係り結びとは 短歌・古典和歌の修辞・表現技法解説  

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係り結びとは 短歌・古典和歌の修辞・表現技法解説

2021年4月13日

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係り結びは、和歌や短歌に多く見られる修辞、短歌の表現技法の一つです。

この記事では、係り結びの使われた短歌の有名な作品をあげて、短歌の主要な技法である係り結びについて解説します。

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係り結びとは

係り結びとは、短歌の主要な修辞法、表現技法の一つです。

係り結びの目的は、文の内容を強調したり,疑問を表したりするためですが、短歌の場合は、特に独特の統一感や緊張感をもたらします。

係り結びの多く使われた時期

係り結びが使われたのは、万葉集よりも、古今集や新古今集の時代の和歌です。

万葉集の直截に感情を述べた短歌と比べると、この時代の短歌の雅な感じ、流ちょうな調子の中で、もっとも効果を発揮していると思われます。

他にも、已然形の係り結びのバリエーションは、近代短歌のアララギ派の短歌などにも見られます。

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係り結びの構成

係り結びの「かかり」とは、係助詞「ぞ・なむ・や・か・こそ」のことです。

係り結びの主要な構成は、文中に「ぞ・なむ・や・か・こそ」(係助詞)が出てきたら、その文末の活用形が「連体形」や「已然形」になるという決まりがあります。

この二つが、セットになって、初めて係り結びが構成されます。

係り結びの見分け方

一首の中に「ぞ・なむ・や・か・こそ」の語を見かけたら、係り結びではないかと疑いましょう。

そして、文末が連体形になっていれば、係り結びであると判断できます。

 

係り結びの3つの種類

係り結びには、次の3つの種類があります。

文中の係助詞 文末の活用 意味
「ぞ・なむ」 文末は「連体形」 強調
「や・か」 文末は「連体形」 疑問や反語
「こそ」 文末は「已然形」(「けれ」など) 強調

上の三つの例については、そのままだとわかりにくいので、実際に、上の形で係り結びが使われた短歌を見てみましょう。

 

係り結びの短歌の例

係り結びの3つのパターンの例です。

1.「ぞ・なむ」文末は「連体形」の例

奥山にもみじ踏み分け鳴く鹿の声聞く時秋は悲しき

「ぞ…しき」が、係り結びです。「悲しき」は連体形

作者:猿丸太夫

この歌の解説:奥山にもみじ踏み分けの歌の解説

 

ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる

「ぞ…れる」の部分が係り結びです。「残れる」は連体形。基本形は「残る」

作者:後徳大寺左大臣

この歌の解説:ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる

 

秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音におどろかれぬる 

「ぞ…ぬる」の部分が係り結びです。「ぬる」は基本形は「ぬ」

作者:藤原敏行朝臣

この歌の解説:
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる/藤原敏行朝臣

 

かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば夜更けにける

作者:中納言家持

「ぞ…ける」の部分が係り結びです。

この歌の解説:
かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞ更けにける 

 

から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬるたびをしぞ思ふ

「ぞ…思ふ」の部分が係り結びで、文末です。

作者:在原業平

この歌の解説:
から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬるたびをしぞ思ふ 

 

瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ

作者:崇徳院

「ぞ…思ふ」の部分が係り結びで、文末です。

この歌の解説:
瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ 崇徳院

 

人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける

作者:紀貫之

「ぞ…ける」の部分が係り結びです。

この歌の解説:
人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける 

 

 2.「や・か」文末は「連体形」の例

思ひつつ寝れば​人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを

「や​…らむ」の部分が係り結びで、この歌は3句切れ。その句切れの部分が文末です。

作者:小野小町

この歌の解説:
思ひつつ寝ればや​…の小野小町の歌

 

住の江の岸による波よるさへ夢の通ひ路人目よくらむ 

「や​…らむ」の部分が係り結びで、「らむ」が文末です。

作者:藤原敏行朝臣

この歌の解説:
住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ

 

嘆けとて月はものを思はする かこち顔なるわが涙かな

「や​…する」の部分が係り結びで、「する」が文末、3句切れの歌です

作者:西行法師

この歌の解説:
嘆けとて月やはものを思はする かこち顔なるわが涙かな

 

あかなくにまだきも月の隠るる山の端(は)逃げて入れずもあらなむ

「か…なむ」の部分が、係り結びです。

作者:在原業平

袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ 紀貫之

3.「こそ」文末は「已然形」の係り結びの例

月見ればちぢにものこそ悲しけれわが身一つの秋にはあらねど

こそけれ」の部分が係り結びです。「けれ」は已然形、3句切れです。

作者:大江千里

この歌の解説:
月見ればちぢにものこそ悲しけれわが身一つの秋にはあらねど

 

道の辺に清水流るる柳陰しばしとてこそ立ちどまりつれ

こそつれ」の部分が係り結びです。「つれ」は已然形、文末です

作者:西行法師

この歌の解説:
道の辺に清水流るる柳陰しばしとてこそ立ちどまりつれ

 

長からむ心も知らず黒髪の乱れてけさは物をこそ思へ

こそ思へ」の部分が係り結びです。「思へ」は已然形、文末です

作者:待賢門院堀河

この歌の解説:
長からむ心も知らず黒髪の乱れてけさは物をこそ思へ

 

近代・現代短歌の係り結びの例

最近の短歌の係り結びの例となる短歌をあげておきます。

斎藤茂吉の短歌二首

みちのくの母のいのちを一目見ん一目見んとぞただにいそげる

げる」の部分が係り結びです。

斎藤茂吉の「死にたまふ」母の一首。

この歌の解説:
みちのくの母のいのちを一目見ん一目見んとぞただにいそげる「死にたまふ母」解説

他の短歌

松風のおともこそすれ松かぜは遠くかすかになりにけるかも

小野の土にかぎろひ立てり真日あかく天づたふこそ寂しかりけれ

斎藤茂吉の作品と斎藤茂吉の作品と生涯 特徴や作風「写生と実相観入」

現代短歌の係り結びの例

俵万智さんの短歌が有名です。

君と食む300円のアナゴ寿司そのおいしさを恋とこそ知れ

以上、係り結びの法則とその例文となる短歌をご紹介しました。




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