教科書の短歌

教科書の短歌 中学校教材に収録の近代・現代歌人の作品 正岡子規若山牧水石川啄木与謝野晶子俵万智他

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中学校の教科書に収録されている短歌を一覧にまとめました。一部の短歌には、わかりやすい現代語訳、語の注解と解説、文法と表現技法、解説と鑑賞のポイントも加えています。

読みたい歌をクリックすると、より詳しい解説のページに飛びます。解説は随時追加していきます。

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教科書の短歌

近代短歌と現代短歌に分けて記します。

近代短歌

くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる

作者:正岡子規(1867~1902)
現代語訳:紅色の60センチほど伸びた薔薇の枝、そのまだやわらかい棘に春雨のふりかかる
表現技法:句切れなし。伸びやかな柔らかい調べ。

*この歌について詳しく読む→くれなゐの二尺のびたる薔薇の芽の針やはらかに春雨の降る 春雨の和歌と近代短歌

 

川ひとすぢ菜たね十里の宵月夜母がうまれし国美くしむ  

作者:与謝野晶子 (1878~1942)
現代語訳:一本の川とどこまでも続く菜の花に月の照る夜、この母が生まれた故郷を愛おしいと思う。
表現技法他:
国… 故郷。ここでは大阪の河内の平野。
「美(うつ)くしむ」… 古語に「慈(うつく)しむ、愛(うつく)しむ」で、「いとおしむ」の意の語がある。
十里は具体的な距離ではなく、広い範囲を指す。
なお、この歌の初稿は「はてもなく 菜の花つづく 宵月夜 母が生まれし 国美くしき」であった。

なにとなく君に待たるるここちして出でし花野の夕月夜かな
その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな
金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に
小百合さく小草がなかに君まてば野末にてほひ虹あらはれぬ

*与謝野晶子関連記事→与謝野晶子代表作「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」とは誰?

 

蚊帳のなかに放ちし蛍夕さればおのれ光りて飛びそめにけり

作者:斎藤茂吉
現代語訳:捕えてきて蚊帳の中に放した蛍が、夕方になればひとりでに光って飛び始めたのだよ
表現技法他:句切れなし
蛍の後には、主格の助動詞「は」「が」「の」に当たるものが省略されている。

*この歌について詳しく読む→蚊帳のなかに放ちし蛍夕さればおのれ光りて飛びそめにけり 斎藤茂吉短歌代表作『赤光』

死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞こゆる

作者:斎藤茂吉 歌集「赤光」死にたまふ母
現代語訳:死の間近に迫った母に添い寝をしていると、静まりかえった夜更け、遠くの田にしんしんと鳴く蛙の声が空に響いて聞こえてくる

*この歌について詳しく読む→死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞ゆる「死にたまふ母」斎藤茂吉「赤光」

ただひとつ惜しみて置きし白桃のゆたけきを吾は食ひをはりけり

作者:斎藤茂吉
現代語訳:惜しんで置いておいたたった一つのゆたかな白桃を食べ終わってしまったなあ

*この歌について詳しく読む→ただひとつ惜しみて置きし白桃のゆたけきを吾は食ひをはりけり 斎藤茂吉短歌代表作『白桃』

他に
最上川の上空にして残れるはいまだうつくしき虹の断片

みちのくの母のいのちを一目みん一目みんとぞたたにいそげる

作者:斎藤茂吉 歌集「赤光」死にたまふ母
現代語訳:東北の村に住む母をいのちがあるうちに、一目見ようとただひたすらに急いでいる

*この歌について詳しく読む→斎藤茂吉 死にたまふ母其の1 「ひろき葉は」~「上の山の」短歌集「赤光」代表作

のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて足乳根の母は死にたまふなり

作者:斎藤茂吉 歌集「赤光」死にたまふ母
現代語訳:のどの赤い二羽の燕が梁にとまっていて、母は死んでいってしまった

*この歌について詳しく読む→のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて足乳根の母は死にたまふなり 死にたまふ母

 

深々と人間笑ふ声すなり谷一面の白百合の花

現代語訳と意味:
深々(ふかぶか)と人間を笑う声が聞こえてくるようだ。谷一面を埋めて咲いている白百合の花の群れから

北原白秋(1885~1942)

語の解説:
深々と……読みは「ふかぶかと」
「人間」の後には目的格を表す助詞「を」が省略されている
笑ふ……笑うの旧かなづかい 発音は同じ
すなり……す(る)+なり
「する」の文語の基本形が「す」

「なり」助動詞ラ変型
《接続》活用語の終止形に付く。ただし、中古以後は、ラ変型の活用語には連体形に付く。〔音・声として聞こえることを表す〕…の音(声)がする。…が聞こえるよ。

表現技法:3句切れ 体言止め 擬人法

*この歌の鑑賞と解説→深々と人間笑ふ声すなり谷一面の白百合の花 北原白秋短歌代表作品 現代語訳と句切れ,表現技法

他に
帰らなむ筑紫母国早や待つと今呼ぶ声の雲にこだます
草わかば色鉛筆の赤き粉のちるがいとしく寝て削るなり
鳳仙花ちりておつれば小き蟹鋏ささげて驚き走る  

麦のくき口にふくみて吹きをればふと鳴りいでし心うれしさ

作者:窪田空穂(1877~1967) 

現代語訳:
麦の茎を口に含んで吹いていると、不意に音が鳴り出した時の心のうれしさよ

語の意味と文法解説:
吹きをれば・・・「吹く+をる」の二つの動詞が合わさった複合動詞。「をる」は、「居る」の意味。
をれば・・・仮定順接条件 「・・・していると」「・・・いたら」の意味
「なりいでし」・・・「鳴る+出(い)づ」の複合動詞。鳴りだす。
「いでし」は、「出る」の意味の「出(い)づ」に、過去の助動詞「き」の連体形「し」がついたもの。
「心うれしさ」の「うれしさ」は、「うれしい」(形容詞)の名詞形。

*この歌の句切れについて。鑑賞と解説は→麦のくき口にふくみて吹きをればふと鳴りいでし心うれしさ 窪田空穂短歌代表作品 現代語訳と句切れ,表現技法の解説

 

白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ 若山牧水

作者:若山牧水 歌集「海の声」「別離」
現代語訳:白鳥は哀しくはないのだろうか。空の青い色にも海の青い色にも染まらずに漂っている

表現技法:
哀しからずや…「哀しかり」(形容詞「哀し」のカリ活用+打消しの「ず」+疑問の「や」)で「哀しく+ない+か」の意味になる
「や」は終止形でここで2句切れとなる
空の青海のあを…同じ漢字を繰り返し使用しないためひとつが平仮名になっている
染む(そむ)…染まる。しみ込んで色がつく。

解説:背景である空にも海にも同化できない孤独な歌人の心境が投影されている。

*この歌の詳しい解釈はこちら→「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」若山牧水の代表作短歌の解釈

幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく 若山牧水

作者:
若山牧水 歌集「海の声」「別離」 複数の歌集に重複して収められている
現代語訳:
いくつの山と川を越えてゆけば、この寂しさの消える国にたどりつくのでしょうか。その地を求めて今日も旅に行くのです

語の意味と文法解説:
幾山河・・・読みは「いくやまかわ」
越えさり行かば・・・「越える」+「去り行く」「…ば」は仮定。「~行ったならば」
終てなむ・・・「終(は)て」は動詞「終(は)つ」の未然形 「な」は強意の助動詞 「む」は婉曲表現の助動詞。「はてるだろう国」の意味。
「ぞ」は、係助詞の文末用法。「疑問」を表す。ここでは「あるのだろうか」。「ある」の部分は省略されている。
国は、「地域」の意味がある。

表現技法と句切れ:
4句切れ
「はてなむ国ぞ」は、反語的な表現で、「あるのだろうか・・・ないに違いない」という結論であり、「終てる国」を想定することで、作者のはてることのない内心の寂しさを対比させて提示している。

*この歌の詳しい解説はこちら→幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく若山牧水短歌代表作品 現代語訳と句切れ,表現技法の解説

不来方のお城の草に寝ころびて/空に吸はれし/十五の心

作者:石川啄木(1886~1912)

*この歌について詳しく読む→「不来方のお城の草に寝ころびて空に吸はれし十五の心 石川啄木『一握の砂』短歌代表作品

*石川啄木の『一握の砂』について詳しく読む→石川啄木「一握の砂」の短歌代表作品 現代語訳解説と鑑賞 たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず

他に
やはらかに柳あをめる北上の岸辺目に見ゆ泣けとごとくに
ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく

たたかひに果てにし子ゆゑ 身に沁みて ことしの桜 あはれ 散りゆく 釈迢空(1887~1953) 
葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり

街をゆき子供の傍を通る時蜜柑の香せり冬がまた来る  木下利玄

桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命をかけてわが眺めたり  岡本かの子 (1889~1939) 

顔よせてめぐしき額撫でにけりこの世の名前今つきし児を 植田多喜子(1896~1988 )

大き骨は先生ならむそのそばに小さきあたまの骨あつまれり  正田篠枝(1910~1965)

死屍いくつうち越こし見て瓦礫より立つ陽炎に入りてゆきたり 竹山広(1920~2010)

砂あらし 地を削りてすさぶ野に 爆死せし子を抱きて立つ母 岡野弘彦(1924~) 

ぞろぞろと鳥けだものを引きつれて秋晴の街にあそび行きたし  前川佐美雄

はとばまであんずの花が散つて来て船といふ船は白く塗られぬ  斎藤史

 

海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり

作者:寺山修司(1935~1983)

現代語訳:
海を見たことがない少女にその広さを説明しようと、麦藁帽をかぶる夏のさ中に私は両手をいっぱいに広げてみせていた

表現技法と句切れ、語の解説:
句切れなし
「知らぬ」は終止形ではなく否定の助動詞「ぬ」。
広げていたり…「広げる+いる」の複合動詞。「+たり」完了・存続の助動詞

*この歌の解説を詳しく読む→海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手を広げていたり 寺山修司短歌代表作品 現代語訳と句切れ、表現技法

寺山修司は他に
わがシャツを干さん高さに向日葵は明日ひらくべし明日を信ぜん
列車にて遠く見ている向日葵は少年のふる帽子のごとし

 

新しきとしのひかりの檻に射し象や駱駝はなにおもふらむ  宮柊二

ジャージーの汗滲むボール横抱きに吾駆けぬけよ吾の男よ  佐佐木幸綱(1938~) 
のぼり坂のペタル踏みつつ子は叫ぶ「まっすぐ?」、そうだ、どんどんのぼれ 

白き霧ながるる夜の草の園に自転車はほそきつばさ濡れたり  高野公彦

土鳩はどどつぽどどつぽ茨咲く野はねむたくてどどつぽどどつぽ  河野裕子(1946~2010)
振りむけばなくなりさうな追憶の ゆふやみに咲くいちめん菜の花 

観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生 

作者:栗木京子

つばくらめ空飛びわれは水泳ぐ一つ夕焼けの色に染まりて 馬場あき子(1928~)

あやまたず来る冬のこと黄や赤の落葉はほほとほほゑみて散る 岡井隆(1928 ~)
眠られぬ母のためわが誦む童話母の寝入りし後王子死す

困らせる側に目立たずいることを好みき誰の味方でもなく 平井弘(1936~)

秋草の直立つ中にひとり立ち悲しすぎれば笑いたくなる 道浦母都子(1947~)

虹よ立て夏の終わりをも生きてゆくぼくのいのちの頭上はるかに  早坂類(1959~)

「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ 

俵万智(1962 ~)

他に
思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ

 

校庭の地ならし用のローラーに座れば世界が夕焼け 穂村弘(1962~)
ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちくる涙は
シャボンまみれの猫が逃げ出す午下り永遠なんてどこにもないさ
ハロー 夜。ハロー 静かな霜柱。ハロー カップヌードルの海老たち

穂村弘の歌集

夏木立ひかりちらしてかがやける青葉のなかにわが青葉あり 荻原裕幸(1962~)

卒業生の最後の一人が門を出て二歩バックしてまた出ていった 千葉聡(1968~)

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