ひな祭りは女の子の健やかな成長を願う伝統行事で、3月3日は桃の節句と呼ばれています。
きょうの日めくり短歌は、ひな祭りにちなむ有名な短歌をご紹介します。
ひなまつりとは
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「雛祭り(ひなまつり)」は、女の子の健やかな成長を願う伝統行事です。
3月3日は「桃の節句」と呼ばれています。
この日には、桃の花を飾るのはもちろんのこと、雛人形を飾ったり、菱餅・雛あられをお供え、他には白酒や、ひな祭りの春の寿司を楽しむ日となっています。
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近代短歌より ひな祭りの歌
アララギと近代短歌よりひな祭りの歌です。
ひな祭りは女児の親にとってもっとも身近なお祭りですが、そうではない歌人も季節のイベントとして関心は深かったようです。
雛祭る三日も近し隣なる女の童に桃の枝折りてやる
作者:正岡子規
ひな祭りが近いので、隣の子に桃の花を折り取ってあげたという歌です。
たらちねのうなゐ遊びの古雛の紅あせて人老いにけり
代々伝わるひな人形と対照させた人の老い。
正岡子規には律という妹がいました。
売れ殘る雛やものを思ふらん十軒店の春の夜の雨
こちらは店に飾られたひな人形。
子規のひな祭りの歌にはなんとなく憂いがありますね。
蜜柑箱ふたつ重ねてめりんすの赤き切しく我が子等の雛
作者:与謝野寛
与謝野家がまだ貧しかった時は、蜜柑箱に雛を飾ったようなのです。
赤い布を箱に敷いたというのが具体的です。
めでたくも二ごころなき雛を置く小さき人と親親のため
作者:与謝野晶子
女性歌人の与謝野晶子はひな祭りの歌をたくさん詠んでいます。
上はお祝いの気持ちを詠ったものです。
家のうちうす暗き日もあてやかに白きめでたき雛の顏かな
雛人形の顔は、暗い家の中でもあでやかである、その眺めを詠っています。
ひな祭りの短歌 現代短歌より
ここからは現代短歌のひな祭りの歌です。
子どもの成長を願うひな祭りは、時が経っても変わることはなく受け継がれていることがわかります。
雛の面紙もておほふややありて絶え入るこゑやはつかもれたる
作者:平井弘
雛をしまう時に紙に包む。その紙が顔にかかると、少し経って声が聞こえたという幻想の歌です。
落ちてゐる鼓を雛に持たせては長きしづけさにゐる思ひせり
作者:初井しづ枝『藍の紋』
五人囃子のひとりの手からこぼれ落ちた鼓。
人形に面した後の下句が秀逸です。
弥生雛かざればあわれ音もなくおりてくるかな家の霊らも
作者:伊藤一彦『瞑鳥記』
このひな人形は、一年に一度飾るものですが、家に伝わる古いひな人形なのでしょう。
それに霊を感じるというのです。
声聞きしことなき雛の唇にささやくごとく夕日届きつ
作者:青井史『青星の列』
雛は毎年見ているけれども、声を聴くことはない。
夕方の日の光が伸びて雛にも届く。その小さな赤い唇に焦点を当てたところが見事です。
雛の日の畳に差してにぎはしきひかりのなかを子は這ひめぐる
作者:杜澤光一郎
同じ日の光ですが、こちらは、畳とその上の子どもにスポットを当てています。
おそらく、女の子であられるのでしょう。
い寝よとぞ母は言へども孤りして雛にむかひてわが少女遊ぶ
作者:宮柊二
母親は早く寝るように言うのですが、ひな壇の前の少女の遊び止まない様子。
親としても、十分うれしいことでしょう。
はうらつにたのしく酔へば帰りきて長く坐れり夜の雛の前
同じ作者。
昼間の雛ではなく、薄明りの中で、夜の雛は静まっています。
酔った大人もまた、その雰囲気を楽しむという独特の歌です。
われにふかき睡魔は来たるひとりづつ雛人形を醒まして飾り終ふれば
作者:小島ゆかり 『獅子座流星群』
雛段の人形というのは全部でいくつあるのでしょうか。
1年に一階とはいえ、飾るのはたいへんだそうですね。
箱に入った雛が眠っているとして、人との対比をしています。
雛はめざめ、作者は眠る。そうして、雛と人とを等価に置いています。
段飾りの身分差を厭ひ一列に並ぶるは吾より始まりしこと
作者:春日いづみ
「一列に並ぶ」というのは、不思議な雛の飾り方です。
「吾より」というのは、代々飾られてきた人形なのでしょう。
弟が盗りて小さき掌の裡に隠してゐたる雛の簪
作者:今野 寿美
桃の節句の思い出の歌。
作者は女性なので、自分の人形であるという意識があるのでしょう。
薄墨のひひなの眉に息づきのやうな愁ひと春と漂ふ
作者:稲葉京子
ひな人形にある「愁い」を作者は感じます。4句の比喩がポイント。
命のない人形ですが、この句と春が生命感を添えています。
並びゐし雛人形をしまふとき男雛女雛を真向かはせたり
作者:田宮 朋子
とてもおもしろい歌。横並びに並ぶのが普通なのに、向かい合う男女の雛となった配置に作者は何かを感じるのです。
まとめ
ひな祭りの短歌を集めたつもりでしたが、多くがひな人形を詠んだ短歌となってしまいました。
やはりひな人形が、ひな祭りの一番の主役なのですね。
きょうの日めくり短歌は、ひな祭りと桃の節句にちなむ短歌をご紹介しました。
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