4月29日の朝日歌壇の下部で紹介された新刊『岡野弘彦百首』を読みたいのだが、ネットでみても品切れでした。
好きな歌人の一人なので、ぜひ手に入れたい。
今版元の書店に問い合わせて返事を待っているところです。
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紹介されたのは29日ですが、3月の新刊であったらしいです。
『岡野弘彦百首』沢口芙美編
現代歌壇の巨人・岡野弘彦の全8歌集から名作100首を厳選し、詳細な解釈と鑑賞を加えた初の一書。岡野弘彦研究必携書!
岡野弘彦の好きな短歌
歌集『冬の家族』から
ひたぶるに人を恋ほしみし日の夕べ萩ひとむらに火を放ちゆく
きつね妻(づま)子をおきて去る物語年かはる夜に聞けば身にしむ
心まどひていで来しゆふべ一匹の犬ためらはず街上を行く
歌集『天の鶴群』(あめのたづむら)から
ただ一羽ちまたの空をゆく鶴の羽根すき透る夢のごとくに
夜の空をおほひつくして啼き昇る千羽の鶴にめくるめき立つ
啼きしきる夜声ひそかになりゆきてあなさびしもよ霜夜たづがね
真白羽を空につらねてしんしんと雪ふらしこよ天の鶴群
歌集『飛天』から
あかときの大島桜ほのぼのと夢のつづきの花ゆれやまぬ
秋雨に窓ぬれてゐる日本の小さき家をとざし出できぬ
いただきに立てる童子をわが呼べばこだまのごとく彼ら答ふる
雪の下に父をうづめて帰りきぬ陽かげりて寒き峡のわが家に
毎日新聞の『岡野弘彦百首』紹介記事
岡野弘彦の短歌を読むことは、昭和、平成のみならず、古代からつづく日本文化の精神史を知ることだと思う。さまざまな戦いに潜められた人間の悲哀が、短歌という詩型の力により切々と読者に伝わってくる。岡野を慕う現代の歌人たちが作品をグループで読みこんだ『岡野弘彦百首』(沢口芙美編・本阿弥書店)が刊行された。時代の変わり目に立つ現在に、自らの生を省みる貴重な一巻だ。
歌集『冬の家族』から近刊歌集の『美しく愛しき日本』まで全8歌集の中から厳選された一首一首に克明な解説と自在な鑑賞がほどこされた。<ひたぶるに人を恋ほしみし日の夕べ萩ひとむらに火を放ちゆく>、<若き日を異土のいくさに戦ひてやまとをぐなの如く死なざりき>。「情」と「美」を求めた一首目。「やまとをぐな」(やまとたける)を持ち出し、戦いに生き残ったものの悲傷を詠う二首目。鑑賞は、これらのよく知られた初期代表歌ばかりではない。
<地に深くひそみ戦ふ タリバンの少年兵を われは蔑(な)みせず>。話題になった歌集『バグダッド燃ゆ』から。イラク戦争のさなかに作られ、「タリバンの少年兵」に若き日の作者を重ね合う自責の歌だ。釈迢空(折口信夫)の直弟子の岡野を慕う沢口が代表の歌誌「滄」誌上の共同研究をまとめた一冊。秋山佐和子ら他の会員も参加した最新の「岡野研究」である。(文芸ジャーナリスト)