんなにも愛しいのだろう

解説

東国で詠まれた「東歌(あずまうた)」の一首。

「かなしき」は「いとしい」という意味です。

東歌は地方の素朴な歌が多いのですが、この歌も、まっすぐな気持ちを伝えています。

 

その他の教科書の和歌

古今集以後の歌は下の通りです。解説は後ほど別ページに記載します。

秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる

寂しさにたへたる人のまたもあれないほりならべむ冬の山里

ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな

人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香(か)ににほひける

道の辺に清水流るる柳陰しばしとてこそ立ちどまりつれ

玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする

世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし

駒とめて袖うち拂う陰もなし佐野のわたりの雪の夕暮れ

袖ひぢてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ

春たてば消ゆる氷の残りなく君が心は我にとけなむ

教科書掲載の近代短歌と現代短歌はこちらのページに続きがありますので、あわせてご覧ください。

教科書の短歌/中学校教材に収録の近代歌人の作品/斎藤茂吉若山牧水石川啄木与謝野晶子

教科書の短歌2/中学校教材に収録の現代歌人の作品/寺山修司俵万智栗木京子穂村弘







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